旅の終わりとロンドンのはじまり

Greenfields I'm in love #3

旅の終わりとロンドンのはじまり

Contributed by Aya Ueno

Trip / 2020.04.17

直感を信じ、ドキドキするものに向かって走り続ける神戸出身の大学生、Aya Uenoさんの連載「Greenfields I'm in love」。自分探しも兼ねたロンドンでの留学生活で、自分の目で見て、肌で感じたありのままの日々の記録をお届けします。前回に引き続き留学前のイタリア旅行の模様をお届けします。

#3

ゆったりと時間を過ごしていたら、気づけばベネチア最終日。名物のゴンドラに乗った。
今まで渡っていた石畳の橋の下を、通り抜ける。すごく長いゴンドラを、クネクネと曲がる細い運河の上を自由自在に運転するゴンドリエーレ(ゴンドラを操縦する人)。ベネチアには、その専門の学校もあるみたいだ。ちなみに入るのはかなり難しいらしい。

ゴンドリエーレの優しいおじちゃん。シマシマの制服がよく似合う!





リアルト橋の麓でゴンドラを降りた。空一面が淡いピンクと薄紫に染まり、神秘的で、橋は写真を撮ろうと観光客でいっぱいだ。



ベネチアで1番気に入ったお店はSignor Blum。
木製の可愛らしいインテリアが店内を埋め尽くしている。
中でもこの飾りが気に入って、ドアにかけるようにと、弟とお揃いで買ってもらった。



ただ色が塗ってあるだけじゃなくて、全部取り外しができてパズルみたいになっている。帰ってから見るのがたのしみ!

最後の晩餐は、600年弱の歴史を誇る老舗のオステリアへ。オステリアとは日本でいう居酒屋で、豊富なワインや、チケッティを堪能できるお店。薄暗い店内で、上を見上げると鍋のようなものが大量に吊るされている。椅子は少ししか置いてなくて、ほとんどの人が立ち飲みスタイル。母の為に椅子を確保してあげた。



ショーウィンドウに並ぶチケッティはどれも美味しそうで、たくさん注文した。チケッティは一つ一つのポーションが小さいし、すべて本当に美味しいから何度もカウンターへ戻った。





お酒も進んでいい感じに出来上がってきた両親と私をよそに、落ち着いて席に座って食べないスタイルに慣れない上、未成年でお酒も飲めない弟は、なんだか不服そうだった(笑)。

最後の朝ごはん。毎朝、ホテルの朝ごはんが楽しみでしょうがなかった。



ベネチアはすごく良いところだったし、なにより母が終始嬉しそうだったからすごく嬉しくなった。夢の中にいるような、幻想的な世界。また訪れる機会があったら良いな。



ローマに戻ってバチカン市国へと向かった。
ローマの市内にある世界で1番小さな国。入る時、パスポートさえ要らない。

サン・ピエトロ大聖堂



クーポラと呼ばれる大聖堂のドームにも行った。果てしなくつづく細い階段を登って、やっと頂上についた。ネットの奥から広場やローマが一望できたんだけど、私がそれより印象に残っているのは階段を照らす照明。なぜか、ガムがベタベタ張り付いている…豪華な聖堂の外見からは想像もできない光景だった。



聖堂のグッズ売り場で小さな置物と、神父が印刷されたとても小さなメダイを見つけた。あまりのシュールさがすごく気に入ったので母に言付け、日本の仲良しの友達にも買った。

小さなメダイ



そのあとはバチカン美術館へ。 予約をしないとものすごく並ぶらしい。さらにこの美術館、ものすごく大きくて全部回るなんてとても出来ないから、所々選んで回った。光の差し込み具合が完璧で、繊細な絵画や壁絵に全体的にやんわりと柔らかな雰囲気。美術館は大好きだけど今まで訪れた中でも1番くらい綺麗だなと思った。





中でも印象的だったのは、システィーナ礼拝堂にあるミケランジェロに描かれた天井画。

システィーナ礼拝堂



教義を絵画化したこの天井、優しい色合いに青色が差し色になって全体の色のバランスが最高に素敵! 大きな空間の天井にみっちり埋め尽くされる作品。ずっと上を向いて歩いた。こんなに広くて、アーチ状になっている天井に絵を描くなんて、果てしない時間と労力が必要だ。しかもミケランジェロは、この絵を描くとき滴る絵具が幾度となく目に入り失明寸前まで追いやられたという。

バチカン市国で切手と葉書を買って、記念に家に葉書を送ってみた。家族で自分たちにメッセージを書いて、弟がポストに投函。バチカン市国の郵便ポストはパッとしたよく目立つ黄色。考えてみると、エントランスや通路で警備をするスイス衛兵のユニフォームもすごく奇抜な色合いで物凄く目立つし、分かりやすくするためにそういう文化があるのかな。話は戻るけど、今、帰国してから父に送った葉書を見せてもらったら、私の筆跡で書かれていたのは「バチカン市国階段多かったなー」という言葉と、まったく身に覚えのない男の人の似顔絵。「もっと違うものかけたよね…」と当時のあさはかな自分を嘆く。

家に送った葉書



最後の夜は、ローマにあるオペラ座でオペラを観た。ものすごく広い劇場には、威厳とした厳かな雰囲気がある。若い人から、おばちゃま、おじちゃままで、幅広い年代の人々がおしゃれして来ている。私は、このオペラをすごく、すごく楽しみにしていたのだ。程なくして始まり、身を乗り出した。…そして、気づけばフィナーレだった。あろうことか、大半の時間、私は目覚める事なく爆睡していたのだ。本当に恥ずかしいし悔しい、次またいつ来られるかわからないのに。やりきれない思いで、「ブラボー!」という声が飛び交う中力なく拍手した。あまりの無念さに誰にも言うことが出来なかったこの話、今になってやっとここに書いている……。



翌日、私は留学先のロンドンへ向かうために空港へ向かった。今の私は不安と、緊張が半分ずつ。しかも、絶対素敵なお家に行けると何故か自信しかなかったホームステイ先も、だんだん不安になって来た。これからなにが待ち受けてるんだろう、どんな試練があるんだろうって、胸が押し潰されそうになりながら飛行機に乗った。

ローマからロンドンは2時間半くらい。あっという間にも感じたし、すごく長くも感じた。

つづく。


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