Couch Surfing Club #8

アメリカンドーナツの夢

New York

Contributed by Yui Horiuchi

Trip / oct.23.2019



ヘビーでアメリカンな朝ごはんにガブつく。今日は待ちに待った同級生ミカがオフの日、二人でアートデートの予定だ。目的地はホイットニービエンナーレが開催中のWHITNEY MUSEUM。こちら、私ははじめましてな美術館。



美術館までの道中、ヒップホップトリビアがミカから飛び出した。ラッパーのジェイ・Zの名前の由来になったという治安の悪い路線がほんとに彼の芸名になったということ。



言われて納得、だってそのままだったから。当時はこの路線でライムを踏んでたのか、と一瞬妄想しながらトライベッカで乗り換え。

今日のために日本から持ってきた写ルンですを早速取り出し、一日の始まりを記録した。



ホイットニーに向かう前に、Letaと Wadeの屋外作品を見るためにまずシーポートに立ち寄った。これも、詰め込みまくった観光予定のひとつ。

ウォールストリートの高層ビル群の中に突如現れるカラフルなパネルたち。見るからにLetaとWadeのアイコニックな作品。細かく計算されて元気が出るカラーリングとパターンが綿密に繰り広げられていた。先日訪れたスタジオに一枚一枚のパネルを室内に運び入れ、着彩後、現場で組み立てたと言っていたパネルが今目の前の石畳の上に組み立てられている。



大きな作品は、出来上がってしまうと一旦そうなるべきだったという説得力があるけど、形になるまでは作業工程が正しいのか、細かな採寸に誤りがないのか、などなど…気がかりなことが多い。私も大きな作品に取り掛かった時に一気に仕上げることができないタイプなので、「不安がつきまとったのでは」などと、今はそんなこと微塵も感じさせず満足げに太陽光を受けとめるパネルを見ながら思った。LetaとWadeは、二人して寝食を忘れ、蒸し返すような真夏のニューヨークで、数日着替えもせずに制作に没頭していたという。そんな裏話を聞いていただけに、本当におつかれさまと撮影した写真にメッセージを添えて二人に連絡を入れた。

写ルンですを向け恥ずかしがるミカに「写真は一生残るんだから、ちゃんと笑って!」とリクエスト。今まで10年も同じ学校に通っていても、予備校でしか一緒にいなかったミカとこうしてスタテン島行きのフェリーの発着所にいることがちょっと可笑しくて、面白かった。



ダイバーシティーを先導するニューヨークの一片を目の当たりにしながら、歩を進める。ハイラインの最終地点の先に、WHITNEY MUSEUMが見えてきた。



エントランスを抜けるとミュージアムショップでミカが誰かと小話を始め、聞いてみたら同僚の方だったらしい。みんなN.Hollywoodのショーを終え、余暇を満喫しているようだった。



荷物を預け、エレベーターに乗り込む。大きな網かごの中にいるみたい!



これが一番笑った作品。



テラスではしゃいでいたらおじさんに声をかけられた。



「僕が誰だか知ってる?」知るはずがない(笑) 「グーグルでMayor of Meatpacking districtと調べろ」と言う。つまりミートパッキング地区の市長は誰か、嘘か誠か彼の写真が検索結果に出て来る。記念に写真を撮ってあげるよとオファーされた時の一枚。どうやら赤いアイテムが彼のトレードマークらしい。



そのあと、トイレに立ち寄りった。なぜこうなるかと疑問に思うことのよくあるアメリカのトイレ事情。この時は、丸ごとトイレットペーパーが床に転がっていた。これは使いたくない(笑)



ハイラインに上がり、チェルシーマーケットに向かった。



ここの旧駅舎で去年のN.Hollywoodのショーをやったそうだ。これまではニューヨークにきてからモデルハンティングをして、現地でルックを組み立てていたと言う。そのこだわりは素晴らしいし、ショーは必見だと思ったが、それまでの苦労を思うと今年はミカの肩の荷が降りていたのでは、と思って少し安堵した。

先日同様、またヒシャムさんレコメンドを信頼しきってチェルシーマーケット内のLos Tacos No.1でスタンドタコスで簡単なランチを済ませた。この店ではフラワーかコーンのトルティーヤが選べる。迷わず、コーンのトルティーヤを選んだ。厨房ではその場で皮をギュッと押し伸ばし、焼きたてにメインの具材を入れてくれる。スタンドに山積みにされた、サルサとコリアンダー、ライム、ワカモレはDIYで入れ放題。必然的に好き嫌いで具材の量が分かれる。私は、コリアンダー抜きで他の具材を大量に詰め込んだ。



小さいシェルにもちろん具材は収まらず、手元をサルサソースまみれにしながらタコスを頬張った。小腹を満たし、一緒に頼んだ酸っぱいタマリンドジュースでお口直し。その後マーケット内を散策し、ブッチャーにて店頭で作られたというビーフジャーキーを試しに買ってみたりした。



このあとミカは、取り急ぎミーティングへ。深夜にまた会おうと約束し、一旦別行動に。

一人で建築探訪することにした。ぷらぷらしながら次の場所へ。



ニューヨーク滞在中にワンワールドトレードセンター内に展示されている、Joseの最大級の壁画が見たくて、思い切って最終日にと立ち寄ってみたが、あえなく断念した。それもそのはず、9.11のあった場所にノーアポで簡単に入館できると思った私が軽率だった。

今でも鮮明に覚えている。小6の頃に生中継で突然テレビに流れてきた、黒煙をあげるツインタワーの映像。あまりにも衝撃的で凄まじくアンリアルな感覚を覚えたことを今でも思い出す。

2001年から18年というの月日が経ち、テロの爪痕はくっきりと別の形でそこに残っていた。黒い石のメモリアルに刻まれた、数名の日本人の名前が自然と目に入る。大きな大きな暮石にも思える石碑に刻まれた無数の名前に手をあてて、突然奪われてしまった彼らの人生に想いを馳せ、思わずグっと目頭に熱いものがこみ上げた。ぽっかりと空いた跡地そのものに流れ落ちる滝は愛する家族や友人を失い、流された涙を彷彿とさせ、思わず言葉を失ってしまった。



前回来た時は事故から8年後のことだったが、跡地全体に囲いができていて、中ではグランド・ゼロの復興作業の真っ最中だったのを思い出した。当時、ビルの崩落であたりは見るも無残な状況だったんだろうなどと想像し周囲を見渡すと石碑の向こうにまた別の新しい建築物が目に入る。これは残酷な表現になってしまうけど、亡くなった方達の遺骨を彷彿とさせるようなちょっと怖さも覚える外観の建物があった。



駅と直結の建物となっており、2016にはすでにニューヨーク最大級のショッピングモールへと変貌を遂げていたらしい。建築家を調べてみて納得、鳥の羽や滑らかな放物線を得意とするサンティアゴ・カラトラヴァの作品だった。基本的なデザインは彼の往年の作品と共通するものがあるがここまで支柱むき出しの建物はちょっと怖い。なんでこんなデザインになってしまうのか疑問に思い、ググってみると納得の文言を見つけた。『「カラトヴァがやったからだ。」それに尽きる。』以上。たったそれだけ。



内装も一通り眺めたら疲れてしまい、ラテン語で『眼(eye)』という意味を持つOculusをあとにした。

次の待ち合わせ場所に向かう間の時間潰しにとL Trainに乗り、その名も L Train Villageという古着屋に立ち寄ってみた。これぞ、ニューヨーク、そんなシンボリスティックなTシャツを見つけ$10で購入し、店を後にした。



次の待ち人Lukeが遅刻しているらしい。ごはん時にめちゃめちゃ混雑している店内で一人待つのは辛いので、道中気になったハッピーアワー中のバーにふらり立ち寄ってみた。IPAをパイントで三杯一気に飲み干していたら、生粋のニューヨーク生まれニューヨーク育ちだと言うバーテンダーが心配している様子で、話しかけてきてくれた。



ほろ酔い気分でいると、待ち合わせ場所を変えたいと連絡が入った。急いで店を後にして、元いた場所に歩いて戻った。

店内に先に入っているではずのLukeを探す。Lukeは日本のレジデンスの滞在を希望しているオーストラリア出身のアーティストで、推薦状を書いてあげたり少し世話をしてあげた相手だが会ったことはなかった。今回はたまたまインスタのストーリーでLukeを見かけて、「ニューヨークにいるなら会おうよ」とメッセージを送ったのだ。作品しか知らなくて本人の見た目が分からない、なんだかちょっとブラインドデートみたいだ。

『どこにいる? こっちはピンクのトップスに黒いパンツ、そっちから見える?』そんなメッセージを送ったら背中をツンツンされた。そこにいたのは、想像もしてなかったイケメンが(笑)

今回の滞在理由を聞くと、LAのレジデンス滞在の合間、SOHOに住んでいる友人が遊びに呼んでくれたらしい。律儀にも推薦状のお礼にと、ごはんをご馳走してくれた。中身までハンサムかよ!(笑)

デザートに想像もしてなかった可愛らしいアイスクリーム屋さんに連れて行ってくれた。これがおすすめというアイスを二つ頼む。雨が降ってきた店先で残暑に耐えられず、溶け始めるアイスを食べながら雑談の続きをした。

街頭にシェパードの赤ちゃんを連れた男の子が現れ、ご多分にもれず撫で回させてもらった。すると、Lukeが思わず大量の子犬とじゃれ合う画像を見せてくれた。実家の愛犬が毎年10匹前後の子犬を産むらしい。小さくて片手に収まってしまうちっちゃな子犬たちに悶絶しながら、いつか必ず会いに行くねと思わず言ってしまった。(ほんとうに行くのかわたし!?笑)

雨も強まり、今度またいつかどこかで会おうと写真を撮り合ってバイバイ。きっと次回はLAか東京で。



ホテルに戻る途中CVSで買い物をするので、ミカに付き合ってと連絡した。颯爽と現れるかっこいいお姉さんはニューヨーカーさながら。



入店してからはふざけまくり、中身は中学生のまま(笑)



自分たちのお土産も買い納め。それぞれホテルへ戻り、急ぎパッキングをして翌日のフライトへ備えた。バタバタと120%の稼働率で仕事も滞在も大大大満喫できたのは、ミカが「出張の日程に合わせて来たら? 楽しいことになるかもよ」という提案あってのこと。自分たちが10代の頃はこんな日が来ることはおろか、同じ大学に進学するとさえ思いもしてなかった。そんな考えがよぎり、人生明日は何が起きるか分からない、けど楽しい思い出を集積させていくことができるのは他ならぬ自分次第なんだと改めた気づかされた今回の旅だった。冷え込むフライトと深夜に到着する羽田の天候を考え、翌日の洋服をスタンバイした。

こんなこと夢にも思わなかったけど、最終日となってふと翌朝食べるであろう最後のアメリカンドーナツが少し楽しみになっていた。「明日帰るよ」と、母に連絡してベッドランプに手を伸ばす。

おやすみニューヨーク!
またすぐね!

PS. ミカ、だいすきだよ❤️XO



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