spiky season

London, Can you wait? #8

spiky season

Contributed by Chika Hasebe

Trip / 2024.06.28

ロンドンに来てみた。実際に住んでみたら、自分は何を感じてその先に何を求めるか見てみたかった。ロンドンに拠点を移した会社員・Chika Hasebeさんによる、社会との体当たり日記。現在と過去を交互に綴ります。

#8


今回はチクチクした話。

先日生まれて初めて性病検査をした。前からやろうやろうと思いつつ後回しにしがちだったので、ついに行動に移せてよかった。オンラインで簡単なアンケートに答えてから数日後、自宅に検査キットが送られてきた。開けてみると採血するよう指示があった。ミニサイズの蛍光ペンみたいなぼてっとしたものが同封されていた。

看護師さんに注射されて採血するほうが、何倍も痛くて針が体に刺さっている時間も長いもの。自分で採血したほうがよっぽど楽なはずなのに、一向に気が進まない。採血キットを目の前にして1週間が経った。



同じようなシチュエーションがその2週間前にもあった。日本に一時帰国したときピアッサーを買ったのだが(日本製品は衛生面で信用できた)、それも針を自分の耳に当てることにビビり続けていたことで、なかなか一人でできなかったのだ。ピアッサーも買ってから2週間ほど見えるところにずっと放置されていた。



元々予防注射など針ものは大丈夫なはずだった。仕事で突然降ってくるかもしれないアフリカ出張に備えて、今月も1日で5つのワクチンを打ったばかり。それもそれでツッコミどころはあるが、針が刺された瞬間自体は特に問題がなかった。注射を受けながら、スタッフと彼のパートナーについての話をうんうん聞いていたほどだ。

それが、針を刺すタイミングが自分に一任されると、どうやら途端にすくんでしまうらしい。採血は、指先に針を刺してそこから出てきた血を絞り出す仕組みだった。一本の指では必要な量の血が取りきれなかったので二回行った。検査キットには、三回までトライできるよう、三つ採血グッズが入っていた。

二回目はさらに辛い。一回目の痛さを分かっているので、より尻込みしてしまって針を刺すことが全くできない! それでも一回目に刺した指から出てくる血が固まり始めているのを見て、「早くしないといけない」と自分を奮い立たせ、なんとか必要な分の採血を終えた。

結局、採血もピアスの穴あけも自分の部屋で一人粛々とやったのだが、しばらくしても自分で刺したところに触れるたびにズキンと痛む。なんだかチクチクする。



大人になってから、こういう気にするほどでもないけれどちょっと気になるチクチクを、よくやっている気がする。今回みたいな指先や耳たぶみたいな身体的なものだけじゃない。心理的にもちょっと不意に突かれて、ウッとなるみたいな。

おそらく人の発する言葉や態度の裏を読むようになったからなのかも。自分にストレートに向かってくるわけではないから、爆発みたいな強い衝撃はない。でもちょっとだけ心に残る痛みがある、そんな感じだ。

数年間で数えるほどもないであろう自ら体に針を刺す体験。チクッとしたからこそ思い出した繊細な痛みがあった。



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