日本食が恋しくなったヨーロッパ

To Me, Somewhere in the World #83

日本食が恋しくなったヨーロッパ

Contributed by Yoko

Trip / 2023.06.21

『“今”の心地よさを一番大切に』
未知なモノすべて知らないことを知りたい、自分に忠実に生きるフリーランスのWebライター・編集者Yokoさん。日本国内の旅の話をリアルタイムで、時に振り返りながらつづる旅連載。


#83


旅で食も楽しむようになったのは、わりと大人になってからだ。20代は「行ったことのないところに行くこと」にひたすらフォーカスしていたため、食にかける時間がもったいないと思っていた。観光、観光、観光、ある意味ヘルシーな行程で、食は現地のグルメには見向きもしていなかった気がする。今も無理して現地のグルメを食べるようなことはしないが、昔よりは旅の「食」を楽しんでいる気がする。今回はスペインでパエリアをよく食べた。


バルセロナのタパスで。


ただ、食で言うと、アジアの料理が圧倒的に好きだ。日本でもコアなお店を探せばやっと見つかるかもしれない、名も知らない香辛料をたっぷり使ったアジアの味。より「現地でしか」食べられないような気がする味。欧米の料理は、日本でも求められることが多いと思うし、結局日本ナイズされたものを日本で食べるのが美味しい気がしてしまう。だからこそ、再現するのが難しそうな、ローカルなアジアの味に希少性を感じるのだ。


ラーメンと寿司が多いバルセロナ。


だからアジアを旅している時は「日本食が恋しい」と思うことはほぼないのだけれど、久しぶりにヨーロッパに10日間ほど滞在していたら、すっかりお米や味噌汁などのシンプルな日本食が恋しくなってしまった。バルセロナの街を歩きながら、アジア人経営(日本人経営とは限らないでしょう)の日本食レストランを見つけるたびに見入ってしまったほどに。


ITSU1食目。



ITSU2食目。


結局、バルセロナでは日本食を選ばなかったが、ロンドンのITSUでは寿司……のようなものを食べた。味噌汁も。諸々の事情でやや体調面が弱っていたこともあり、余計に恋しかった日本食。久しぶりの日本風の食事は、染み渡るほど美味しかった。お袋の味、の国版とでも言ったところ。弱っている時こそいつもの味を求めるのかな、など話しながら美味しくいただいた。ロンドンからマドリードに飛ぶ前の空港でも、もう1回。正直なところ、日本にいたら選ばない斬新な寿司も、異国の地では本当に貴重で、とんでもなく美味しく感じた。


マドリードのカフェでモーニング。


日本に帰ってきてしばらくして、一口ひとくちの食事が染み渡るほど美味しい。もちろん、好きなだけ日本食を食べられる。当たり前の喜びを改めて幸せに感じられる日々は、非日常と日常の間に落ちている気がした。



アーカイブはこちら

Tag

Writer

  • Yoko

    長野在住、北海道出身。世界一周予定が新型コロナウイルスの影響で中止に。東京から葉山、長野へと拠点を移しつつ、国内外を自由に旅している。レバンガ北海道(#11)とアイスが好き。フリーランスのWebライター・編集者。