しあわせなイースター

Greenfields I'm in love #7

しあわせなイースター

Contributed by Aya Ueno

Trip / 2020.06.05

直感を信じ、ドキドキするものに向かって走り続ける神戸出身の大学生、Aya Uenoさんの連載「Greenfields I'm in love」。自分探しも兼ねたロンドンでの留学生活で、自分の目で見て、肌で感じたありのままの日々の記録をお届けします。

#7

イギリスでは、祝日のことをバンクホリデーと呼ぶ。銀行はもちろん、会社や学校も休みになる祝日は、1年で8日しかない(日本の半分!!)。4月からロンドンに来たわたしにとって、そんな貴重なバンクホリデー1日目は、イースターマンデーだった。4月22日だ。

だから今日はイースターの話をしよう。ロンドンにきて驚いたのは、この祝日の存在感。
ロンドンに来た瞬間から、街のあらゆる所でイースターの気配を感じていた。スーパーでもカフェでもお店でも、パステルカラーの卵やウサギをあちこちで目にする。数週間いて分かったこは、どうやらイギリスではイースターがクリスマスと同じか、それ以上に大切にされているらしい!

話は逸れるけど、小さい時からわたしはこういった年中行事が本当に大好きだ。留学の滞在方法をホームステイにした1番の理由も、現地のお家でこういう文化をお祝いしてみたかったから。
ただ、わたしのホームステイ先のお家はホストファミリーのサラとヤンがもう年配で子供もすでに大人だし、お祝いの時はみんなが家族を連れて家にやってくるけど、残念なことに私たち生徒はその食卓には招かれなかった。

私は、多分3歳くらいの頃に、インターナショナルのリトミックに通っていたことがある。その時、本当にうっすらだけど、卵にペイントしたり、チョコレートエッグを探したり、イースターを祝った記憶があったのだ。「今年もイギリスで何かしたい」そう思ったわたしは学校でイースターのイベントがある事を知って、ホームメイトのナタリーの手を引っ張って参加しに行った。イースターにまつわる沢山のゲームや遊びが用意されていてとても楽しかった!
机には、この時期食べられるホットクロスバンズがお皿に山盛りになって用意されていた。名前の通り、キリスト教の十字が表面にくっついた、アップルとシナモンの効いたパン。美味しくって、卵に絵を描きながら、そのパンを取る手が止まらない。また、いろんなゲームで友達も増えた。中でもアリというトルコ人の男の子と仲良くなった。彼は相当なお調子者で、冗談ばかりいうし、私とナタリーに、「日本語が話せる」「スペイン語が話せる」と嘘ばかりつく。

レタリングが上手なナタリーに”Happy Easter”と書いてもらう。



アリのイースターエッグ。



祝日には、チェルシーにあるPhysic Gardenで、自然に囲まれながらちっちゃな子供たちに混じって、植えられた植物のあちこちに隠れたクイズに答えるイースターの催しにも足を運んだり、可愛いカフェでイースターバニーがモチーフになったマフィンを食べたり、思う存分イースターを満喫。ロンドンはまだまだ寒さは続くけど、イースターの淡いピンクや黄色のデコレーションが街を彩られていた。

至る所にクイズが隠される。



可愛いがつまったイースターバニーのマフィン! ちなみに友達のレッドベルベットにはニンジンが描かれていた。



イースターには関係ないのだけど、カフェの帰りに国立美術館のTate britainへ行った。わたしの1番仲良しの友達が大好きなラファエル前派の作品、「オフィーリア」を生で見たかったからだ。この日初めて行ったTate britainは、思っていたよりも遥かに大きく、神秘的で厳かだった。さて、肝心のオフィーリアだ。友達が撮っていた、オフィーリアとそのあたり一体を収めた写真を頼りに探すが、どこにもない。
それらしいあたりを何往復もして、周りに展示される絵は同じなのにオフィーリアだけがまったく違う絵画と入れ替わった壁を見つけた。狐につままれたような気持ちでスタッフに尋ねると、オフィーリアはオーストラリアの国立美術館の企画展へと渡ってしまっていたのだった…。
ガッカリして、友達に送る為「オフィーリアのいない壁」を背景に写真を友達に撮ってもらった。

わたしの前にある絵画はオフィーリアのはずだった。



この日気に入って葉書も買った絵画、”The Cholmondeley Ladies”。



双子のお母さんと、抱かれる子供。よく見たらドレスの柄やアクセサリーが違ったり、子供の目の色が違ったりと細部までこだわっている。

そうこうするうちに、とうとうナタリーが帰る日になった。イースターマンデー前日の日曜日。いつものように一緒に食べる最後の朝ごはん。今日はホストマザーのサラはリンツのウサギ型チョコレートをくれて、ナタリーはいつもより一段とたくさんパンを食べた。こんなにパンを食べる人は本当に見たことな(笑)。

ナタリーのお皿にはパンが5枚。



毎日、本やら靴やら服やらぬいぐるみやら、とにかく行く先々で買い物に明け暮れていた彼女は持ってきたキャリアに荷物を収めきれるはずもなく、巨大なキャリアをもう一つ買って、それをもパンパンにして帰っていった。
彼女が出ていった空っぽの部屋を見ても、なんだかまだ実感が湧かない。たった1ヶ月弱だったけど、ロンドンに一人できて寂しくなかったのは、紛れもなく彼女のおかげ! 彼女がはじめてのホームメイトでよかった。今の時代SNSがあるから近状を見れるし、今でもよく連絡を取り合い、電話もする。また会える日を楽しみにしてる。

ある日部屋をノックして渡してきたポラロイド。後ろのロンドンのマップも、ナタリーがくれたもの。




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