本気の吹雪、窓越しの。

To Me, Somewhere in the World #15

本気の吹雪、窓越しの。

Contributed by Yoko

Trip / 2022.02.23

「世界一周がしたくて、思い切って会社をやめた」
未知なモノすべて知らないことを知りたい、欲望に忠実に生きるフリーランスのWebライター・編集者Yokoさん。日本国内の旅の話をリアルタイムで、時に振り返りながらつづる旅連載。


#15

着いたら夜。明けたら朝。作業に没頭して目線を上げれば昼。

時間が経つたびにどんどん雪国になっていく景色を窓越しに見ながら、ああここは本気の雪国だったと思い出す。札幌。

たった一晩で、こう。深夜、思わずカメラを構える人の気持ちがよくわかる。



タイミングが良いのか悪いのか、思い立って早入りしていて正解だった。あと1日2日遅ければ、新千歳空港にさえたどり着けなかっただろうから。JRは全線ストップ状態。たとえ着陸できたとしても、身動きをとるのは難しかっただろう。あやうく今回の旅の目的が果たせないところだった。

いつでも出発できるからこそ、逆に出発ギリギリまでスタートを決められない。最近はそんな旅が続いている。今回も「やっぱり今日行こう」と決めて朝ごはんを食べ終える頃、30分後に出発する東京行きの高速バスの券を買い、15分で4泊分の準備を無事に終えて家をダッシュで飛び出していなければ、今ここにはいなかった。ああ積もっていくわ……と、久しぶりの雪深さにしみじみ、いや、もはやちょっと引くようなこともなかっただろう。

人生は偶然と偶然と、ほんの少しの故意でできている。

なお、目的地の天気予報はチェックしていなかったので、今住んでいる地域が雪国でよかったと心底思った。防寒フル装備、かつブーツを履いていた自分に感謝。しかし少しだけ忘れ物をした。まあ15分で家を出たと考えれば、及第点。

数年前から?ループするようになった市電。



札幌は、中心街の地下道でつながっている宿に泊まれば、外が吹雪だろうが氷点下だろうが問題ない。大体の場所は地下道でつながっているし、そうでなくても建物の近くには出られるので、ほとんど外を歩く必要がないのだ。よほど遠出する用事が無い限り。

だからなのか、たった1枚の窓越しで起きているはずの自然現象に全く現実感がないのが不思議だ。目の前に、確かにあるはずなのに。テレビでは注意を呼びかけるテロップが流れるほど、真剣な雪なのに。高みの見物をしているうちに、ひたすら雪がどんどん積もっていく。それにしても本当に、雪が止まない。

なぜか日付が変わっても眠れずにいれば、雪の色と空の明るさだけでは朝か夜かわからなくなるほど。雪。夕暮れのような早朝。雪。夜明けのような深夜。雪。いまどこにいるんだろう。

本気の雪国は、感覚がにぶるから結構怖い。でも怖いと知っておけば大丈夫だと思う。

大好きクィクリー。埋もれてるけど(雪かきお疲れ様です……)。



雪と雪の時間的な隙間をぬうように、行きたい場所へ向かうため外に出る。

雪がほろほろ降るくらいのタイミングで歩いていても、足元が危険なのは変わらない。足元に注意しつつ、積雪の高さに驚きつつ、ほぼ雪に埋もれたタピオカ屋さんでホットのタピオカドリンクを購入する。このお店は別格で美味しいのだ。期間限定というからホットにしたけれど、やっぱりタピオカはコールドがいいと思った。これ、毎冬思っている。

どん曇り。大通公園。



どうせ外に出たのだからと、大通公園を突っ切り、見かけたISHIYA(菓子店)に寄り道。東京にしか売っていなかったはずのものが売られていてびっくり。店員さんに思わず聞いたら、数ヶ月前から店舗限定で置きはじめたとのこと。嬉しいけれど、これでお土産のバリエーションが一つ減った。だから札幌は。とまた思う。

でも、白い恋人や美冬がバラ売りで買えて感動。こちらも店舗限定。それにしてもバラ売りって、なんでこんなにときめくんだろうか。

ビルが-1℃という現実を教えてくれる。



スマホを見ず、緊急を要する考え事もなく、たぶん心穏やかに歩く地元。時折「あ、ここで制服の採寸したな」など思うくらい。平和な昼下がり。見知った誰かに会うという少し避けたいアトラクションが発生する可能性はあるが、みんな暖かいビルの中にいるはずだから大丈夫、と思い直す。そして雪道をさくさく歩く。

宿について、先ほど買ったばかりのむふふなお菓子をひろげる。



友人と泊まる宿に到着。先に一人でチェックインさせてもらう。久しぶりに会える夜、共に入る温泉、つもる話、晩酌など、楽しみでしかない。早く来ないかなと待つ間に、今日1日、何を書こうか思い巡らせていた内容を帰結させる。ここに。

画面越しに窓に目線を移すと、また吹雪いていた。
それにしても本当に、雪が止まない。


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