北海道ロードトリップーコロナへの逆襲ー

Hit the Road #4

北海道ロードトリップーコロナへの逆襲ー

マインドは曇りのち晴れ

Contributed by Natsumi Chiba

Trip / 2020.10.30

東南アジアをはじめ世界中を旅してきたNatsumi Chibaさん。コロナ渦の中で、海外へ自由にいくことができない今、彼女が向かったのは北海道。Road tripをしながら雄大な北海道の大地を駆け巡るニューノーマルな旅の模様をお届けします。

#4

突然だけど、私は『進撃の巨人』が大好きだ。今年の夏に急にハマってしまって、コミックスを最新刊まで揃えて貪るように読み、好きなキャラクターが死んでしまったら泣くし、この先の展開はどうなるのだろうとほぼ毎日考えていた。

ということを、テントの中でゴロゴロしていた時にふと思い出した。あんなに考えていたのに、北海道に来たらパッタリと忘れていたのだ。

読んだことある人は分かるかもしれないけど、この物語はそれぞれの人物の立場に立つと、なにが正しいのか、なにが悪なのかが分からなくなる非常に考えさせられる物語。悪者に見えるコイツにも実はこんな過去が・・・なんてこともしっかりと描いてくれるから、読んでいて辛くなったりもする。私が『進撃の巨人』で好きなところは、物語が持つその残酷さに心が揺さぶられること。それが面白い。

思えば私は常に感情が揺さぶられるものを欲しているのだと思う。それが小説だったり、漫画やアニメ、映画だったりとその時々で変わる。今はロケーションも変わり、気候も変わって「自然」のフェーズに入ったみたい。「残酷さ」に惹かれるという、ある意味で偏っていた私のマインドが北海道の自然に解されてフラットになったことを、寝袋にくるまりながら感じた。

それはさておき、自然を楽しみながら北海道を周るのなら、天気はかなり重要。晴れれば山に登れるし、綺麗な景色も見ることが出来る。私たちはほぼ無計画でスタートしたけど、天気に従って動いていたら最終的に満足して終わることが出来た。もしかしたら夏以外に北海道でロードトリップをするなら、フレキシブルでいる為にあえて計画しない方が上手くいくのかもしれない。

そんな調子で世界自然遺産・知床では天気と同じくクマの活動も重要。知床五湖では、クマの目撃情報があると地上遊歩道が閉まってしまうことがよくある。私達は幸いにも、訪れた滞在最終日は開放されていて、実際に歩くことが出来た。クマと共存し、クマの生息地に「お邪魔する」のが知床観光だ。


知床五湖は五つの沼からなり、一湖から五湖まで名前が付いている。写真は一湖と知床連山


知床三湖



道が整備されているので、散歩感覚で軽く訪れることができるのが魅力。それでも十分すぎるほどに森は深い。雲の切れ間から差し込む光がさらに木漏れ日をつくり、太陽のありがたみを感じる。北海道はとにかく空が広いので、コンクリートジャングルに隠れてしまう都会の雲とは違い、その動きを逐一感じることが出来る。



日本百名山で北海道最高峰(2,291m)の旭岳も一度登ろうとして来たものの、悪天候が続き諦めて知床まで来たら、天気が回復してきたのでわざわざ戻ることにした。車で向かっている時に、遠くに見える雪化粧をした山頂を見て「私達あの山登るの?!」とワクワクと信じられないような気持ちが入り混じっていた。


ロープウェイで標高1,600mまで登ってスタートしてすぐに姿見の池に出会える


「ソーシャルディスタンス」を保ち、「マスク/フェイスシールド」を着用して他人との接触をなるべく控えなければいけない状況下では、登山中にすれ違う人達との「こんにちは」の挨拶、「あとどれくらいで八合目ですか?」とか「頂上どうでしたか?」のちょっとした話が余計に「山登りっていいなぁ」と思わせてくれる。

アイゼンを持っていない私達が頂上まで行けるかどうか分からなかったので、途中で山慣れしているおじさんに聞いてみた。すると彼もアイゼンが無いから八合目まで行って下りてくるつもりだと言う。なら私達も、八合目を今日の頂上にすることにした。



登り始めは曇っていたけど、八合目からはだんだんと空の青さが顔を出してきた。さて、下りようかと最後に頂上の方を見上げると、何だか急激に名残惜しくなってきて、しかもめっちゃ晴れてる!!! よく見ると、途中で話しかけたおじさんも結局登頂目指して歩を進めていた。こんな晴れを見たら登らずにはいられないよね。




旭岳の頂上


ぼすっぼすっと雪に足を取られながらもゆっくり登る。足に感じるさくさくと深い雪の感触が楽しかった。初めての雪山。頂上からの景色は涙が出るくらいに綺麗で、「来て良かった」と心の底から思った。友達とハイタッチをして登頂を祝う。北海道で一番高いハイタッチ。

旅している時は最高にお天気屋でいることが許される。曇りでも晴れでも気の向くまま、気の向くことをすればいいだけ。シンプルでいることが出来るのが旅の醍醐味のひとつ。あ〜、やっぱり旅っていいな。


つづく


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