A Spell On You #4
あるいて、あるいて
Contributed by Aya Ueno
Trip / 2024.03.05
#4
2022年のヨーロッパ紀行、ドイツ、フランクフルト編。
ドイツは、私のじいじやママが学生時代を過ごした、2人の第二の故郷のような国だ。二人のその偏愛っぷりを幼いときから百万回と聞かされて育った私にとってこの国は、夢みたいな町、行ってみたい場所だった。
そうして叶った念願の渡独。歴史の深いドイツには、きっと見ておいた方がいい観光名所があちこちにあるはずだし、まず第一に私は今回フランクフルトにしか滞在する予定はなく、それってちょっと勿体無いかもしれない。でも、旅中いわゆる“観光”を一つもしなかったのは、その滞在目的が他でもなくつむちゃんだったからだ。つむちゃんの暮らし方がとっても興味深くて、私はとにかく彼女たちの生活のままに、なるべくそのままを過ごしたくて、観光名所の代わりに近隣の住宅街や公園を歩き回り、毎日のようにたくさんのマルシェや、パン屋さんへ通った。
Hi! 今日は雨が降りそうなので、ウィンドブレーカーを羽織って。
楽しそうなつむちゃん。
二人はよく立ち止まっては、何か話し始める。
1日目、夕飯の買い出しから帰った私たちは、ベランダに出て、芋掘りを始めた。ベランダで、芋掘り? 何も生えていないと思っていた長細い鉢は、その土の下にコロコロとしたベイビーサイズのじゃがいもをいくつも隠し持っていた。
土の中に手を入れたのはいつぶりだろう。この作業、すっごく楽しかった!
芋掘りが終わった後は、ディナーの準備をした。というか、二人がしてくれた。今日はみんなでテーブルや椅子を外に出して、ベランダで食べる。わざわざ寒い中、夜景を見ながらぎゅうぎゅうになって食べるディナーはすごく美味しかった。
ディナーを終えて、温かい室内に戻って、ぬくぬくとくつろぐ。長いフライトを終えて、今日1日たくさん歩き回って、お腹もいっぱい。今日はぐっすり寝られそう、とソファーに横たわっていたら、フロちゃんが「夜景を見に行くよ!」とカメラを持ってにっこり顔を覗き込んできた。正直絶対に嫌だと思って、つむちゃんの方を向く。つむちゃんは、もう眠いからと交渉しだした。良かった! 安堵したのも束の間、2、3回のラリーの末「しょうがない、フロちゃんは一度言い出すと聞かないの」というつむちゃんの諦めの言葉と一緒に、行くことが決まった。私たちはたくさん着込んで、絶望的に寒い冬の街へともう一度繰り出した。
外に出てみると、楽しくなってきた。
フロちゃんはカメラ好きで、日常的によく写真を撮っている。最近彼が手にした一眼レフは、私のコンデジと同じシリーズのFujifilmのもの。なんでも凝り性な彼なので(凝り性なだけでなく、とにかくなんでも自分で作る。たとえば、ドイツにいながらお蕎麦だって打つし、とっても素敵な家具も作る)カメラにおいても機能やアプリをフルで使いこなすのだけど、一方わたしといえば、機械をごちゃごちゃいじるのが煩わしく、写真が大好きなくせに、誰にも教えてもらわず特に自分で調べもせず、基本的なこと以外は我流に使っていた。
彼は、そんな私にとにかくドン引きしていて、この夜中の夜景撮影をはじめ、フランクフルトでの数日間、丁寧に、時に厳しくとにかく教え込んでくれた。改めて? 初めて? カメラとしっかり向き合う機会になって、今回の夜景のように、普段は撮らないような写真にも挑戦できて嬉しかった。
夜景を撮るフロちゃんと、目を瞑るつむちゃん。
バスでも目を瞑る。
続く!
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#Gloomy day All day
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Aya Ueno
兵庫県神戸出身、東京在住のWriter/Photographer。学生時代に渡ったイギリス留学を機に、人や、取り巻く空間を魅せる表現に興味を持ち、現在Containerをはじめ、カルチャー、フードメディアにて発信中。
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