新しいお家と、こどもについて

Greenfields I'm in love #48

新しいお家と、こどもについて

Contributed by Aya Ueno

Trip / 2021.09.10

直感を信じ、ドキドキするものに向かって走り続ける神戸出身の大学生、Aya Uenoさんの連載「Greenfields I'm in love」。自分探しも兼ねたロンドンでの留学生活で、自分の目で見て、肌で感じたありのままの日々の記録をお届けします。

#48

新しいステイ先、Tichener家での毎日がはじまった。
朝ご飯を食べて、ホームメイトのグレイスと一緒に学校へ行く。グレイスは、ホストファザー、ウィルの職場でインターンをしていて、私の学校と最寄り駅が同じ! 彼女との1時間の通学時間は一瞬だ。

最近のマイブームは、マンデリンとギークヨーグルトの組み合わせ。



引っ越した次の日にペットのサリーが死んで、大泣きしていたリリーとポーリーは数日経ったらケロッとしている。もちろんまだまだ寂しがってはいるものの、彼らには夢中なものができたのだ。
それは、わたしのiPad!(………笑)
新入りのわたしは、iPadを持っているだけに、2人の超人気者になった。何がそんなに楽しいのか、まるでこの世にこれほど面白いものはないと言わんばかりの幸せいっぱいの顔でゲームを楽しむ。2人の性格は、遊び方にもよく出ている。たまに画面を遮り邪魔をする別のゲームの広告にまんまと目移りし、ダウンロードしてとせがむポーリー。スプレーやアイロンで女の子にヘアアレンジをするアプリと、お絵かきのアプリのみを永遠と往復するリリー。たまに、絵の中になにやらごちゃごちゃと文字を書いていると思ったら、「私はリリーです。イーリングに住んでいる、9歳です。最近犬のサリーが死にました。会いたいです。今度新しい犬を飼います。たのしみ。」とある。なんだか…複雑な気持ちになる。

朝の5時くらいに部屋をノックしてゲームしようぜと言ってきたりと、狂った様にiPadにどハマりしたキッズたちは、案の定iPadをいじるのはweekendだけ、とか、触っていいのは2人合わせて1時間、とかいろんなルールを課された。

お絵描きをするリリーと、同時進行でアングリーバードをみるポーリー。1時間の猶予を最大限に満喫する2人。



iPadは1週間に1時間だけ、これは私にとっては嬉しいルールである。
かくれんぼをしたり、ボードゲームしたり、紙とペンでお絵描きしたり、毎日部屋をノックして今日はこれをしよう、昨日はこれをしたから、今日はこれはどうかと誘ってくる2人が本当に可愛くて、いつも家に帰るのが楽しかった。
リリーは、私の持ち物に興味津々だ。なんでもよく触って試して遊んでいた。彼女の小さな爪にネイルを塗ってあげたり、アイロンで髪を巻いたり、お化粧をし合ったり、彼女は普段ポーリーとはこんなこと絶対できないし、わたしも兄弟も従兄弟もみんな男の子だったから、私たちはまるで姉妹みたいだった。

カラフルなネイルが嬉しそうなリリー。



彼女は私のお気に入りのアーティストだ。



子供関連でいえば、ベビーシッターも引き続き毎週やっている。最近、ベビーシッター先のさくちゃんは、学校で新しくヴァイオリンの授業が始まり、得意げに何回も披露してくれる。毎回弾く前と終わった後は律儀にお辞儀をするし、ヴァイオリンを手にしている間は決して笑わない彼女。ちっちゃなプロのヴァイオリニストだ。

真剣なさくちゃん。




妹のみれちゃん。さくちゃんにヴァイオリンを教えてもらって嬉しそう。



こっちの学校はなんでも本物に触れさせる文化があって素敵だ。さくちゃんが持っているのも、小さいけど立派なヴァイオリンだし、学校で頻繁にコンサートへいったり、ミュージアムへいったりする。アートの授業で作るものは、驚くほど手の込んだものばかり。例えば切り絵一つにしても、腕や足の関節部分は金属を使ってしっかり動くようにしてあったりする。
子供だからって、子供用の事ばかりさせないし、大人も楽しめるようなところへ連れて行く。多少難しいことでも、できなかったら大人も手伝い一緒になって行う。
私は教育について何もわからないけど、よく考える。そして、これ(イギリスの教育観)ってすごくいいことなんじゃない? と思う。宿題は手伝ってもらっちゃだめとか、その場所は子どもにはまだ早いとか、子供にはまだわからないとか、そんな消極的な考えよりよっぽどポジディブで楽しい。少し手を差し伸べたって、何も悪いことはない、1人でやるより素敵なものができるかもしれないし、大人向きな場所へ行っても、難しいけど少し分かることがあるかもしれない。むしろ大人になったら感じないような子供だから受け取る感情があるかもしれないのだ。
この間、さくちゃんと会った時、一本の砂利道を手を繋いで一緒に歩いた。そしたら、さくちゃんが私を見上げて、あやさん、石がふわふわだね! と言った。
私は、驚いてなんて素敵な表現だろうかと思った。砂利は石だから固いと思っていて、ふわふわだなんて思いもしなかった。そう言われたら、小石が足の裏でコロコロ動いて柔らかい。
もしかしたらさくちゃんのこんな表現は、さくちゃんの目線でいろんな世界に触れる中で培ったのかもしれない。わたしがちっちゃなさくちゃんの世界に触れることで、そんな表現を知ったように。
いつか私に子供がうまれたとき、いろんな場所へ連れて行ってあげたいし、出来ないことは私も一緒に手伝ってあげよう。きっと今みたいに、子供に教えることより学ぶことの方がいっぱいあるんだろうな。

カトリン(ホストマザー)の手作りグラノーラ。レシピはドイツ語。




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