クリスマスの日と嫌な予感

Gloomy day All day #12

クリスマスの日と嫌な予感

Contributed by Aya Ueno

Trip / 2023.08.25

フォトグラファー/ライターの上野文さんが、過去のイギリス留学の様子を綴ったContainer WEB人気連載『Greenfields I'm in love』。全74回の連載を終え、今回からは2021年の冬に過ごしたロンドンでの2週間をお届けします。大好きなロンドンでの、小さな「きっかけ探し」の旅。

#12


公園から帰ると、ディナーの準備は着々と進んでいた。昨日はカトリンがドイツのクリスマス料理を振る舞ってくれた。今日はウィルがイギリススタイルのクリスマス料理を作る。

鍋の中でホワイトソースがぐつぐつと煮出っていた。これはブレットソースと言って、牛乳とパンの屑と、バター、そこにクローブを刺した玉ねぎだけで作るらしい。


エプロン姿のウィル


まもなくディナーが始まった。クラッカーを開けると、今年は薄い紙でできた、綺麗な紫色の冠が入っていた。みんなで頭にかぶって、ディナーが始まる。






デザートにティラミスも!


この日も遅くまで飲んで、次の日は遅く起きてもまだウィルは起きていなかった。わたしは次の用事があったから、他のみんなとハグをして家を出た。

26日。この日は大好きな友達とのヨンヒョンとダニと再会する日。今日は日曜日、毎週日曜日開催のコロンビアロードのフラワーマーケットへ行った。わたしがロンドンで1番好きな場所だ、ウキウキして向かうと、なんとまさか! やっていない。がっくり肩を落として、コベントガーデンまでバスで移動した。行きたいカフェはどれも閉まっている。さすがイギリス、クリスマスからはもう年末年始モードなんだ。



結局あんまりいいカフェはなくて、チェーン店に適当に入る。2人は昔学校で一緒だった韓国人で、今はこっちの大学に通っていた。ぽっちゃりだったヨンヒョンはダイエットに成功してムキムキに、ダニは相変わらず、ゆるりとしていて可愛いお姉ちゃん。私たちは何のブランクもなかったように話して、滞在中にまた会う約束までしてお別れした。

次に向かったのは、Hackney Socialというクラブハウス。少し早めについたから、周りのお店を散策しようとしたら、文字通りどこも開いていなかった。今日は、Channel Oneというサウンドシステムのライヴがあって、きょんちゃんの友達が誘ってくれた。


明かりがついているのに近くによったら閉まっていたテスコ。



唯一空いていた売店で撮った写真


程なくしてきょんちゃんが来て、友達を紹介してくれた。そいと、こうちゃんと、たくま。みんなわたしより一つ年下で、ワーホリでヨーロッパに住んでいる。



一応この頃のロンドンはマスクをしている人が大半だったのに、このライブハウスでは見たところ一人としてマスクをしている人がいない。ここだけは完全にコロナが終わったみたいで、日本から来たわたしはなんだか異様さを感じた。









イベントは12時に終わる健全なものだったけど、18時に始まって、途中に挟んだマック以外、6時間しっかり楽しんで、そのあと違うクラブに行こうと言ってきた男の子たちに、私ときょんちゃんは力無く首を横に振った。きょんちゃんの家に帰ろう。24時間動くバスに感謝。

このライヴの途中あたりから、なんだか喉に異変を感じ始めていて、わたしはなんだか嫌な予感がしていた。もしかしたら違うかもしれないけど、かなり高い確率で、わたしはあのウイルスに感染している気がした。

バスに揺られていたら、きょんちゃんが“ロージーがコロナになったって”と言った。アハハ。もう笑うしかない。わたしはクリスマスイヴまで、ロージーとごはんを食べ、生活を共にし、濃厚に接触している。テキストを見せてもらうとそこには、ポジティブになっていた、ソーリーxxと書いてある。もうイギリスでは、コロナになってもxxがつくのだ。あまりの軽さに笑ってしまった。

これから起こり得るハプニングのことは、明日から考えようねと言って、私たちは眠りについた。



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