California Roadtrip #4
-Coachella Music Festival-
Photo & Text: Ako Tsunematsu(MOUTH JOURNAL)
Trip / 2018.09.07
カリフォルニア・ロザンゼルスにある街トーランスから始まって、
サンディエゴ・シティ、パーム・スプリングス、コーチェラ・フェスティバル、ダウンタウン、
そしてアボット・キニーと、人生で初めて自分で買ったカメラ片手にめぐった10日間。
Special thanks to VISIT CALIFORNIA(http://www.visitcalifornia.jp)
#4 Coachella Music Festival
前の週末に行われた「コーチェラ・ヴァレー・ミュージック・アンド・アーツ・フェスティバル」、通称「コーチェラ」のライブ・ストリーミングを観ていた友人が、
「ビヨンセのシークレットゲストがDLCだったの。観た!?」
と、大興奮していたのを思い出す。
今週は誰を連れてきて、何をやってくれるんだろう……? 期待を膨らませながら、灼熱の砂漠地帯につくり上げられた会場に到着したのは夕暮れ前。
コーチェラとは、毎年60万人以上が参加する、世界で最もチケットが取れないと言われている野外音楽フェスだ。2週連続で同じアーティスト・ラインナップで金、土、日と開催されるのも特徴。毎年、名だたる超大御所たちがヘッドライナーとして登場し、3日間で100以上もの最もアップカミングで人気の豪華アーティストたちのライブパフォーマンスを一同にして観られる。今年のヘッドライナーはビヨンセ、エミネム、そしてザ・ウィークエンドだ。
また、なんといってもその空間自体がスペシャルで、世界中からパーティ好きなセレブリティや有名人などがこぞって駆けつけることでも知られている。
なんせ元は砂漠なわけだから、何か目印になる建物があったりするわけでもなく、A、B、Cと続くサインボードだけを手がかりに、ひたすらパーキングエリアを探す。
アーティストや報道関係者、スタッフ、そしてVIP客、一般客と、それぞれ立入り可能なエリアがものすごく複雑に分けられているから、広大な会場内はまるで迷路のようだし、どこもかしこもセキュリティ・チェックだらけ。
だけど、そのセキュリティの厳重さがコーチェラの凄さを物語っているようで、テンションは上がる一方だ。なんて言ったって、夢のコーチェラに来れたんだから!
ようやく、宿泊するサファリ・テント・サイトに到着した。
テント・サイトから会場までは5分とかからない。終日、ゴルフカートで送迎してくれるのだ。しかも、必然的にVIPパスも付くから全ライブはステージ脇のVIPエリアで観ることが可能で、巨大な会場内に点在するステージ間もゴルフカートですいすいと運んでもらえる。おまけにアーティストやセレブも利用するステージ裏のVIPラウンジも利用可能と、至れり尽せりだ。
それもそのはず、このサファリ・テントの宿泊料金、なんと一人50万円以上(入場料やVIPエリアパス代も込み)!
でも、友達はステージ裏でアリアナ・グランデに会って写真を撮ってもらって大興奮!していたから、このVIP待遇でおまけに憧れのアーティストに会えるかもしれないとなると、50万円って高いわけじゃないのかも(?)ね。
テントと言えど、電気はもちろん、ベッド、冷蔵庫やエアコンも完備!共有のシャワールームと綺麗なお手洗いもあり。テント前にはビニールプールを出して、カクテルを飲みながらパシャパシャ水浴びするのがお決まりだ。
そうこうしている間に陽が暮れてきたから、急いで会場内へと向かう。目の前に広がっていたのは、ひたすら広がる緑と摩訶不思議な建造物の数々、そして人、人、人……。
普通の格好をしている人と同じ、もしくはそれ以上の割合でみんな奇抜な格好をしている。たくさんの人が砂ぼこりを避けるためにバンダナを顔に巻いているのだけど、まるで部族みたいだ。
ステージとステージの間にはフードコートやインスタレーション、ポップアップブースなどがあり、先を見渡すと、一体なんなのかよくわからない巨大なアートや無数に連なって浮かぶ風船、そしてパームツリーがふさふさとその葉を揺らしている。
お祭りに来たというよりも、ゲームやアニメの世界に入り込んだような気分になって、誰もが童心に戻れるような雰囲気。
大人のアミューズメント・パークってこういうことなんじゃないかな。
そしてこの非現実的な世界観こそが、フェスの醍醐味なのではないだろうか。
ステージは全部で7つある。一番大きなコーチェラ・ステージでヴィンス・ステープルスが始まったかと思うと、モハーベ・ステージにはブラック・コーヒーが登場。その後はすぐにアウトドア・シアターでセント・ヴィンセントが始まる……!という風に、観たいアーティストを制覇しようと思ったら大忙しだ。
でも、VIPパスのおかげでステージ裏に行けば陽気なドライバーさんが「誰を観に行くの?」と尋ねてきて、むき出しのゴルフカートにひょい、と乗り込めば、結構なスピードで荒々しいバックステージの砂道を駆け抜け、目当てのステージに超速で連れて行ってもらえる。
日本じゃ絶対にありえないスピードが出ているはず……。なかなかのスリル感だ。
でも、ドライバーさんと他愛ない話をしながら浴びる夜風が気持ちいい。
ただ、この特権がなかったら、ステージ間を毎度歩いて移動するのはなかなか骨が折れると思う。
この日の自分的ハイライトは、フランス出身の二人組、ザ・ブレイズと、ベルギー出身のダンスロック・バンドであるソウル・ワックス。どちらも白熱のライブセットを披露してくれた。
そしてモハーベ・ステージのトリを務めたジャミロクワイも、素晴らしいの一言だった。
強い眼差しで、汗を流し、全身全霊で歌って踊ってパフォーマンスをするアーティストってなんてかっこいいんだろう。
カリフォルニアの砂漠のど真ん中、暗闇の中照らされるアーティストと、それを見つめる観客たちの笑顔が眩くって、感動する。
これまでいろんなフェスや音楽イベントに行ってきたけれど、アーティストと観客、それから主催側の3要素が好循環を生み出して、魔法がかかる瞬間がある。
主催側がアーティストのモチベーションを上げ、アーティストの気合いに観客が熱を注ぎ、するとアーティストがより輝いて、その場にいる全員が不思議な感覚を共有できた気がして、忘れられない音楽体験になるのだ。私はそんな現象のことを、一種の魔法だと思っている。
この日、魔法がかかるタイミングが何度もあった。
それはやっぱり「コーチェラ」がアーティストにとっても、観客にとっても特別なフェスであることを物語っているんだと思う。
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Ako Tsunematsu
常松亜子 Ako Tsunematsu Freelance Writer / Editor / Translator 東京在住。小・中学時代をLAとシンガポールで過ごす。好きなものはごはんと音楽。食や健康に関するトピックスの発信やイベントを行う編集チーム『MOUTH JOURNAL』の一人。