誕生日の命の危機

Beginning of my new Life #8

誕生日の命の危機

Contributed by Asuka Naka

Trip / 2023.11.29

『とにかく旅をするのが好き!』高校生の時に初めて訪れたインドがトラベラーへのきっかけだった。多くの国を旅する好奇心旺盛な彼女だからこそ感じる面白さと発見。出会いと出来事を振り返りながら綴るAsuka Nakaさんの旅日記。

今回からは番外編として高校生の頃に訪れたアメリカでの交換留学の様子をお届け。



登校し始めて数日後は私の16歳の誕生日であった。
渡米後すぐということもあり、特に期待をしていなかった。しかし朝6時にリビングへ行くとホストファミリーがHAPPY BIRTHDAYの飾りをたくさんしてお祝いをしてくれた。実家ですらこんなにデコレーションしてもらったことのない私は驚きと嬉しさと共にどう反応していいのかわからなかったが、とても嬉しかった。なんて素敵な家庭に歓迎されたのだろう。

そして今日も学校へ出発。
ちなみにアメリカでは誕生日は学校を休むなんていう子もザラにいるらしい。



登校日二日目からは毎朝バスでモルドバからの交換留学生マリアと隣の席に座り、学校に通っていた。綺麗な緑色の目をもつスーパーポジティブで明るいこの子に毎日元気をもらっていた。そして彼女は毎日友達がどんどん増えていく。そんな子が私と仲良くしてくれるのも嬉しかった。

学校に着き、いつもと同じように授業を受けてランチへ向かい、韓国人留学生ハヨンのホストシスターの友達グループとランチを食べる。その日はたまたま1人の子が「みんな誕生日いつ?」と話題をふり、私は恥ずかしながらに「今日……」と答えた。そうするとみんながお祝いしてくれた。8月が誕生日である私は、毎年夏休みと被るため人生で一度も誕生日を学校で祝ってもらったことがなかったので、少しの恥ずかしさと共に嬉しさを感じた。小学生の頃は、いつも祝っているばかりで登校日と誕生日が被る子が羨ましかったものだ。

そんなこんなでまた午後の授業を受け、もう少しで学校が終わると思っていた時、校内放送が流れた。
もちろん英語でのコミュニケーションもままならないので何も理解できない私。しかし場が真面目な空気になるのを感じた。先生がドアを閉めみんなにしゃがんで静かに隠れるように指示したので私も周りと同じ行動をした。

アメリカでは「携帯を使ってはいけない」というルールがないため、みんな携帯をいじっている。すると誰かからair dropで写真がきた。見てみると、ある生徒が“これは訓練ではなく本当に危険な場合である可能性が高いから静かにしてくれ”と書いた写真だった。そしてその写真はこそこそ話している子達に向けたものだったので私は更に混乱した。今日という日に何があるのだろうか、これは一体どういう状況なのだろうか。するとハヨンのホストシスターから一通のテキストメッセージが届いた。「大丈夫? どこにいる?」と心配して連絡してくれたのだ。彼女とは、「何かあったら連絡して!」と言われ連絡先を交換していた。

どうやら学校全体が同じ状況らしい。そして誰も詳細をよくわかっていないみたい。

とりあえず今は静かに待つことしかできないみたいだったので待っていると2時間後くらいだろうか、やっと解放の合図が出た。教室を出て、みんなが帰る方向へ向かうと廊下でハヨンに会うことができた。何が起こったのかと聞くと、どうやら銃撃の脅しの連絡が学校へ来たよう。ここアメリカでは銃撃は実際に起こる。自分の誕生日にこんな経験をするとは思っていなかったが、実際に銃撃犯が来なかったことが幸いだと思うしかない。


やっとスクールバスに乗って、家に帰るとホストマザーが「大丈夫だった??」と心配した表情で迎えてくれた。私は「地面に座っていただけだから大丈夫だったよ」と言う。ホストマザーはこのことを職場で聞いたらしくビックリしたそうだ。どうやら銃撃は私の通う高校宛だったが、同じスクールバスを使う小学生たちも学校で2時間程度待っていたらしく、この地域の親は大騒ぎだったみたいだ。とはいえ生きて帰って来ることができてよかった。

誕生日のディナーは「ノースカロライナバーベキューを食べに行こう!」とホストマザー、ファザー、マザーのお父さんとレストランへ向かう。バーベキューというと、グリルのイメージであったがどうやら違うみたいで、とにかくおいしかった! そしてもちろんアメリカンサイズでボリューム満点。出会ってまだ数日なのに、たくさんのプレゼントももらった。そして誕生日には私がギターを買いたいというと、ギターショップに連れて行ってくれた。自分の一番好みのベースギターを買い、これでバンドクラスを楽しむことにした。やっぱりギターを買うことへの喜びは計り知れない。



家に戻るとすぐピンポーンとチャイムが鳴る。どうやらホストマザーの義理のお母さんとその子供たちもお祝いに来てくれたみたい。初対面にも関わらず、バースデーソングも歌ってもらい、とても緊張した。子供達はホストマザーの義理の兄弟となるが年齢は私と同じくらいの3人兄弟だ。知りもしない日本から来た女の子を祝いに行くよと両親から言われ、ちゃんと来てくれる青年たちは相当優しい。

本当に良いファミリーに恵まれたなと感じた。そして花束を真ん中の青年が渡してくれた。日本では花束を貰うことなんてなかったし、初対面の同級生の子がくれることに緊張は最高潮。今も花束を女性に戸惑いなく渡す欧米文化はとても好きだ。
そして最年長の青年がケーキをくれ、ミニオンの蝋燭をホストマザーがつけてくれた。煙を消すタイミングもわからないまま、何とか主役という立場に耐え切った。





みんなでロングテーブルを囲みケーキを食べる。そのケーキはとっても美味しいフルーツタルトであった。会話はほとんど理解できず、うまく溶け込めない私に嫌な顔一切せずみんな接してくれた。挨拶はもちろんハグなのでバイバイもハグだが慣れない私を気遣って固まっていた私をみんな優しく包んでくれた。

文化はこんなにも異なるのかということばかりだが、人の温かさだけはどこに行っても変わらない。言葉が理解できなくても良い人か悪い人かの見分けはつくんだ。



たくさんの温かい人に囲まれた盛りだくさんの誕生日でした。



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