The Second-Hand Shop

世界のリサイクルショップ -イタリア編- #3

Contributed by Fumito Kato

Trip / 2019.12.12

雑誌、広告などの撮影の傍ら、世界各地のリサイクルショップを巡り、その国のカルチャー、埋もれゆくプロダクトの発掘をライフワークとして活動しているフォトグラファーFumito Katoさん。今回訪れたのはイタリア。旅先で出会った魅力的なヴィンテージアイテムや食べ物の数々は、必見です。


#3

10/5(sat)
15:00
ジュゼッペとの取引を終え、カターニアの中心部へ向かった。本当に街全体が遺跡のようだ。過去にエトナ山の噴火、大地震で幾度も街が崩壊しているとは、とても思えない。扉、窓枠なども当時のままのものが多い。


グラフィティだらけの住宅も、日本だったら史跡になりそうな年代の建築ばかりだ。

日本で賃貸物件を探すとき、いつも残念に思うのはせっかくの古い建物なのに、扉や窓枠のみが最新のものに更新されていて景観がアンバランスになってしまっていることだ。

イタリアでB&Bを借りると、何百年も前の扉がオートロックに改造されていたり、当時のものじゃないか?と思うほどの古い作りの鍵を渡されることがある。開け方にコツを要するものも多いが、それすらも代々受け継がれることを思うと景観を重んじるイタリア人の美意識に感心する。


世界遺産にも登録されているカターニアの街。ファサード観察が楽しい。

カルロ・アルベルト広場の市場を通りかかったので、車を停め、屋台を物色する。荷物の軽量化のため、滞在日数分の着替えは持ち合わせていない。いつ洗濯できるかも定かではないので、LOTTOの3足で5ユーロの靴下を購入した。

日本だと、ホームセンターなどで売られている作業用靴下に近い。KAPPAのものもある。HANESやFRUIT OF THE LOOMのものと同じく、シンプルかつ厚手で丈夫なので、非常に重宝する。


食料品から日用品まで様々な屋台が並ぶカルロ・アルベルト広場の市場。ペスケリア(魚市場)にも隣接している。

16:00
実はジュゼッペと会う直前に訪れた店が当たりだった。ただ、昼休み前だったので、16時の開店後に取材をさせて欲しいとお願いしておいたのだ。NOVECENTO(ノベチェント)は、オーナーのミルコ氏が過去のプロダクトに新たな命を吹き込み、保存/再使用するというコンセプトの元、2014年に創業した店だ。

リサイクルショップというよりは、古道具店の要素が強い。絵画、家具、食器類などの定番品の他にも、イタリアではあまりアンティークとして扱われない70〜80年代のものをセレクトしている点も嬉しい。市内の中心部にあるから、公共交通機関でのアクセスも容易だ。




玉石混合。名状し難い統一感がある店内のレイアウト。

ここでは、Torrisiのティーセットを発見。エスプレッソ関連が多いバール・ノベルティの中ではかなり珍しい。トリノのLAVAZZA、ナポリのKIMBOのようにTorrisiはカターニアの人々にとって象徴的なコーヒー問屋だそうだ。コーヒーミルもいくつかあったが、買うまでには至らず。

ただ、イタリアには歴史に埋もれつつあるビンテージ・コーヒーミルが数多く眠っていると思われる。今後、どんなものに出会えるのかと思うと楽しみでならない。


70〜80年代にバールで使われていた、Torrisi・ティーセット。


物静かなミルコと太陽のように明るいミコル。このバランスが夫婦円満の秘訣? と思いきや、ミルコ曰く「彼女はただの友達」だそうだ。本当?


NOVECENTO(ノベチェント)
Via Sant'Euplio 38, 95124 Catania
営業時間:9:00〜13:00/16:00〜20:00
日曜定休


16:30
NOVECENTOの二人に礼を言い、店を後にした。ブロンテまでのルート上にある2軒のリサイクルショップに行くも収穫はなし。まあ、全ては運次第。明後日から行く北イタリアに期待しよう。


防空壕のリノベーション?穴蔵のようなリサイクルショップ。

エトナ山の麓に向かって国道をひた走る。雄大な山脈を拝むことができる午前中もよいが、木々が黄金色に染まるこの時間も格別だ。朝もやが立つ冬の早朝も、凍てつく空気の中に漂う穏やかな光が美しい。

居心地のよい場所へ向かい、道中の心地よい風景を望む。はるばる、イタリアまで来て木を見て森を見ずと思われるかもしれない。だが、私はそれで十分であり、それこそが至福の時だ。


ブロンテへと続く国道。沿線にはオリーブの木やウチワサボテンが延々と広がる。


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