No Sleep Ever #18
隣り合うアート vol.2
Contributed by Chika Hasebe
Trip / 2023.11.17
#18
MoMA、メトロポリタン、グッゲンハイムなど世界的に大きな美術館が溢れる街。NYで活躍したアーティストは、Andy Warhol、Jean-Michel Basquiat、Jackson Pollock、Keith Haring……と枚挙にいとまがない。やること盛り沢山なNYだが、せっかくならアートに触れる時間も作りたいもの。名画から話題のモダンアートまで観るものがたくさんあったのでシェア。
The Metropolitan Museum of Art (MET)
NYを代表する美術館。Gosship GirlでBrairたちがたむろしていた場所、外階段では、同じく老若男女が腰掛けている。
全体的な感想は、正直デカすぎ。入った途端、バチカン美術館と同じような規模感に圧倒され、「まずい、1日じゃ足りない」と限界を悟る。そもそも美術館の作品全部をくまなく見る必要なんて一切ないけれど、なんとなく見残しがあるとちょっとモヤっとする気持ちは拭えない。
最初は大好きなエジプト古代の遺品スペースへ。いまだに全くこの時代の一連のストーリーを全く把握しておらず、万年にわかファンなのだが、やっぱり金ピカの棺や独特の彫刻には夢を感じるものだ。
展示の流れを抜けるとガラス張りの壁に石像と水場が。さすがデカいだけある。みんなの休憩場所だってただのベンチじゃない。
知らぬ間にルネサンス、宗教画などヨーロッパらしい展示になってきたので、ちょっと早足で歩を進める。嫌いではないが、どうしても各々の違いがわからず、単調さを感じてしまう。こないだ友人も全く同じことを思っていたという話をしたので、意外とそう感じる人はまあまあいるのかもしれない。
進むと時代が現代にだんだん近づいてきて、近現代アートも増えてきた。お気に入りはEdward Hopper。タッチは結構べたりとしていて線も太めだが、少し物悲しさのある色彩と素材の配置に心の影を感じる。彼の絵には、その絵を含めたワンシーンを頭の中で描けるので不思議な感覚を抱く。そして今回もまた隣の小学生とずっとこの絵を眺めていた。
当時MET GALAの時期だったので、企画展はアメリカのファッションがテーマだった。
International Centre of Photography Museum
Lower Eastを歩いている日に立ち寄ったものの、閉館日だったため後日再度訪れた美術館。日本でも恵比寿の写真美術館にはよく足を運んでいるし、写真ってアートの中でも私的には最も心惹きつける媒体だと思う。
被写体自体は日常の一場面。でも、よくそんなところ切り取れたなとか、あ〜言われてみればそういうところあるとか納得する部分もあれば、配置の仕方・切り取り方が日常とかけ離れた写真もある。スタイリストの手がけたコーディネートみたいな、組み合わせ自体にアート性がある感じ。特にNYだとsubwayからフラットの屋上や中が見えることが多いので、覗き見写真はかなり納得しながらも街の特徴を表現してる面白い作品だったと思う。
Chelseaのギャラリー
Chelsea、昔は工場や倉庫が立ち並ぶかなり無骨な場所だった。それが今ではWhitney Museumまで伸びるハイラインやマーケット、デザイナーズマンションを擁するハイソな街に。ただ、ここでギャラリーを巡った日は雨だったこともあり、あまり人の気配がなかった。地区全体の空気感は、やっぱりインダストリアルで、今あるものも後付けだからこそ、なんとなくどこまでも空っぽな感じがあった。わたしにはちょっとドライだったけど、ギャラリーにとっては色がついてしまっている場所よりも、真っ白で空っぽな方が都合がよさそうだ。
Dia Beaconで有名なギャラリーDia: のChelseaには、座って振動を感じるアートが。NYの旅でなんとなくぼーっとする時間がそんなになかったので、ここではドーンと自分の体に響く厳かな低音に身を委ねてみた。こんな壮大なアートがある場所でも入るのは無料。NYには美術館レベルのギャラリーがあるから侮れない。
そのほかGagoshian、C24、Lissonなど元々名前を知っていたギャラリーから通りがかりで気になったところまで特に当てもなくぶらぶらしていた。ギャラリーの隣はまたギャラリーという光景は見たことがなかったので、かなり新鮮だった。
Christie’s
友人のインターン先で、上司から案内をもらったらしく、ついでに招待してくれたChristie’sのオークション前の展示。ギャラリーに引き続き、ここは美術館か? と思うほど、これも知ってる、あれも知ってる有名作家の作品が続き、かなりお腹いっぱいになった。
この旅ではずっと美術館を一人で回っていたので、友人と作品を見ながらあーだこーだ話を膨らませられるってやっぱりいいなと再認識。特にアートやクリエイションに興味がある人と周ると、作品を介して自分が思ってもいなかった方向に会話が進んでいく。作品自体に向き合う深度は一人で鑑賞した方があるけれど、そのときの記憶の糸が太くなるのは誰かと巡った展示の方が多い。
後日行われたオークションで写真としては最高価格で落札されたMan Rayの代表作もじっくり鑑賞。誰かの手元に届く前に目に収められた。
日曜の礼拝
アート特集でなぜ突然礼拝? という感じだが、ゴスペルの自由度がスーパー高く、もはやエンターテインメントだったので共有したい。
地球の歩き方曰くハーレム地区中心に日曜の礼拝に行く体裁で、ゴスペルが鑑賞できるとのこと。母が昔ゴスペルを習っていたこともあり、本場の迫力が気になったので少し早起きして行ってみることにした。ハーレムというエリアを目で確かめたかったのもある。
ただガイドブックにもあったが、一般客を受け付けないところも多い。観光目的で来る人は真剣なChurch Serviceには目障りに違いない。ブラックカルチャーで占められた教会で、アジア人のわたしは当然浮いていたのだろう、3、4箇所で入場を断られた。
せっかく早くきたのに行くところがなくなってきて困っていると、大規模教会が受け入れてくれた。本当はこじんまりしたオーソドックスな教会でリアルを感じたかったが仕方ない。着席するとびっくりなことにステージまでの距離が信じられないほど広く、ライトアップはコンサートホールさながら。スクリーンまであって、ここは大学の講堂か?と目を疑った。奇妙なゴスペル経験を経て、ドネーションタイム。コンサートのチップを払っている気分だったが、初めての経験でなんとも興味深かった。
路上のアート
友人宅に泊まらせてもらっている間、幾度となくみた宣伝。大好きなSally Rooneyの小説がhuluでシリーズ化されていた。日本に帰ったら絶対に観たいと思いながらほぼ毎日横を通った。
ファッション工科大学(FIT)の校舎の壁にストリートアートが。落書きというよりちゃんとした壁画になっていて、クリエイティビティが校舎から溢れる。作者が自己紹介の代わりに、SNSのIDを残しているのが今っぽい。
METの古代エジプト時代の作品からFITの校舎の壁まで、色々なところにアートが存在するNY。社会階級の格差が大きいのはあまりいいことに思えないが、こうやっていろんな形のアートが隣あっているのは色々な人がいるからこそ。
アーカイブはこちら
Tag
Writer
-
Chika Hasebe
1998年生まれ。2023年5月よりロンドンに拠点を移し、報道記者の仕事に従事する一方、フリーライターとしてカルチャーについて発信もしている。