Sole, Pizza・・・ e Amore #04
心のもやもや
Contributed by Aco Hirai
Trip / 2024.02.20
#04
恋愛の「直感」というものを信じて帰国のチケットをキャンセルしてから2週間が経った。
この間にヘンリーとユウミの2人が立て続けに帰国し、シェアハウスのメンバーはガラッと入れ替わり新しい雰囲気が生まれていた。もともと数ヵ月という約束で引っ越してきていたアントニオとペペは、すでに上の階を離れそれぞれ一人暮らしを始めている。そして私も「Charming House」の契約が終わり、空きがあるという友人の家に期限付きで間借りすることになった。
あのミュージックバーでのキス事件以来、アントニオと2人で出かけたのは2回だけ。1度目は近くのジェラート屋さんでジェラートを頬張り、2度目は移民局へ付き添ってもらった。夜遊びするときは友達も一緒に「みんなで」だった。さらに日本人よりジェンダーの線引きが薄いイタリア人、2人で遊びに出掛けても特別な存在なわけでは決してないのだ。そんな国民性が私をさらに不安でいっぱいにした。頻繁に連絡は取るけど「彼女」という名の特等席に座っている心地良さは微塵も感じられなかった。それもそのはず、帰国の飛行機を私が一方的にキャンセルしただけで、恋人関係ではないのだから。
さらに、たかがキスをしただけで付き合っている訳がないことぐらい理解していたし、日本人と欧米人の「付き合う」の方程式の違いも心得ていた。ただ、頭では理解できてもこの「恋愛文化の違い」を昇華しきれないせいで心がモヤついていた。さらに、単細胞でできている私の脳内には、駆け引きなんて言う言葉は存在せず、いつも直球ストレート。だからアントニオの気持ちが気になって仕方がなかった。何か予定を作っては彼を誘い出す作戦を立てた。が、「ペペも誘っておいたよ」とか「その時間はシエスタするんだ」と言われることも多かった。さらに勉強に付き合ってほしいという誘いには「わからないことはメールで聞いてくれ」と返信がきた(笑)。オブラートに包み隠さず気持ちの良いぐらいストレートに言う性格は嫌いじゃない。でも正直ショックでしかなかった。でも、彼と一緒に過ごす時間は、メールでのやり取りが嘘だったかのようにスイートなのだ。
そのギャップがますます私を困惑させ、加速する心のモヤモヤ。こんな期間が1ヵ月ほど続き、モヤモヤ度も絶頂に達しようとしていた。それでも「まだデーティング期間だぞ!」と自分に言い聞かせ、焦る気持ちを抑えるようにしていた。そんな私の心の救いは、数週間後に控えたバースデーをアントニオが祝ってくれることだった。
そして、バースデーを祝ってもらい、タイミングよく居合わせたアントニオのお姉さんにも挨拶することができ、前よりほんの少し心に余裕が持てた気がした。ただ、彼の私に対する対応は友達に毛が生えたぐらい。だから「イタリア人って愛情表現が豊かなんじゃなかった?」とか「イタリア人って想像していたより冷たくない?」と私がイタリア人に抱いていた一般的な国民性までも覆してきたのだ(笑)。
ただでさえ、日本人に比べて彼女と友達、彼氏と友達のボーダーラインが分かりづらいイタリア人。彼女への昇格サインは何なのか?
つづく。
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Aco Hirai
2004年オーストラリア移住、2005年帰国、2019年マルタ島留学、2020年イタリア移住。 海外で活躍する日本人を取材したImhereマガジンを不定期で発信しています。(インタビュイー募集中)