Couch Surfing Club -西海岸ロードトリップ編- #37
Hey Noodle!
Contributed by Yui Horiuchi
Trip / 2023.04.13
#37
寝ぼけてキッチンにコーヒーを淹れにいく。
シンクの上の窓が少し開いていて網戸越しにリズミカルにザクっザクっと剪定の音がする。
脚立の上から三段目に見覚えのあるサイドゴアブーツが朝日に照らされていた。
玄関に周り戸を開ける。
「おはよう」
逆光で顔のシルエットしか見えない友人が脚立の上から
「良く眠れた?」
わたしは手のひらをひらひらさせながら
「そこそこかな」
このところよく眠れていなかったのでそう答えた。
わたし達の身長の2倍ほどある垣根、オレゴン行きを控えていたので
「昨日ちょうど垣根の剪定したいって言ってたからいつやりたいのか今朝まさに聞こうと思ってたらもう取り掛かってたんだね」
「天気予報見たら明日から雨らしくて数日天気が悪いみたいだからやっちゃおうかなって」
「雨珍しいね」
「ずっと剪定しなきゃって言ってやってなかったからギリギリにやるテスト勉強みたいな感じになっちゃった」
「それに今日は5時からカレッジフットボールあるしね」
寝起きのパジャマ姿のままガレージに行きタープとゴミ箱、熊手を取ってきた。
友人の切り落とした枝を熊手でかき集め、広げたタープの上に積み上げては、駐車場に止めてある牽引トレーラーに集めたものをまとめていく繰り返し。
山仕事や家の管理は日本でもやり慣れている
「この斧わたしとお揃いだ」
なんて言いながら薪割りも手伝った。
「なんか言った?」
イヤホンをしながら剪定をしていた友人が脚立の上から問いかける
「なにも言ってないけど?」
すると隣の家の前に停めてあった車の中にいた女性が出てきて
「わたしです!今トランクから出てくる犬がいるんだけど、自信満々なだけで怖がらせようとしてるわけじゃないからって伝えておこうと思って」
隣人の娘さんらしい
「おいでNoodle!」
コーギーのミックス犬のような子が車の荷台から飛び出してきた。
やや老犬のよう、地毛はスニッカードゥードルの色に白髭がたくさん混じっている。
言われてみれば確かにヌードル色。
一通りわたし達の匂いを嗅ぎお菓子を持ってないと判断したのか堂々と隣の家の中へと入っていった。
剪定を終えたわたし達はごみ収集場へ。
実は一回友人が財布を忘れたのですぐに戻ってきたところだった。
この地域のゴミの捨て方は3通り
1、自宅にごみ収集しにきてもらうサービスを利用する
2、自分でごみ収集場に持ち込みをする
3、捨てない
1と2ではゴミ捨ての代金が50%も変わってくるらしい。
3は主に裏庭やガレージがゴミ屋敷になるパターン。
普通ゴミ、リサイクル、コンポスト、段ボールを自分達で分別してそれぞれのゴミ捨て場に投げ入れていく。
通り過ぎたトラックのコンテナの一つはマットレス専用の回収場所になっていた。
一種類のゴミを処分するたび車ごと計量し分類ごとに割り当てられた支払いをしていくシステム。
高速道路の窓口のように車体の計量をする時に対応してくれる受付があり、車を計量する定位置に停めると車の荷台の窓から顔を出した犬の顔がちょうど窓口の女性の目の前の位置だった。
3度の計量のたびに毎回片手にいっぱいのドッグクッキーを荷台に放り込んでもらい大興奮の犬が面白可笑しくて可愛かった。
今日のお昼ごはんは少なめにしないと食べ過ぎだねと友達と笑いながら綺麗に片付いたガレージに戻ってきた。
ガレージからキッチンへ、ダイニングテーブルの上に出しっぱなしにしていた遊び途中のScrabbleに手をつける。
初めて第一言語が英語の友人にわたしが勝った記念すべき一戦となった。
「記念に写真を撮ったら?」
「そうだね、こんなこともうないかもしれない」
おでこに人差し指と親指でLの字を作って笑い合った。
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Yui Horiuchi
東京を拠点に活動するアーティスト。幼少期をワシントンD.C.で過ごし、現在は雑誌のイラストや大型作品まで幅広く手掛ける。2015年に発表した「FROM BEHIND」は代表作。自然の中にある女性の後ろ姿を水彩画で描いた。自然に存在する美や豊かな色彩を主題にする彼女の作品は海外でも評価されている。