イーリングへやってきた。

Greenfields I'm in love #46

イーリングへやってきた。

Contributed by Aya Ueno

Trip / 2021.08.13

直感を信じ、ドキドキするものに向かって走り続ける神戸出身の大学生、Aya Uenoさんの連載「Greenfields I'm in love」。自分探しも兼ねたロンドンでの留学生活で、自分の目で見て、肌で感じたありのままの日々の記録をお届けします。

#46

残りの留学の3ヶ月半を過ごす、新しいホームステイの家族を紹介しよう!
ホストマザーはドイツ人のカトリン、ホストファザーにウィル、イギリス人。2人はドイツで出会い、数年後結婚してイギリスに来た。2人の間にはキュートな顔に大人顔負けの落ち着きがあるリリーと、甘えん坊なガキンチョ、ポーリーの2人のキッズ達がいて、最後にペットの愛犬の年寄りの犬、サリー。ホームメイトには、落ち着きとオーラを兼ねそろえた素敵なドイツ人、ルイーザと、若々しくいつもエネルギッシュなザ・イタリア人のグレイス。この家は、語学学校の生徒だけでなく、色んなところから人が来ているから、ルイーザは研究者だし、グレイスはインターンの為にここにいる(インターンしているかどうかは、就職にかなり響くみたい)。だから、2人は英語はもう既にペラペラだし、ルイーザに関してはカトリンと2人の時はドイツ語だった。2人とも、もう何度も何度もイギリスに来ては、この家に滞在していた。「この家に来る人はまた帰ってくるの」とカトリンは笑っていっていた。
家に入ると、私が勝手に思い描いていた陽気で楽しいお家の雰囲気とは違うと気がついた。子供達はテンションが高く動揺してるし、親はバタバタしていて心ここに在らずという感じ。そしてサリー、異様なまでに獣臭がする。
カトリンが、"あや、あなた最悪なタイミングで来たわ。ごめんね"と言う。この違和感の理由だった。おじいちゃん犬、サリーが危篤だというのだ。
そんな大変なタイミングに来た私を、2階に用意された部屋へ案内してくれた。部屋の大きさは、以前ホームステイしていた家の3分の1くらいだけど、作りも、インテリアも、すべてがとってもかわいい。壁には大好きなミロの絵が飾ってある。ベットのそばにあるかわいい机には、お花とクッキーが用意されていた。今日からここが私のお部屋だ。もうすでに、ワクワクする。
部屋の後は、お家をツアーしてもらった。階段の壁にも、廊下にも、絵がたくさん飾ってある。アートが好きなお家みたいだ。
それに、隣の部屋には大量のワインやビールがストックされていた。カトリンのドイツの実家は、ブリューワリーらしい! でも、カトリンは「ここをミュージックルームと呼ぶのよ」と言う。理由はバイオリンが1本あるからってだけ。

お花とウェルカムクッキー。



次の日、朝ごはんを食べる時間になって、その夢のような光景に私は嬉しくて嬉しくてたまらなかった。ちょうど、みんな朝ごはんを食べる時間で、一緒に食卓を囲んだ。カゴの中には色んな種類のパンやバゲット、ベーグルなど。たくさんのフルーツたち。コーヒーマシーンにミルクフォーマー。手作りのグラノーラに何種類ものナッツ。冷蔵庫には7、8種類のチーズがおもむろに並べられたチーズボックス、ハム…大好きな朝ごはんが、こんなに充実していて、しかもキッチンはこだわりがあってすごくかわいい。私はていねいに盛り付けて、ランチのベーグルサンドも拵えて、遅刻ギリギリになって家を出た。

素敵なマグカップをみつけた。同じ柄のお皿もある。



キッチン雑貨に目がない私にとって夢みたいなおうち。



新しいお家は、zone3に入っていたから、今までの定期では学校へ行けなかった(つまり定期代がまた高くなるのだけど)。時間的には前より20分くらい通学時間は長くなったけど、ピカデリーラインで一本。乗り換えがないのは楽だ。ヒースローまであと数駅というかなり西の方に来た。都心と比べれば大分長閑だし、行けば絶対知り合いがいるような地域のパブみたいなのがポツリポツリとあり、あとは少しの隙間も許さないほどびっしりと家が並ぶ。いかにもロンドンの住宅街という感じだ。

最近は雨の日が多い。



学校が終わって家に帰ると、子供たちは声をあげて泣き、カトリンも顔を真っ赤にしている。
愛犬のサリーが死んでいたのだ。死んでいたというか、見かねたお医者さんとカトリンが、注射を打って、安らかに眠らせてあげたらしい。気を紛らわすためか、元々きれい好きなのもあるだろうけど慌しく廊下の掃き掃除をしながら、階段からそれを見つめる私に"I'm upset Aya!"と連呼してきた。
その時私は、upsetの意味は「怒る」だけだと思っていた。なぜか怒られている。ホームステイが始まったばかりで、私も彼女のことをよく知らない。ごめんね、といって二階に上がった。後から調べたら、upsetには動揺とか、悲しいとか、そういう意味もあった。なんだ、そういうことかと腑に落ちて、でも私も"I'm sorry"と言ったから、意味は繋がったんだ、と思った。
そんなことより、愛犬が亡くなって子供たちはこんなに泣いていて、この家は今とっても悲しいモードだし、他のルームメイトと違って距離も遠い私はあまり共感できず、そもそもみんなのように英語ができないしかけられる言葉も限られていて、弱気になってしまう。なんだか少し寂しい気分にすらなってきた。
まあ、いい事ばっかり起こるなんて無理な話だもん。仕切り直して、前の家で壁に貼っていたポストカードやら切り抜いた紙やらをぺたぺた壁に貼ってお部屋を可愛くしたり、日本の友達やママと電話したりして、その日はあまり一階には行かず、部屋で過ごした。

荷解きも終え、ひと段落。




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