Scent of country#0003

ぼくの行きたい町。at Vietnam

Photo&Text: SHINNOSUKE YOSHIMORI

Trip / 2019.02.20

高校生の頃、地元のJリーグチーム「ロアッソ熊本」の応援によく行っていた。
ロアッソは強くもなく弱くもなく、見に行った試合でも勝ちと負けが半分ずつくらいだった。
それほど熱心なサポーターでもない僕だったが、それでもスタジアムには
何か惹きつけられる魅力があった。
スタジアムで観る試合は、テレビで見るよりも何倍も何倍も面白かった。
良いプレーは拍手で称え、惜しいプレーは全員で悔しがる。
声を枯らして最後まで選手達を鼓舞し続けるサポーターたちの存在がスタジアム全体のグルーヴ感を生み出し、サッカーという競技の魅力を100%、いや120%引き出していたのだ。


スポーツの応援はとても楽しい。この非日常的な体験は一度経験したら中々忘れられない。
“スポーツに国境はない” けれど ”応援にも国境はない”
もちろん、此処ベトナムにも。



国内線で約2時間半、首都ハノイに到着した。
飛行機が滑走路に降り立つやいなや、乗客たちは一斉にスマホを取り出した。
試合の状況が気になって仕方がないようだ。

通路を挟んで隣に座る男の子はスマホを見ながら歓声をあげていた。ワンセグテレビの中継を見ている。試合はベトナムが1-0でリード、このままいけば10年ぶりの優勝が決まる。
東南アジアの王者を決めるこの決勝で、ベトナムは宿敵マレーシアと対決している。
ベトナムの英雄と呼ばれ、日本でも東南アジア人Jリーガー第1号としてプレーした、レ・コン・ビン選手が2016年に引退して以来、低迷していた代表チーム。
しかし韓国の朴恒緖が監督に就任し成績もぐんぐんと上がり、満を辞して今夜10年ぶりの優勝に王手をかけた。

飛行機を降りると少し肌寒かった。
南北に細長い形のベトナムでは地域によって気候が全く違う。
この夜のハノイの気温は15℃ほど。
市内へ向かうためにジャガー印のバスに乗り込んだ。



試合終了の10分前、無事宿に到着した。
部屋に荷物を置いてホッと一息。外には試合が終わるのを待ちきれず街に繰り出すサポーターたち。大きな旗を振り回しながら、バイクで暴走している。あと10分待とうよ!
その瞬間はすぐに訪れる、窓の外から大きな大きな歓声が聞こえてきた。
ベトナム優勝! 歴史的な瞬間に現地で立ち会えたのは本当にラッキーだ!
軽い身支度をして、さぁ街ヘ!

案の定、街はお祭り騒ぎ。発炎筒も焚かれ、祭というよりは暴動に近い気もするけど……。
人混みをかき分けて中心部へとぐんぐん進んでいく。
両頬にベトナムシール、額にはwinnerのハチマキを装着し手にはナショナルフラッグ。
どうだ、完璧なベトナム人サポーターではないか。みんな笑顔でハイタッチをしてくれる。
ハノイの街は小さな湖を中心に広がっており、しばらくはその湖の周りをブラブラ。
みんな本当に嬉しそうで、楽しそうで。応援の熱量が凄かった分、喜びも大きいのだろう。
ローカルなモツ鍋屋で晩御飯を食べ(美味しかったけど、翌日お腹が…)食後にはベトナムコーヒーを飲み(こっちが原因の可能性も……)、ハノイ最初の夜を十分に満喫し部屋へと戻った。
フラッグを放り投げ、両頬のシールをビリッと剥がし、ハチマキはポイっと。
ベトナム人サポーターとしての意気込みは何処へやら、日本人観光客はさっさとベッドに入って眠ることにしたのだった。






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