This Time Tomorrow #18
素敵な家族
Myanmar / Inwa
Contributed by Natsumi Chiba
Trip / 2019.07.09
マンダレイからバイクで1時間ほど離れたミャンマーの古都インワに私たちは居た。
14世紀から19世紀の間首都だったその街には、当時建てられたパゴダなどの宗教建設物がそのまま残されている。
街に着いて適当なところでバイクを停める。目的地に向かう前にとりあえず辺りを歩いてみることにした。埃っぽい赤土の道と青い空のコントラストが眩しい。
見慣れない赤くて小さなフルーツのようなものが道端にたくさん干してあって、何だろうかと眺めていたら、後ろの家から文字にできないコトバが聞こえてきて手招きする男性が見える。近づいてみると家に入れてくれた。
どうやらこのお父さんがフルーツの持ち主のようで、「食べてみな」と分けてくれた。堅くてフレッシュだけど独特なすっぱい味。おそらくミャンマーの梅なんだと思う。全く英語が通じないので何を言ってるか分からないけれど、近所のこどもに接する世話好きなおじさんみたいな明るい雰囲気が彼を包んでいた。
私たちみたいなストレンジャー(知らない人)をまったく警戒することなく家に招き入れ、一緒に居ることをごく自然と受け入れていて、”気まずい雰囲気”なんていうのものがそこにはない。お母さんはただ笑顔で慣れた手つきでお豆を剥き続けていた。
すると英語が話せる若い女の子が現れた。大学生でこの近くに住んでいるそう。この男性の姪っ子みたいで、すこし話しをしているとなんと彼女も「うちに遊びにこない?」と自宅に招いてくれた。その女の子の名前はタジン。
少し離れた彼女の家にお邪魔した。帰り際にお父さんがわざわざ小さなビニール袋を持ってきて梅をたくさんお土産に持たせてくれた。「ジェジェテマレ!」ミャンマー語でありがとう。それしか言えないけど、それだけで十分だと思った。
タジンのお父さん、お母さん、お姉ちゃんが総出で出迎えてくれた。リビングのテーブルに座ると飲み物を出してくれてお父さんとタジンが私たちの前に座った。お母さんとお姉ちゃんは少し離れた大きなベッドから私たちを見守る。そこで家族4人一緒に寝ているそうだ。(!)
拙い英語でいろいろと話してくれるお父さん。確かマンダレイにある日産のビルを建てていると言っていた気がする。二人ともミャンマーから出たことがないそうで、タジンに「夢はなに?」と聞くと、あどけない笑顔で「まだ分からないけど、でも日本に行ってみたい」と言っていた。
「ミャンマーに来た時はぜひまたうちにきてね」とお父さんが言ってくれた。
なんてことのない一言かもしれないけど、いきなりそこらへんに居たストレンジャーを迎え入れてお茶を出してくれて楽しくお話して、またきてねなんて滅多に起こることじゃない。その言葉ひとつだけでこの家族のあったかさとか、絆みたいなものが伝わってきた。
ほんとうにミャンマーの人たちはあったかい。アナタとワタシの間に線をひかずに、自然体で相手と一緒に居ることができる。これこそコミュニケーションスキルがあるってことだと思う。大事なのは語学が堪能であることではなくて、きっと相手を「受け入れる心」なんだと教えてくれた素敵な家族だった。
To Be Continued.
BGM: Strangers / The Kinks
アーカイブはこちら
Tag
Writer
-
Natsumi Chiba
神奈川県茅ヶ崎在住。20歳のときにいったオーストラリア留学がきっかけで旅にハマる。最近はジャンクのフィルムカメラで写真を撮り始める。好きな音楽はレゲエなど。