The destined meeting

Mis Pato aventuras #2

The destined meeting

Contributed by Ayaka Suita

Trip / 2024.02.02

想像もしていなかったメキシコ・オアハカへの移住。偶然の出会いが繋いだこの地で、新しい人生の舵をどう取るか。はじめてだらけの毎日を楽しみながら、冒険するように過ごすayakaさんの移住日記。

#2


キッチンに食べかけのトルティーヤが寂しそうに横たわっている。

「あ、ごめん、ごめん、昨日食べようと思ったのに寝ちゃったよ」
「これって、トルティーヤ? あのとうもろこしのやつ?」

私とパートナーは、オマールというメキシコ人と一緒に3人でシェアハウスに住んでいた。

オマールは朝いつもトルティーヤに何か挟んで食べていて
その具材を私に説明するのが日課になっていた。



「今日はチーズと鶏肉かな。ぐるぐる巻きのチーズをほどいて、こうやって裂いて食べるんだ。オアハカ地方のチーズだよ」



このとき、人生で初めて「オアハカ」という単語を聞いた。

「へー。シンプルだけど美味しそうだね」

全くスペイン語が話せない私にいつも英語で丁寧にいろんなことを教えてくれた。バスの乗り方やものの買い方、日常で使えるスペイン語まで。

「あやかは今日何するの?」
「今日はバレエのクラスに行く予定」
「バレエ?? 踊るの?」

実は1週間前に電車に乗っていたとき、バレリーナの格好をした小さな女の子が乗っていた。



「私も小さいとき、お母さんに連れられてバレエをしていたな」

ずっと再開したいと思っていたけれど大人になって身体が硬くなってしまったし、今更始めるのもなんだか恥ずかしいと思っていた。

そんなとき、女の子の隣に座っていたお母さんが私の視線に気づく。

「かわいいでしょ? この子! 今からバレエ教室に行くのよ」(スペイン語だったけれど、おそらくこう言っていた(笑))

そして女の子の通っているバレエ教室のインスタグラムを見せてくれた。多分誘ってくれていたんだと思う。

そこからずっとその親子とのやりとりが頭から離れなくなって、気がついたらGoogle mapで「ballet class」と検索していた。





スペイン語は分からないが、バレエだったら踊っている姿をみて真似すればいい。言葉は必要ないし、運動不足も解消される。そんな思いで体験レッスンに行ってみることにしたのだ。

オマールとの会話をあとにして、電車に乗って教室まで向かう。



クラスは10時から開始と連絡が来ていた。私が到着した時間は9時50分で、開始まであと10分あった。遅れてはいけないという意識が自分は日本人だなと思わせる。

それから10時15分になっても誰も現れず、日程を間違ってしまったのかなとメッセージを何度も確認したが、10時から開始と記載されていた。



道端のかわいいポスターを眺めながら待っていると、脚長メガネ少年がこっちに向かって歩いてくる。

この少年は生徒なのか?

「バレエの生徒?」と聞いたが、英語が分からないようで
でも、教室だと思われる大きな扉を指で差してくれたので生徒のようだった。



10時30分になったとき、ひとりの女性が車から降りて私に向かって「あやかだよね?」と聞いてきた。

彼女は英語が話せるようで少し安心した。

「ごめん。今日急用ができて遅れちゃった。今から始めるね」と言って脚長メガネ少年と私と先生のクラスが始まった。



ほぼプライベートレッスンじゃないかと思っていたら10分後、次から次へと生徒が来て、気づいたら10人ぐらいになっていた。

「今日からあやかがいるから、スペイン語と英語で説明していくね。みんな、今日から英語レッスンよ!」と先生。

他の生徒が嬉しそうに笑っていて、仲間に入れてもらえた気がして嬉しかった。

踊っている最中も「これって英語でなんていうの?」とみんなで英語を調べたりした。意味が分かった途端、みんなが「わかったぞ!」とゲラゲラ笑う。はしゃいでいる姿がたまらなく可愛かったし、あたたかい人たちだなと感じた瞬間だった。

クラスはあっという間に過ぎ、終わってから先生と少し話をした。

彼女の名前はソフィア。私のひとつ年上でバレエの他にもいろんな仕事をしてきたらしい。ケーキ屋さん、レストラン、バレリーナとしても活躍していて講演をたくさん控えているという。

のちに彼女はメキシコ生活で私の一番の理解者であり、私を支えてくれる存在となる。



この日彼女に出会ったことで私のメキシコ生活を大きく前進させることになるのだ。


【つづく】



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