As I Like It #26
ママからの荷物
Contributed by Utano Katayama
Trip / 2024.08.05
#26
嬉しくて、愛しすぎる贈り物。
ある朝、お腹が空いて自分の部屋がある2階から1階のリビングへ降りていくと、一緒に住むアニータから嬉しい報告があった。「あなたに荷物が届いたよ」と教えてくれる。私が寝ている間にアニータが荷物を受け取ってくれていたみたい。
実は数ヶ月前にママから、「荷物を送ったからね」というメッセージをもらっていた。まだかまだかと心待ちにしていた私は、何度かアニータに「荷物届いてなかった?」と聞いていたけれど、返ってくる答えはノーばかり。船便で送ってくれたからか、時間が思ったよりもずっとかかっていたみたいで荷物の存在も少し忘れかけていた。
そんなときにようやく届いた日本からの荷物。
嬉しすぎてちょっと心臓がばくばくした。
「本当にありがとう!!」とアニータにお礼を言って、早速自分の部屋でダンボールをまじまじと見る。ママは海外に送るから頑丈にしないとね、と分厚いダンボールにたくさんテープを貼ってくれたらしい。
よし開けよう、今日は朝からドキドキしっぱなしだ。
開けると中には見覚えのあるものばかり。私が大好きなおかきやお菓子、風邪薬やこっちで買えない日焼け止め、インスタントのお味噌汁やカレールウなど、ダンボールパンパンに、ぎっしりと日本のものが詰め込まれていた。やっぱり日本のものを見ると安心感がすごい。
イギリスでもぜんぜんやっていけると思っていたけれど、無意識に日本のものを欲していたんだと気付かされた。
頼んでいた靴やコートも。
掘っても掘ってもどんどんと出てくる荷物の1番上にはママからの手紙が添えられていた。久しぶりに見た見覚えのある文字は懐かしくて、愛情たっぷりのメッセージに少しうるっときた。久しぶりに家族みんなに会いたいな。
一人暮らしはまだしたことがなかったから、こうして家族から荷物を受け取るのは初めてだった。離れて暮らす親から仕送りをもらうときはこんな感情なんだろうな、と想像を膨らませながらママに「ありがとう」とメッセージを送った。
大量に届いたものたちは独り占めするには勿体無くて、こっちにいる友達にシェアするとみんなとっても喜んでいた。特に日本人の友達は懐かしいと大興奮だった。
アニータにもおかきやチョコレートをあげると、初めは物珍しそうに見つめていた。いつも新しいものにあまりチャレンジしないアニータも、一口食べると美味しいと言って笑顔になった。
本当にママにはいつも感謝だ。
その数日後、日本の友達とコロッケを作ることにした。大大大好物のコロッケがこっちで食べられるなんて嬉しすぎる。でもよくよく考えると材料はこっちでも揃うから、日本で作るものと同じ、本格的なコロッケが作れそう。
そうと決まれば仲の良い他の国の友達も呼んで、コロッケパーティーだ。
この鍋2杯分。みんなで協力してコロッケになるよう形作る。
大好きなコロッケパーティーだからと張り切りすぎて、思っていた何倍も大量生産してしまった。気づけば机の上はコロッケで埋め尽くされている。
やっと揚げる時間。換気扇を回していても部屋中に充満する香ばしい匂い、そして油で揚げる音。
次々と出来上がるコロッケたちを見て、これだこれだとみんなで顔を見合わせる。食べるのが楽しみすぎて、完成する前にフライングしてしまいそうだ。
コロッケ、できたー!!
何十個ものコロッケを揚げ終わって、もう私はお肉屋さんの気分だ。みんなでテーブルについて、しっかりときつね色に色づいたコロッケを前にすると思わず顔が緩んでしまう。
そして揚げたてのコロッケを一口かじると、サクッと音がした。日本の懐かしい味がする、幸せ。
これこれ!と言って食べる箸が止まらない。
こんなに完成度の高いコロッケがここで食べられるなんて思っていなかった。やっぱり日本の味が好きだなあ。他の国の友達からの評判もよくて、また是非とも開催したいコロッケパーティー。
日本を感じたここ数日間。こっちへ来て、離れてみて、初めて分かる良さがあることを知った。
温かい人もご飯の味も、家族の大切さも。日本に帰るまでまた頑張ろう!
つづく。
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Utano Katayama
2000年生まれ、京都在住の大学生。自分探しも兼ねてイギリスのBrightonという海沿いの街に留学中。イギリスのカルチャー、世界観にますます惹き込まれている日々を綴った"As I Like It"をContainerにて連載中。自慢できることは何でも食べられること。食、アクション映画が好き。