Greenfields I'm in love #47
憧れコレクションへ
Contributed by Aya Ueno
Trip / 2021.08.27
#47
ずっと前から楽しみにしていた日がやってきた。
秋冬のロンドンファッションショーで、またお仕事ができることになったのだ。しかも今日は、TOGAという日本のブランドのもの。自分が知っていて、しかも好きなブランドのファッションショーに潜り込めるとなると、その喜びやドキドキも一際!
ショーの集合時間は昼過ぎだったので、学校で仲良しのジェロン君と朝ごはんを食べに来た。Muffin Man Tea Shopという、スコーンやケーキなどが美味しいカフェ。
ジェロンくんは、賢くて面白い。熱中して話していると、あっという間に時間が経った。まだまだ話し足りなかったけど、そろそろ行かなくちゃいけない。
スコーンは、半分に切って焼いて出てきて、珍しい!
ショー会場は、Maryleboneというおしゃれでちょっとposhなエリアにある。着いてみるとそこは建築にまつわる本が並ぶ石造りの素敵な図書館だった。
私は受付で名前を言って、腕にテープを巻かれ、3階にあるバックステージへ行った。
担当のモデルが言い渡され、わたしは可愛い黒人モデルを任された。
まずはリハーサル。大きなボードに、モデルが今回着用するアウトフィットで撮った写真が貼ってあるので、それを見ながら衣装を探す。
衣装が揃ったら、リハーサルの準備に入った。
ママと電話したり、忙しそうな彼女にサンダルを履かせ、穴がいっぱい空いた難しい服を着せた(なんども違う穴に腕を通してしまった)。
衣装を着たあとは、メイクが施される。目の前に、メイキャップアーティストの伊藤貞文さんや、TOGAのデザイナーである古田さんがいて、平然とした顔をしながら(できていたかは分からないが)心の中では大はしゃぎしていた。前にアシスタントをしたショーでは、肩書き関係なく、みんなファミリー! って感じの雰囲気だったけど、今日はだいぶ厳かだ。説明を受けてなくても、誰が偉いのかがよくわかる。
わたしが担当だったのは、真ん中のモデルさん。
リハーサルから帰ってきた私の担当のモデルは、よく見ると私物の小さな銀の輪っか状のピアスを着けていて、スタッフの方に怒られた。本番でなくてよかった…大慌てで彼女からそれらをかっさらう。
本番の時間が近づき、会場はだんだんお客さんで埋まっていく。古田さんはその様子をモニター越しに一言も発さずにじーっと見ている。
控室はバタバタと慌しい。カメラまで入ってきて、出番前に列になるモデル達を撮ろうとする。モデルの中には、2回着替える人もいて、下着もつけていないのだけど、そのうちの1人、masieというモデルが、胸を手で覆って、大きな声で張り上げた。「見せ物じゃない!今すぐ出ていって、じゃないと衣装も着ない!」という彼女の言葉は正論だ。カメラマン達は逃げるように退散していった。
彼はロンドン芸大の院生。
みんな着替え終わり、写真タイムも再開された。とても綺麗だし、衣装もとても素敵だ。
古田さんは最後にモデルをチェックしながら、小物を交換させたり裾を整えたり細部まで抜かりがない。
ピリピリとした空気感の中、ショーがはじまり、私たちはモニター越しに見守った。
着替えの必要がある人たちをお手伝いしたり、スタッフ達と話してみたり、その場でできることを見つけては色々やってみた。また、業界人をただ人間観察することも、私にとってはとても刺激だった。
ショーが終わり、モデル達が順番にニコニコと笑いながら帰ってきた。張り詰めていた空気もやっと穏やかになり、古田さんも安堵したようで、やっとはじめて笑顔を見せた。
このファッション業界は上下関係が特に厳しくて、下っ端は特に、声を出して進んでやらないと置いていかれる気がした。それに、上に立つ人の芯の強さ、プロ意識は人一倍だった。何かしたいことがあるなら、自分で動かないと何もできないんだと、痛感する日だった。
ショーで同じくフィッターをしていた日本人にかすみさんという方がいた。彼女のファッションは真っ黒。シンプルなベースにパープルのポイントメイク、カーリーヘアでものすごくかわいい。決して話しかけやすい訳ではなかったけど、どうしても仲良くなりたくて勇気を出して声をかけた。彼女はヨーロッパが大好きで長くこっちにいるけど、一際イギリスへの愛が深い。それがどれほどかといえば、腕にワーホリビザに当選した日付が刻まれたマークを掘られているくらい(タトゥーはそれだけだったから本当に嬉しかったんだろうと思う)
もうそれ以来会っていなかったのに、この記事を書いていたら、ちょうどかすみさんから連絡があった! 不思議だ。今ちょうど日本に帰国してるから、お茶しようって誘ってくださった。彼女はまたヨーロッパにいくらしい。
わたしもはやくヨーロッパにいきたいな。彼女とまたヨーロッパで会いたいと思う。
今日のドキドキはきっとずっと忘れない!
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Aya Ueno
兵庫県神戸出身、東京在住のWriter/Photographer。学生時代に渡ったイギリス留学を機に、人や、取り巻く空間を魅せる表現に興味を持ち、現在Containerをはじめ、カルチャー、フードメディアにて発信中。
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