The Route #2「anna magazine編集長の取材日記」
ダニエルとサウスポイント。
anna magazine vol.12 "Good old days" editor's note
Contributed by Ryo Sudo
Trip / 2018.11.12
ダニエルとサウスポイント。
9/17。
今回の旅の最大の目的は、アメリカ最南端のハワイからアラスカまで、直行便で移動すること。ずっと前に友人から、アラスカ航空でハワイからアラスカへ直接行けるらしいという話を聞いて、いつかはチャレンジしてみたいと思っていたのだ。
早朝、ホノルルに到着。「ダニエル・K・イノウエ空港」という名前はまだまだ馴染めない。
機械式のイミグレーションで、出てきたレシートの名前部分に大きな×マークがついていて焦る。よくわからないまま、結局人がいるブースへ案内された。
「どこにいく予定なんだ?お前はラッキーな男だ!ハワイは最高だぞ」
という感じで底抜けに明るくあれこれと話しかけてくるのだけど、寝起きだった僕はそのテンションについていけず、ぼんやりマイルドに無視していたら、相手の声もだんだん小さくなっていった。
ホテルでチェックインを済ませ、部屋に入ってすぐにカーテンを開けるとオーシャンビュー、じゃなくて見えたのは隣のビルの壁だった。1日だけの滞在だしどんな部屋でもいいや、と思っていたのだけど、何だか歓迎されてない感じがして自分でも驚くほど落ち込む。窓から見える風景には、やっぱり特別な価値があるのだと理解する。
そのまま先にオアフ島を取材していたチームとのランチ&ミーティングへ。指定されたのは、30年近く前に初めてハワイを訪れた時、あまりに美味しさに感動したプレートランチのお店だった。
「早くオーダー決めてもらえない?」
あの時とまったく変わらない、なげやりな感じの接客にセンチメンタルな気分に浸っていたら、地元に住むエディターにはそのスタイルがどうしても許せないようだった。BBQプレートは思ったほど美味しくなかったけど、「変わらない」ことがとてもうれしかった。
部屋に戻ってローカルビールをひと口飲んだら、知らないうちに眠っていた。気づいたらもう夕方だった。18時にはDUKESでディナーの予定だったので、慌ててシャワーを浴びる。到着後に浴びる最初のシャワーは最高だ。熱いシャワーを浴びて新しいシャツに袖を通すと、それだけで気分がポジティブになる。
ホテルは、眺めとインテリア今ひとつでも、ワイキキビーチへのアクセスは抜群だった。ビーチに座ってしばらく海を眺める。20分くらいぼうっと海を見ていたら、だんだんこの土地のリズムに慣れてきた。あれこれ考えることも忘れて、いつの間にか頭の中が空っぽになっていく。
さらりと弱い雨が降ったと思ったら、マキキの方角の空に二重の虹がかかっていた。
「お、ついてる。やっぱりハワイは最高だね」
気分なんて本当にちょっとしたことで、簡単に変わる。
夕暮れのDUKESは確かに最高だった。一緒だったエディターがDUKESは特別な場所なんだと熱心に話してくれた。街からほんの少ししか離れていないのに、自分たちが暮らす日常とはまるっきり別の時間が流れているらしい。テラス席を取れたし、少し肌寒いくらいの海風と波音、そして月明かりに、すっかり満ち足りた気分になる。
部屋に戻るとハワイ島取材を担当したいつもの仲間たちがいて、その明るい表情から取材が順調だったことがすぐにわかった。スケートパークで声をかけた女の子があれこれ世話をしてくれたらしい。相変わらずのアベンジャーなコミュニケーション力に安心する。カメラマンとエディターがサウスポイントに飛び込んだ青春ドラマのような映像を見ていたら、なんだかそわそわしてきた。
明日からまた、楽しみな旅が始まる。
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Ryo Sudo
anna magazine編集長。制作会社Mo-Greenで数多くの広告制作、企業ブランディングなどに関わる傍ら、"anna magazine"、"sukimono book"などペーパーメディアを中心に独自の視点で日常生活を再編集し続けている。