Couch Surfing Club -西海岸ロードトリップ編- #38
Is the glass half empty or half full?
Contributed by Yui Horiuchi
Trip / 2023.04.20
#38
寝起きから鼻詰まりを感じていたけど、チャイを飲み始めていたら身体が温まってきて、さらに鼻水が出てきた。
熱はないけど風邪の引き始めのような。
またコロナかもって嫌な予感も。
取り急ぎ前回の処方で残っていた薬を服用して様子を見る。
リビングで鼻をかんでいると友人が仕事部屋から笑いながら出てきて
「なんか懐かしい音がする」
1週間前まではコロナでずっと鼻をかんでいたからだろう。
「朝ごはんどっか食べ行かない？」
「いいよ」
「でも体調大丈夫？」
「まだ様子見、今のうちに出かけよ」
今朝は予報通りの雨。
いつもは車内が暑くなりすぎるから開けっぱなしにしていた助手席の窓から雨が降り込んでいて、座席が濡れていた。
濡れた座面に座って身体を冷やしたら体調が持たないと思いバスタオルを座席半分に敷いて出かけた。
ティッシュボックスをかかえて座るわたしに横から
「それじゃあレストランでイートインは嫌がれるね」
「そうだね、どこかでテイクアウトは？」
「いいね、ならCountry Storeがいいね、多分去年来てると思うよ」
「聞き覚えないかも、ワッフル食べたとこ？」
「いやそれはTony’s」
「まあ行けば分かるよ」
「まさか！なんで日曜の朝に開いてないの！」
目的の店の前に着いたらしい
「わたしここ来たことないよ」
「そうだった？どうしよう、代わりにどこ行こうか」
「Los BagelsってTo goできるよね？」
「確かに、ベーグルでいいの？」
「うん、また同じの食べたい 」
「いいね、じゃあそうしよう」
Los Bagelsに到着。
わたしは車内でティッシュ箱を抱えたまま待つことに。
コーヒーを先に持ってきてくれたのでドアを開ける。
「今の見てた？」
「見てない、どうかした？」
「いや大丈夫戻ってきたら話す」
笑ったままドアを閉めて、雨の中小走りで傘をささずに店内へ戻っていった。
しばらくして3人前のto go のボックスを持った友人が戻ってくる
「これって朝食、昼食、夕食だよね？」
「ううん、朝食、朝食、朝食」
「うそでしょ！」
笑いながら先程の出来事について訊ねる。
写真は家に着いてから撮ったもの。
「そうそう、自分の前にいたおばさんが最悪でさ、めっちゃオーダーしまくって、あげく注文して途中で変えたり、ものすごい混乱を引き起こしてて。しかも量がすごいから車まで運ぶの手伝ってあげたら、この雨の中２ブロックも先に車停めてて！信じられる？歩いてる間、リタイアしてアルケータにヴィクトリア調の家を購入してサンディエゴから引っ越してきたっていう自慢話まで聞かされて散々だった！でも店に戻ったらちょうど自分たちのオーダーができたところでまぁ良い時間潰しにはなったかも」
「むっちゃ親切じゃん、きっと良いことあるよ」
「そうだといいけど。あーもうめっちゃお腹すいた！」
3食分のベーグルではなく立ち寄ったデリのブレックファストブリトーを器用に運転席で広げ始める友人。
真っ直ぐすぎる道を膝でハンドルを押さえながらブリトーを食べ始めた。
友人の良い行いのおかげか、夕方には雨も上がり散歩に出かける。
Mad Riverの両サイドに広がるとうもろこし畑の緑が輝いていて、外の空気には少し秋の香りも混じっていた。
雨が降ったおかげで虹も見えた。
悪いことの後に良いこと起こるのか。
良いことが悪い出来事のおかげで際立つのか。
それとも良いことが起きても悪いことがないと感覚が鈍って有り難みを感じないだけなのか。
ちょうど友人と物事の捉え方の話をしたばかりだった。
『Is the glass half empty or half full?』
半分の中身が入ったグラスを見て『半分しか入ってない』と思うか『半分も入っている』と思うか。
雨のせいで出かけられなかったとは思わず雨のおかげで家でゆっくりできたと考えた方が幸せそうな気もする。
物事の捉え方次第では、体調を壊して初めて日ごろの健康な身体に感謝もできる。
明日は自分のためにも少しの前向きに何かを捉えてみようと思った。
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Yui Horiuchi
東京を拠点に活動するアーティスト。幼少期をワシントンD.C.で過ごし、現在は雑誌のイラストや大型作品まで幅広く手掛ける。2015年に発表した「FROM BEHIND」は代表作。自然の中にある女性の後ろ姿を水彩画で描いた。自然に存在する美や豊かな色彩を主題にする彼女の作品は海外でも評価されている。
