unusual #9

山に囲まれた小さな町

Contributed by YUKA

Trip / jun.19.2020

東京で暮らす日々の中で、心に少しでもゆとりをもって生活できるように、刺激を求めて世界各国を旅してきたYUKAさん。“非日常生活での経験は、わたしの暮らしへのスパイス”と語る彼女が旅の中で見て、知って、感じたことをフィルムカメラで撮りためた写真とともにお送りします。

#9

Ella(エッラ)は山の上にあるとても小さな町。

霧が多く湿度も高度も高い場所に発達する雲霧林とスリランカの名産品である紅茶の茶畑で覆われた山々に囲まれている町である。

Ellaまではいつものギュウギュウのバスに乗って、途中からは贅沢にトゥクトゥクに乗り換えて来た。

水田や田んぼが続く道もいつからか大きな木々に包まれるような山道へと変わっていった。

つい先程まで干からびそうなくらいに乾燥していた空気もいつの間にか呼吸しやすい湿った空気に。

***

Check in までは時間があったので宿に荷物を預けて、レセプションの人にオススメされたEllaでは少し有名な観光スポット「Nine Arch Bridge(ナインアーチブリッジ)」に行ってみることにした。

スリランカではイギリスの植民地時代に、紅茶を運ぶために作られた鉄道が今も現役で走っていて、

Ellaの周りは山なのでその鉄道が渓谷を渡るための陸橋がいくつかあるのだ。

その陸橋の中でも、石造りになってから今まで1度も修繕されたことがないクラシックな陸橋がNine Arch Bridge。

駅から入って線路を歩いて小一時間。現地の人にとって線路は大事な移動経路なので、家に帰る人、大きな荷物を持って運ぶ人、様々な人たちが歩いていた。後ろから電車が来るとみんな見向きもしないで電車を避けて一旦止まる。

線路を歩くのにもコツがいる。まくら木を踏むのか、地面を踏むのか、レールの上を歩くのか。

わたしはレールの上派。歩道橋とかでも、階段ではなくて自転車をころがす坂道を通る派だ。

まくら木とまくら木の間隔はわたしの歩幅とちょっと合わなかったのだ。

わたしみたいに遊びに来た外国人もちらほら見かけた。同じペースで歩いていると自然と会話が弾んだ。

1日に1本だったかな。赤ではなく青い鉄道が通るからそれを見られたらラッキーなんだと、一緒に歩いて来たフランス人のバックパッカーが教えてくれた。



橋の下はものすごい渓谷で、目下に広がる雲霧林の中からは聞いたことのない鳥の鳴き声やどこかで水が落ちる音。

何かが動く気配や、風が吹くたびに一緒に揺れる木々のぶつかり合う音。

森が生きているとはまさにこのことだろう。



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宿に帰るなり、イギリスから来た同室の女の子4人組が各々持参のMy蚊帳をベッドにセッティングしていた。

うんうん。わかる。わかってる。この湿度と温度、蚊の大好物だよね。

蚊帳なんて持ち合わせてなかったわたしは少し不安になって、4人組の一人に話しかけてみると

どうやら彼女たちは元々5人で旅をしていたとのこと。

昨日一人が蚊に刺されてデング熱にかかってしまい、彼女は高熱にうなされて病院にいると。

そりゃぁ蚊帳も買うよね。6人部屋の女性専用ドミトリーのベッドが1つ空いている理由にも納得。

恐れてはいたけど、やっぱり。

蚊帳を持っていなかったわたしは、厳重警戒態勢で寝ることになる。

蚊帳の中でタンクトップにショートパンツで寝る彼女たちを横目に

シャワーを浴びて虫除けクリームを流し、シャワーから出て虫除けクリームを塗り、

長袖長ズボンのパジャマでつま先から肩まですっぽりブランケットにくるまって顔にタオルを乗せて寝た。

どうか、どうか刺さないでね。

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