【最終話】肩書きをなくした、わたし

Mamma mia! #175

【最終話】肩書きをなくした、わたし

Contributed by Aco Hirai

Trip / 2023.09.05

イタリアに活動の拠点を移し、フリーのエディター・ライターとして活躍するAco Hiraiさんの生活をパーソナルな視点で綴った連載「Mamma mia!」。


イタリアに来てから胸を張って編集者ですと言えなくなった。
理由は簡単、イタリアにいては今までのように100%やりたい仕事ができないのだから。

インタビューをしたり、記事を書いたりはできるけど、イメージを作り、撮影し、物に落とし込むという自分の好きな仕事は難しくなった。おまけに移住当初は、意味の分からないパンデミックという時代に突入し、外へすら出ることが許されない日々が続いた。
その間、自分との葛藤が続き、帰国しようと思ったこともある。

以前からフリーランスだったため、定期的に帰国日の確認や仕事の依頼をくれるクライアントや以前の上司。
どれも遠隔では難しいため、断らざるを得ない状況が続いた。

期待に満ちた海外生活は、時にキャリアが邪魔をし、くだらないプライドが捨てきれず、前に進むことに躊躇する。

今まで通り、何不自由なく好きな仕事ができる日本か、
新たな発見を見据えた海外生活か

この狭間で揺れ動くうちに、一体自分は何者なのか、何がやりたいのか、どこに居るべきなのか、
鈍っていく感覚。
幾つになっても、自分を見失ってしまうことがあるのだ。



そんな海外生活を送る私に、商業的ではなく個人として「物を書く」という機会を与えてくれたのが、この【Container】だ。

時には、誰かのインスピレーションやライフスタイルのヒントになっているのだろうかと疑問を抱き、できるだけ自分を曝け出しながら、良いことも悪いことも含め、自分が得た経験や考え方をシェアしたいと思うようになった。

そんな中で、分岐点に立たされ、大事なモノと出会い、マインドの変化が起こり、徐々に自分の居場所を肯定できるようになったのは、日本に一時帰国した3年目の秋頃だったかもしれない。


たくさん迷って、できるだけもがいて、自分を肯定しながら生きよう、と。


約3年半続いた連載「Mamma mia!」は、今日が最終話です。
長い間、お付き合い頂きありがとうございました。
編集長の須藤さんをはじめ、担当の辻さん、編集部の皆さんに心より感謝申し上げます。


次は新しいステップとして、新連載をスタートさせる予定です。
また、お会いできるのを楽しみにしています。





Aco Hirai
2023年9月5日



アーカイブはこちら

Tag

Writer