As I Like It #32
青と緑と黄金色
Contributed by Utano Katayama
Trip / 2024.10.28
#32
今週末はどこへ行こう。
少し前に仲良くなった日本の友達が、「セブンシスターズにまだ行ったことがない」と言うので週末、2人で出かけることに。私はというと、ブライトンに来てすぐの頃に行ったきり。それ以来大好きな場所で、あと一度は必ず訪れたいと思っていたから嬉しい。
セブンシスターズはブライトンから向かうとバス一本で着いてしまうから、ちょっと自然に身を置きたいときには完璧な居場所になるかもしれない。
バスに乗り込む前に腹ごしらえ。いつも通っているSushimaniaに寄る(日本食レストランだけど、オーナーは中国人)。ここはオーナーもスタッフもみんな中国人だからか、少しカタコトなメニュー。いつもくすりと笑ってしまう。
天ぷら盛り合わせ
友達は久しぶりの日本食を嬉しそうに食べていて、一緒に来られてよかったな、としみじみ思った。やっぱり母国料理のパワーって偉大だよね。身体の内側まで染みわたる感じ。
そのあと大好きなアイスチョコレートのお店に寄り道をして、いよいよ大自然行きのバスに乗り込んだ。
バスは海沿いの街の中をずっとずっと進んでいく。チョコレートドリンクを飲みながら、バスは進む。次第に窓の景色からは家がなくなって、だんだんと辺り一面に草原や丘が広がって、牛や羊たちもぽつりぽつりと見えはじめる。
ここだ、この見覚えのある景色。
バス停に着いた途端、以前訪れたときと同じ空気にふわっと包まれた気がした。微かにする潮の香りと、空まで澄み切った空気が気持ちいい。
写真では分かり辛いのが難点だけど、果てしなく続く白壁は巨大すぎて、ビーチに敷きつまった石くらい、自分たちがとってもちっぽけに思える。
空には大きな雲がいくつもあって、太陽が隠れたり日が差したりと、数分単位でまったく違った景色を見せてくれる。ころころ表情を変えるセブンシスターズは見ていて飽きがこない。
この日は張り切って崖の上に登ってみることに。以前来た時はそびえ立つ断崖に尻込みして下から見上げていただけだったから、今日こそはもう一歩踏み出してその先の景色を見たい! 少し息切れしながら長い長い丘を登る。
地平線まで続く緑の丘
地平線のその先もずっと続いていてほしい、と思うぐらい神秘的な光景にうっとり。
段々と日が沈んできたからか、辺りが黄金色の光に包まれてきた。辿り着くまでのしんどさなんて全て吹っ飛んでしまった。やっぱり上に登って正解だ!
空の青と丘の緑とブロンドヘアの友達
ここにある、全ての色が調和しているような気がして、なんとなく心が満たされて優しい気持ちになる。下を覗き込む友達が落ちないかヒヤヒヤしながら私も一緒に覗いてみる。
エメラルドグリーンの海が波打つ様子を数分間2人で眺める。
波打つ海を見ていたら、その光景にすっかり吸い込まれて時間なんて忘れてしまう。海って人を惹きつけるパワーを持っているよね。その気が無くても頭の中を空っぽにできるから、定期的に海に行きたくなるのかな。
果てしなく広がる丘の上を散策してみる。
ぷらぷらと歩きながら長く伸びる影に向き合ったり、石ころを集めたり☺︎
丘の上をどんどん進んで、気が済むまで歩いた。広すぎてキリがない。行こうと思えばどこまでも行けてしまいそうだから、ほどほどに。折り返して戻ることにした。ここは街灯がないから、日が暮れちゃう前に帰ろう。
帰りはバス停を見失って、1時間くらい遠回りする大惨事が起きたけど、これもこれでいい思い出だ。おかげでパクパクと草を食べる、かわいい羊たちも近くで見られたし、生まれて初めてヒッチハイクをしようかと本気で悩んだりもした。
ただこんなにも周りに何もない道を歩いたのは初めてで、映画の世界にいつの間にか迷い込んだようだった。遠回りも悪くないな。またバスに揺られて、この大自然に戻ってこよう。
あの石ころで並べたニコちゃんはいつまで残っているかな? そんな平和なことを考えながら、ブライトンへの帰路についた。
つづく。
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Utano Katayama
2000年生まれ、京都在住の大学生。自分探しも兼ねてイギリスのBrightonという海沿いの街に留学中。イギリスのカルチャー、世界観にますます惹き込まれている日々を綴った"As I Like It"をContainerにて連載中。自慢できることは何でも食べられること。食、アクション映画が好き。