Face the reality, what have I left here?

No Sleep Ever #20

Face the reality, what have I left here?

Contributed by Chika Hasebe

Trip / 2023.12.08

「NYは毎日どこかで何かしら起きている、本当に忙しい街」目標に向かって、自ら道を開拓し続ける会社員・Chika Hasebeさんが、眠れない街NYへ旅に出た。誰よりも好奇心に従順な彼女だからこそ感じる、NYでの新しい発見と、心揺らすできごと。

#20


2週間という会社員の休みにしては度が行き過ぎているかもしれないホリデーをNY探検に費やしたが、その旅もついに終わりを迎えた。名残惜しさもありつつ、家でゆっくり息をつくことができると思うと安堵の気持ちもあり。特にNYは気を張っていないと倒されちゃいそうなハードな街なので、余計疲れたのかもしれない。



帰りの飛行機、また遅延だ。今回のフライトで合計5便乗ったが、そのうち3便で遅延発生。コネクティングフライトで遅延するならまだいいが、最後の便が遅くなることで結局家に帰る時間も遅くなるのはキツい。有給を無駄に消化したくなくて、翌日から働くようにスケジュールを組んでしまった自分を今更恨む。最後に乗った便は距離も長かったのでJALにしてみたが、搭乗案内も日本語に切り替わったし、周りも日本人がほとんどで、「ああ旅が終わるんだな」ということを突然痛感させられた。



やっと成田に着いたと思ったが、ここからも長かった。当時(2022年5月)、ワクチン接種を3回した人だけが入国時隔離を回避できる制度に切り替わったばかりだった。もちろん全員抗原検査を受けなければならないし、色々ルールの細かい書類も提出しなければならない。終わりの見えない廊下と待ち時間がずっと続いた。

これだから日本は……とあまり言いたくないけれど、飛行機から降り立ってから色々なことに違和感を感じてしまった。隣の人に話しかけても何も答えてもらえなかったり、わたしが違う椅子に座って順番を待っていただけですごい剣幕で迫ってきたり、NYで道端の人に着ていたTシャツを通りすがりに褒められるなんていう距離感からは真逆のコミュニケーションが突然始まり、まだ自分の心の準備ができていなかったので凹んでしまった。無駄に手続きが多かったり、アナウンスが異様に丁寧だったりするのも目についてしまって、自分の感覚が早くもNYに慣れ始めていたことに気づく。

でも一方で周りの言語は日本語なので、どれだけ注意を払わなくても必要な情報が耳に入ってくる。地下鉄やバスで乗り過ごしが多発していたNY旅。最後の方は地図じゃなくて、車内の看板を見ながら目的地に辿り着けるようになったけれど、依然ハードルは高い。それが日本に帰ってきたら、自然と耳が情報をかき分けて必要なことは逃さないようにちゃんと働き始めた。やっぱり母国語ってすごいな。

空港の出口を抜けると花を持った人や看板を手にした人を見かける。大抵の旅で誰かがわたしを待っていることはない。ただの旅行では帰宅まで一人が普通だ。でも帰国して一番に会いたかった人がここで待っていてくれたらどれだけ幸せなんだろうって、このときばかりはちょっと思っちゃった。「成田はさすがに遠いんだよね」って言っていた彼。次から羽田着にしようかな。

なんとか家に着いた。やっと家に着いた安心感。でも夜寝るときに、昨日までいた場所と違いすぎて自分が空っぽになってしまったように感じた。たったの2週間なのに、自分が留学から帰ってきてうわの空だったのと同じ。もしかしたら会社員にとっての2週間は長すぎたのかもしれない。



後日、カメラのフィルムを現像しに行った。持っていたフィルムを手放すと、自分の任務を完了させたような気分になった。ついに終わった実感。元の生活に戻る。でもこのフィルムもすぐに今度は膨大な写真となって返ってくる。思い出として返ってくる。36枚撮りを3ロール使い果たした。さあこの写真をどうしよう。どう使っても、使わなくても自分の自由。この自由ってすごくいいな。色々遊んでみたくなった。



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