unusual #5

長距離移動

Contributed by YUKA

Trip / jan.23.2020

東京で暮らす日々の中で、心に少しでもゆとりをもって生活できるように、刺激を求めて世界各国を旅してきたYUKAさん。“非日常生活での経験は、わたしの暮らしへのスパイス”と語る彼女が旅の中で見て、知って、感じたことをフィルムカメラで撮りためた写真とともにお送りします。

#5

当時、蔵前のホステルで働いていたわたしは、トリップオフという会社の制度を利用して2週間の旅に出ていた。

「宿で働いている以上、自分がゲストとなって経験することや視点や感情が仕事にも繋がるに違いないから、旅に行っておいで」という福利厚生の一環で1年に1度、2週間の有給休暇をとれるのだ。

旅の計画を始めた時、スリランカから南インドにも行こうかと考えていたのだけど、欲張ると移動がメインの旅になってしまうのは前回の旅で学んでいたので、限られた時間でなるべくのんびりじっくりスリランカを見て回ることにした。



ここは行ってみたいと思う4箇所を先に決めて、点と点を結ぶようにルートを決めた。移動の日はとことん移動して、目的地ではなるべく長居する。もう少しここに居たいと思ったら居れるように、次の宿の予約はギリギリまでしない。

東京での生活はいくらマイペースでも、いくらマイペースでありたいと思っていても、ある程度は社会のペースにコントロールされてしまう。何にも縛られずに自分のペースでする旅の気楽さと言ったらもう。楽しいと楽(らく)はイコールではないと思っているけど、ひとり旅に限ってはイコールに等しい。

訪れるその地でも、もちろんルールがあって、わたしを束縛するものやことはたくさんあるはずなのに、どこか客観的で無責任でいられる。無責任って言い方だと少し聞こえが悪いような気もするけど。これが住むことと訪れること、日常と非日常の境界線なのかなと思う。

なんとなくだけど絶対的に決まっている世間のルールや私ではない誰かが決めた基準なんかに左右されずにすむ時、人は普段気づけない自分の本質的なところに気づけるような気がする。コントロールされて色んなフィルターを通した自分じゃなくって、本当の自分。だから、たまには一人旅に出るのがいいと思う。今の自分をじっくり見つめながら、新しいことに触れたりして。



***

長距離移動の日の大原則は、「露出しない」「現地に馴染む」「少し怪しく」の3点。
誰に習ったわけでもないけど、移動の日は荷物も多いし、狙われるならこのタイミングなんじゃないかなと思っている。なので、なるだけ目をつけられないような、性別もできれば不明くらいの雰囲気を目指している。この原則のおかげもあってか、悪い思いは一度もしたことがない。



風になびくと左胸のshakaがパタパタ揺れて「aloha~」の声が今にも聞こえてきそうなお気に入りのTシャツ。

電車に乗って、ドアを開けたまま超高速で走るぎゅうぎゅうのバスを2度乗り継いで、8時間。いや、9時間? 案の定一睡もできないまま次の目的地へ向かった。

バスの中の目的地を目指す人々がざわざわとしてきたので、到着が近いことがわかった。ギリギリ陽が落ちる前に着きそうだ。ずっと山道を走っていたバスが急にひらけた場所へ出た途端。広がる湖に反射する夕陽。焼ける空。マジックアワーだ。美しさに圧倒されて、なんだか目頭がじわじわと熱くなった。8時間のノンストップ移動はさすがにめちゃくちゃ疲れた。左胸のshakaも心なしか元気がない。

バスを降りると、ホステルとは逆の方に歩いて、もう沈みかけている夕陽を追った。この瞬間はシャッターを切りたかった。夜がすぐそこまで来ている。一日わたしを見守ってくれていた太陽も沈んで、太陽光を採れないと撮ることができないカメラも、あと少しでお役御免。そしてきっとわたしももうすぐ力尽きる。みんなタイミングばっちり。



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