NY—Cuba

the Explorers Road Trip USA

Contributed by anna magazine

Trip / 2017.11.15



今日も世界を旅している。パソコンを見て、SNSを見て。え、そうなの? でも、本当の旅はきっと違う。1ヶ月に渡る道のりを振り返りながらそう実感する。NYからアメリカの東海岸をひたすら南下し、カリブ海からキューバを目指す。女性2人旅だけど、アメリカではもちろん飛行機は使わない。それって何キロだ!?

とにかく知らない場所に行きたいから、NYはほどほどにして、モントーク、プロビンスタウンに足を運ぶ。昨日見た雨はどこにもない。人懐っこい彼らの声はもうとっくに遠くへ消えていて、目の前には、やけに大きなトラックが走るまっすぐな道だけが見える。電気は使わず、自給自足の生活を守り続けるアーミッシュが多く暮らす街ランカスター。NYからクルマでわずか3時間のその街には、NYとはまるで真逆の生活があった。外部との接触を避けているかのようにも感じる彼らは、現代の情報社会にまったく汚されてなく、高貴な存在ですらあった。





マイアミまではまだ10倍くらいの距離があるなあ。そんなアーミッシュの暮らしに触れた後で、携帯の地図を片手に計算している自分がいた。国道のダイナーには、安くておいしいプレートがある。それを思いきり頬張り、宿に戻る。「サンキュー」と言うウエイターの声は少しだるそうで、ああ、アメリカの田舎町に来たなと妙に安心した。



NYを発ち数日後、ボルチモア、サバンナと移動を続け、やっと東海岸の中間地点まで到着。ここまでの旅で1日に1,000マイルを車で走ったこともある。例えばこの距離を日本で走ったとして、こんなに状況が変化することがあるのだろうか? そう思うほどに、訪れる街ごとに文化や習慣が違う。昨日までいた街と、今ここにいる場所が決して同じ国とは思えない。もう感覚もすっかり鈍っていて、「クルマで5時間? ああ、近いね」となっていた。でも旅はまだまだ長い。サバンナからはアムトラックに乗って、マイアミに向かうことにする。とは言え、乗車時間は14時間。アメリカってデカすぎるよ。



めくるめく景色に翻弄されながら、ただ目の前のことを全力で感じる日々。こうして、やっとキューバへ向かう拠点としてカリブ海のバハマ諸島へ辿り着いた頃には、もう自分が誰だかわからなくなっていた。ちょうどオリンピック開催のタイミングで、バハマ人が金メダルを獲得する瞬間を共にしたけど、なぜか全力で自分も喜んでいた。金メダルを心から祝うバハマの少年と、少し不機嫌に部屋に戻る2位獲得のアメリカ人。オリンピックという世界共通のことばがある喜びと、国境という存在の意味。同じ宿でも国境があるんだなあ。寂しい気持ちに包まれた翌朝、なぜかこの旅で初めての美しい虹を見た。





その先のキューバにはコカコーラはあったけど、アメリカからはまだまだ簡単に入国はできないらしい。世界は自分の想像を絶するほど広い。長い旅を終え、日本に帰ってきた頃には身体はボロボロだったけど、今まで味わったことのない充実感があった。クーラーの効いた部屋でする旅なんて嘘だ。Wi-Fiのないキューバで、本当は携帯なんて投げ捨ててしまおうかと思っていた。

写真:相馬ミナ/文:菅 明美

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