Fight for what?

London, Can you wait? #4

Fight for what?

Contributed by Chika Hasebe

Trip / 2024.05.10

ロンドンに来てみた。実際に住んでみたら、自分は何を感じてその先に何を求めるか見てみたかった。ロンドンに拠点を移した会社員・Chika Hasebeさんによる、社会との体当たり日記。現在と過去を交互に綴ります。

#4


今日思ったこと。

夜8時すぎ、取材から会社に戻る道の途中、いつも行くカフェやスーパー、小売店のシャッターが既に閉まっていることに気づいた。これから編集作業があるからコーヒーでも一杯ぐいっといきたかったのに……。残業体質ではないロンドンのオフィス街で、遅い時間まで営業する必要はないのだろう。中心地にも関わらずかなり静かだった。


週暮らしなヒリヒリ生活

結局その日会社を出たのは11時頃。帰り道、まだ火曜日なのに「今週キツそうだな」と黄色信号が灯る。日本への一時帰国を終えてしばらく経ったので、久々にこっちの友達と会う約束もしたかったが、週の後半まで元気が保つかわからない。約束は保留にした。

今週同僚が休みなので、何か発生すればわたし一人で対応だ。特にあらかじめ予定された大きなイベントはないものの、いつもより気を張る。

別にやっていることが難しい、容量を超えているなどということではない。むしろ働く環境はすこぶる風通しがいいし、柔軟に動ける。200%東京オフィスの方が処理能力の高さとスピード感を求められ、個々へのプレッシャーは重いはずだ。

それでも不定期に「今週も生き残らないと……」という謎の生存本能が働く。


サマータイムが始まり、仕事終わりでもこんな気持ちのいい空が見られるようになったのは救い


今戦闘モードなのは、仕事で抱えていることが訴訟ごとだからかもしれない。法曹界には独自の言語や規定、服装までもが存在する。日本ですら色々覚えることがあってややこしいのに、イギリスの法曹システムなんて知ったこっちゃない。元々同僚が担当していた案件だが、彼女の休暇に裁判が被ったため、わたしが引き継ぐことになった。

かなり長引いている訴訟。情報も全て伝聞ベースで、自分たちが現在地に立てているのかも微妙だ。毎日弁護士事務所へ問い合わせるたびに違う情報を電話で伝えられる。なんとなくいつも雲行きが怪しい。

もらった情報を元に動いて、実際空振りもしている。まだ他社に出し抜かれていないだけましと思えばいいけれど、取りこぼしをしていない確証もない。


裁判所のサイト。情報は毎日更新なので、先の予定がわからない


それに前回の公聴会では、早口で話される裁判用語に撃沈。傍聴席で聞いていたのに何が起きたのかほぼわからなかった。

わたしはせっかちなので闇雲に頑張ることが苦手だ。労力に伴った結果はすぐ出てほしいから、ダイエットも向いてない。それなのに、この件に詳しい同僚も不在で方向性が定まらないなか、情報収集を基本的に一人で処理しているので、なんとなく肩に重荷がかかる感じが取れないのだろう。

それ以外にも一人で調べているネタがあったり、日々同僚と分担しているタスクを一時的に一人で受けたり、ちょっとずつ負荷がかかっている今週。でもまた来週になればきっとリセットされるはずだから、なんとか今をサバイブしたい。この感覚、生存本能に近いような気がしている……。



帰ったらひとまず間接照明をつけて、ベッドで寝落ちしないように一旦デスクに腰掛けます。デスクの椅子で寝落ちしていることもあります




「英語上手いね」って褒め言葉じゃないよ

語学力について、仕事では基本的には問題ないものの、もちろん気を張る要素の一つには違いない。

特に弁護士や学者などタイトルがある人にお伺いを立てるメールや電話をするときは、今でも緊張する。「舐められない英語」で対等にならないとちゃんと情報が引き出せない。取り合ってもらうにはちゃんと自分の最大限を見せたいものだ。

渡英直後に、友達の紹介で仲良くなった人と飲んだ。彼女はもうイギリスに5年以上住んでいるはずだが、「発音を直したいので今からスクールに通おうと思う」(通っている、だったかもしれない)と言っていた。

わたしは当時「なんで今頃通うのだろう?」「もう生活に慣れているのにどうして必要なのだろう?」正直彼女の目的が理解できなかった。でも最近やっとわかった気がする。英語を理由にネイティブから舐められたくないのだ。


彼女と一緒に飲んだときの写真が出てきた。美味しそう


特に仕事で初めて会話する人とは、最初の第一声で印象を掴まれる。わたしは見た目が完全アジア人なので、ただでさえ英語に関しては見下されてばかりだ。今でも「英語上手いね」と言われるとムッとするときがある。このシチュエーションを限りなく減らすためにも、このジャパイングリッシュ要素を少しでも減らしたい。だから発音スクールは今振り返るといい考えなのかも。

大学在学中に留学したときは、真逆のことを感じて帰国した。語学は結局伝わることが大事なので、正しさや知識に囚われずに伝えたいパッションと場数を踏む以外にないと。大学受験で英語の学術文書も読まされているので、大抵の日本人の英語理解の基礎レベルは結構高いはずだ。それでもわたしが話せなかったのは、単に自信と会話の間合いの取り方がわからなかったからだと思う。


昼休みちょっとぼーっとできるスクエアが近くにあるのはありがたい


今回の渡英では、語学力は全然完璧とはほど遠いけど、不安な部分はそこまでなかった。自分が会話でつまずくことが取り合ってくれない理由なら、そこまでしてその人にこだわる必要もない。言語は所詮ツールだから、中身に軸がある限り言いたいことは伝わるだろうと楽観視していた。

今も基本姿勢は変わらないが、この職場で勤め始めてから、仕事でディスアドバンテージになるような要素は無くしたいと思うようになった。働くことは「I screwed up.」じゃ許されない。

だから日々「舐められない英語」で頑張っていきたい。発音スクール通おうかな、わたしも。でも近所のプールの会員登録もしたいし、映画館の会員も活用したい。毎週音楽イベントもノンストップだし、やっぱりやること多いなロンドン。勉強法模索は続く……。


前の職場で売っていた。これで£25は高いな




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