another side of ALASKA

吉森慎之介「あらすか」を撮る。

インタビュー 後編

Photographer: Shinnosuke Yoshimori
Text: Mayu Sakazaki

Trip / 2019.03.13

1992年生まれの26歳、鹿児島に生まれ熊本で育った写真家・吉森慎之介さん。2018年の3月にアラスカで3週間を過ごした吉森さんは、そこで撮った作品を展示した個展「あらすか」を同年5月に青山スタジオで開催しました。雪山、野生動物、オーロラ、過酷な寒さ。そんな漠然とした「アラスカ」のイメージだけでは伝わりきらない、身近な生活としての“アラスカの暮らし”を切り取りたい。そんな思いで開催した写真展について、そしてアラスカでの旅について。『anna magazine』のアラスカ特集で紹介しきれなかったインタビュー(後編)をお届けします。



ー3週間の旅のなかで、印象的なできごとや、記憶に残っている瞬間はありますか?

フェアバンクスにいたときにバスで北極圏まで行くことがあったんですが、そのときに見た夕方の空がものすごく綺麗で。それはすごく印象に残っています。アラスカって、白夜じゃないですけど、夜の8時、9時くらいまで全然明るくて。これもさっきの話と共通するかもしれないんですが、アラスカの雄大な景色だったり野生動物だったりオーロラだったりっていう有名なものよりも、その日の夜8時くらいに北極圏で見た夕暮れが一番綺麗だったんです。ピンクとか青とかグリーンとか白とか、いろんな色が混ざっていて、本当に今でも思い出せるくらい。そのとき、たまたま居合わせた人にも「お前はラッキーだ。こんな景色はそんなに見れないからな」って言われました(笑)。本当にラッキーだったなと思います。その景色はすごく覚えています。



ー旅先で過ごせる時間ってすごく短いから、そういう瞬間は貴重ですよね。

そうですね。車があったらもっと行動範囲が広がったと思うんですが、ちょっと雪も深くて、道路も凍ってたので危ないかなというのがあって。最後にアンカレッジから飛行機に乗って日本に帰るとき、空からしっかりアラスカ山脈を見ることができたんですが、山脈も湖も、本当に言葉で表せないくらい大きかった。その信じられないくらいの広大さに改めて感動しました。これで終わりじゃなく、次は夏に行ってみたいなと思っています。そのときは、星野さんがアラスカに行くきっかけにもなったシシュマレフ村にも行って、そこの暮らしも自分の目で見てみたい。そのあとで、また改めて直子さんとお話しできたらいいなと思っています。

ー帰国してから展示に向けて写真を現像したりセレクトしたりしていったと思うのですが、そこで改めて気づいたことや、感じたことはありますか?

撮影した写真を見て思ったのは、「日本で撮っている写真とあまり変わらないな」ということで す。もちろん風景はまったく違いますが、例えばコインランドリーにいる子供だったりとか、窓から外を眺めているような風景だったり、おじいちゃんとおばあちゃんが寄り添って歩いているとか。そういうスナップというか、自分が切り取る被写体に関しては、日本でも海外でも一緒でした。良くも悪くも、同じものを撮っているなと感じましたね。



ーそれが吉森さんの写真なんですね。展示する写真を選ぶうえで意識したことはありましたか?

フィルムだけで700枚くらいあって、デジタルの写真もあったので、選ぶのは難しかったですね。でも、「アラスカっぽい写真はやめよう」っていうのは自分で決めていたことでした。オーロラも何度も見ましたし写真も撮りましたが、そういうものはなるべく外すようにして。観光パンフレットのような写真じゃなく、自分の視点で見たアラスカを伝えられるようにということは考えていました。動物もオーロラも僕より綺麗に撮れる人がいると思いますし、そういったものを展 示しても面白くないと思ったので、僕が見たアラスカ、ということを一番に意識して。アラスカって言われないとわからないような日常の写真もありますし、「アラスカってこんな感じなんだ」っていう反応も多くて、とっかかりやすかったんじゃないかなと思います。

アラスカという国のもっと手前の部分というか、自分たちに近い部分を見て欲しいっていう思いがあったので、実際に行ってみたことで、そんなに過酷な場所じゃないよっていうのは改めて感じました。わざわざアラスカでこういうライトなスナップを撮っている人はあんまりいないと思うので(笑)、ひと味違う展示になったんじゃないかな。見た人がアラスカを今までのイメージよりも身近に感じて、興味を持ってもらえていたら嬉しいです。ハードルが高いと感じるかもしれませんが、もっと普通にアラスカに行く人がたくさん出てきたらいいなとは思いますね。



ー写真を撮って、準備をして、発表して、という行程のなかで一番楽しかったのはいつですか?

もちろんどれも楽しいですが、今回はフィルムで撮った写真をラボに出すんじゃなく、自分で暗室に入って写真を焼いて色をのせてっていうプリント作業をやったのが大きかったです。暗室で改めて自分の撮った写真を見ていて、すごくかっこいい言い方をすると、もう一回旅をしているような感覚になりました。なので、プリントをしているときはすごく楽しかったですね。

ー車の写真を集めたZINE『アラスカー』も作られていましたね。
これは、撮っているときにもう「アラスカー」ってタイトルにしようと決めていました(笑)。 町で車を見かけると、すごく雪に埋まっていて面白かったんです。展示する写真がわりと綺麗なものが多かったので、逆にちょっと砕けた駄洒落っぽいものがあってもいいかなと思って、展示で 販売するZINEとして作ってみました。









ー写真家の方にとって、撮りたいテーマというのはそれぞれあると思うんですが、元をたどっていくと何かパーソナルな理由だったり、個人的な経験というのがベースにあるような気がします。吉森さんが、そもそも星野さんの写真だったり、アラスカの暮らしだったり、そういうものに惹かれる理由ってなんだと思いますか? どうして自分はこういうものを撮りたいと思うんだろう? と考えることはありますか?

それはすごくシンプルで、僕は雪が好きなんですよね。生まれが鹿児島で育ちが熊本なので、雪もそれなりには降りますが、大雪みたいなのはほとんどないんです。だからすごく単純なんですが、冬が好きで、雪が好きっていうのが大きな理由だと思います。東京で大雪が降ったときもすごくテンション上がりましたし、まず雪が降っているところ、寒いところに行きたいっていう願望が昔からずっとありました。本当にシンプルに、そこに惹かれているのが大きいと思います。星野道夫さんの存在があったことで、アラスカもそこまで遠い存在ではありませんでした。たくさんエネルギーがある若いうちにアラスカに行っておいた方がいいかなっていう気持ちもありましたが、根本は本当に雪が好きっていうだけですね。

ーこれから行ってみたい場所や、やってみたいことはありますか?

国内でも海外でもいろんなところに行きたいっていうのは常に思っていて、やっぱり旅がしたいので、そういう仕事をしていきたいですね。作品としては、今回の「あらすか」のようなひらがなのシリーズは続けていきたいなと思っていて、次はモンゴルに行ってみたいです。モンゴルも朝青龍とかでお相撲さんのイメージはあると思うんですが、実際に行ったことがあるっていう人は周りにそんなにいなくて。アラスカのときのように、そういう漠然としたイメージでしか知らないような国に行って、実際に見てみたらどういうものなのかっていうのをやっていきたい。そうやって撮りためていった作品を本にできたらいいなと考えています。



profile
吉森慎之介/1992年鹿児島県生まれ、熊本県育ち。青山スタジオ勤務を経て、2018年より写真家として独立。雑誌などで活動するほか、個展「あらすか」やトークイベント「ぼくらの会いたいひと」を開催。また、2019年より地元である熊本県の江津湖のほとりでポートレートを撮影する「みずうみの写真館」をスタートするなど、さまざまなフィールドで活動の幅を広げている。

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