虹色の街

As I Like It #25

虹色の街

Contributed by Utano Katayama

Trip / 2024.07.29

子供の頃から漠然と「海外に留学したい」と考えていたUtano Katayamaさん。そんな彼女が綴るイギリス、Brightonでの留学日記。憧れの海外生活をスタートした彼女の、小さいけれどずっと大切にし続けたい思い出。

#25


なにやらここ最近ブライトンの街の様子がおかしい。いつもは落ち着いている街がどこか忙しないのだ。

それもそのはず、ずらっと大通りに立ち並ぶお店たちも、街のアーケードの飾り付けも、夜のライトアップも……ぜんぶぜーんぶ虹色なのだ! 訳が分かっていない私も通るだけで口角が緩んでにっこりしてしまうくらいカラフルな街になった。

ブライトンが元々イギリス1大きなLGBTQ+コミュニティの街だということは私も知っている。どうやらそれが関係しているみたい。

実は数日後、PRIDEパレードがこのブライトンで行われる。LGBTQ+に対する差別や偏見に反対し、ジェンダーの多様性を祝うお祭りのようなものらしい。どこを見渡しても目に映る虹色に彩られたものの数々は、LGBTの象徴であるレインボーフラッグを意味しているということを、数日後友達づてに聞いた。

この街は着々と世界一"カラフルな街"に近づいている。


もう準備満タンだというような声が聞こえてきそうな、賑やかな夜。


私も友人たちも街の盛り上がりに便乗して、レインボーの靴下や顔に描けるレインボーのペン、お花の首飾りなど、とにかく虹色のものを事前に揃えてPRIDEパレード当日を迎えた。


ワンちゃんも首飾りをしていて、見ているだけで口角が上がる。


天気は最高にいい!ブライトンの街のボルテージも最高潮に上がっている。みんながみんなお祭り騒ぎだ。


かわいい風船を持ったおじさんがやって来た。


道路の脇に座ってパレードの行進を今か今かと待っていると、遠くの方からガヤガヤとホイッスルや音楽が鳴り響いてくるのが聞こえてくる。段々と、着実に大きくなる音量に、ようやくパレードがこちらに近づいて来る予感が。座って席を陣取っていた人々も徐々に立ち始めた。


馴染みのあるいつもの2段バスもこの日は特別仕様。屋根がないのも最高にいい!


パレードは、団体ごとにそれぞれ違う方法でPRIDEの象徴であるレインボーを表現しているようだった。


カラフルな衣装と息ぴったりのダンスで魅了するグループ。


消防士さんもこの日は特別。人に水をかけるのが許されているみたい。水鉄砲を思いきり振りかざし、キャーキャーと観客はみんな楽しそう。
パトカーや消防車までレインボーにデコレーションされ、パレードを巡回する。地域全体でPRIDEを盛り上げているのが伝わって、今日はこのパレードの規模の大きさに驚いてばかりだ。思わず口を開けて見入ってしまう。


動きながら卓球をするチームも。とっても難しそうだったけど、大盛況だ。





今度はカラーパウダーだ!


カラフルな色の煙に包まれて、前の男の子も嬉しそう。煙に包まれても不思議とむせたりはなく、不思議な空間が広がっていた。



なんと、友達のルームメイトが荷台に乗ってやって来た。みんなで「ダン!」と彼の名前を叫ぶと、こちらに気づいて手を振ってくれた。彼自身のセクシュアリティはゲイで、毎年このパレードに全力を注いでいると本人から聞いていた。元々探していたけど、目の前に通った瞬間、赤いドレスがとっても似合っていてすぐに彼だと分かった。

長い長いパレードもようやくひと段落してきて、アイスを買いにスーパーへ向かう。

何時間にも及んでブライトンの街を端から端まで行進するのだけれど、どの団体も個性的すぎるほどで、それぞれ全く違うコンセプトが広がっているからか全く飽きない。
共通しているのはレインボーという点と、とにかくいろんな人たちが自分たちに“誇りを持って”練り歩いているという点だった。みんながみんなお互いの個性を認め合って、その違いに対しての楽しさ・素晴らしさを祝福しているように見えた。

ブライトンはイギリス最大のLGBTQ+コミュニティの街だと言われているだけあって、マイノリティや人種、それぞれの個性に対して寛容、むしろ大歓迎だという姿勢は暮らしていて常に感じていることだった。街中でもスカートを履いている男性を見かけることや、同性のカップルを見かけることもブライトンではごくごく普通のことなのである。

世界中でこれが当たり前の光景になると、もっと多くの人が個性、お互いを尊重して生きやすい世界になるなぁと、私もどこか感慨深い気持ちになるのだった。




どこも大勢の人で賑わうお祭り騒ぎ。


みんなでお互いの違いを祝福し、楽しむパレードってなんて素敵なんだろう。このままブライトンがずっと虹色に包まれたままならいいのに、って心の中では密かに思う。

誰に対しても寛容でいたいし、ブライトンがもっと大好きになったPRIDEだった。


つづく。



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