ACME Buying Diary #5

家具ブランドACME Furnitureの買い付け日記

Contributed by Kenichiro Tanaka

Trip / may.21.2020

インテリアブランドACME Furnitureの海外買い付けの模様をレポート。どこで、どんな風に、なにを見つけて日本へ商品がやってくるのか。ディレクターの田中健一郎さんがリアルなバイヤー視点で紹介していきます。

#5

朝7時。セットしていた携帯のアラームが鳴る。
しかし、まぶたが重くて目が開かない。
連日の疲れからか、体が少々悲鳴を上げている。
もう少しだけ寝続けていたいが、もうすぐ出発の時間だ。

今日は一日倉庫作業の日。
倉庫に向かう前に少し遠回りをしてドーナツ屋で腹ごしらえをしよう。

連日、朝の時間帯は濃い霧に包まれている周辺道路。

ドーナツ屋に到着。近所の常連客らしき人達の出入りが途絶えない。

ショーケースの中に並ぶドーナツ。食欲がそそる。

今日はどれを食べようかと悩んでいると、前に並んでいたお客さんが「Ham and Cheese Jalapeno!」と聞き慣れないオーダーをしていた。
ハム・アンド・チーズ・ハラペーニョ?
ハムアンドチーズとは、クロワッサンでハムとチーズを挟んだサンドイッチのこと。アメリカでは定番のサンドイッチだ。
その中に、メキシコを代表する青唐辛子であるハラペーニョ!?
ハラペーニョ入りのハムアンドチーズは今まで食べたことが無い。
意外な組み合わせに興味がそそられたので迷わず後に続いて注文をした。



これは美味しい!
クロワッサンの甘み、ハムとチーズの塩気と旨み、そこにハラペーニョの辛さが加わることで、やや味覚渋滞が起きてしまっているが、このメニューを考えた人に敬意を払いたい。
恐らく、パンに加工食品を挟んだだけで自慢のメニューだと誇らしげになっているアメリカ人に対して、食傷気味のメキシコ人が改良したのがこのメニューなのではないか、と勝手に想像する。

簡単に朝食を済ませた後、倉庫に移動する。
三日間、買い付けた家具や雑貨で倉庫内の一角は既に山積み状態になっているので、まずはそれらを整理することから作業を始める。



整理といっても相手はアメリカサイズの家具。
ひとつの家具を移動するにも、重さ、大きさを考慮し、集中して行わないと腰を痛めてしまう。

大型家具から優先的に並べ、順番に写真撮影を行う。
写真を撮るのは、自社の記録用に必要なのと、新入荷情報として顧客様に紹介するため。
撮影が済んだら梱包作業。コンディションの悪い家具は後でリペアを施すので簡易梱包で良いが、コンディションの良いものは頑丈に梱包しなければならない。







雑貨類は簡易梱包を剥がして分類別に仕分けする。
割れ物は壊さないように慎重に運びながら写真撮影を行う。
撮影と平行して、通関に必要なインボイス作成も行なわなければならない。







一つ一つ見落としが無いように確認しながら繰り返し行う地味な作業ではあるが、改めて
買い付けたモノたちを品評しながら進める作業は楽しくもある。
50~60年代に製造されたプロダクト特有の素材使いやデザイン性は見ていて面白い。



初日に買い付けた60年代製Kent Coffey社“Perspecta”シリーズのドレッサー。
上部引き出しの装飾品は、だれが見ても一級品といえるデザイン。
毎回の買い付けで、1台買えるかどうかの、高価なプロダクトだ。



個人的にも大好きな家具メーカー、Brown Saltman。
同社の商品は毎回の買い付けで数台見つけることができるが、このタイプはとても珍しい。天板と抽斗上段だけデコラ素材が使われていて清潔感のあるモダンなデザインだ。
両サイドの面材が脱着できて、同シリーズの家具と連結ができるというギミック。



Drexel Heritage社のヴィンテージ家具の中で、最も人気の高い “Kipp Stewart”デザインのダイニングチェア。年々希少価値が高まるにつれて取引金額も高額に。
近い将来は買い付けるどころか、きっと見つけることも困難になるだろう。



軍物のスチールケース。これはなんと、ミサイル弾を収納するために作られたもの。
プロダクトとして語るには十分なストーリーだ。
底に脚を付けて、ベンチかコーヒーテーブルにリメイクしたい。



メーカー不明、製造年代不明のアノニマスプロダクト。
おそらく70年台のものだと推測する。天板に鏡面ガラスと側面にポリ素材が使われていて、アールデコ調のデザインが可愛らしいコーヒーテーブル。



最近では入手困難な、ダブルシェードの3スポット・ポールランプ。
三分割されたポールを連結して、天井と床で突っ張って設置する仕様となっている。
木と真鍮のコンビネーションのタイプは最近なかなか見つける機会が少なくなった。



60~70年台を代表する立体アートオブジェ・デザイナー “C,Jere” (写真下二つ)
太陽を背景に鳥達が羽ばたいているモチーフの壁面オブジェは同デザイナーの代表作。
住空間に取り入れることにより、暮らしが一層豊かになるような魅力的なアイテム。



アンティークモールで見つけたチェスボード。
昔見た何かのアメリカ映画の中で、薄暗くてムードの良い部屋で紳士二人がウイスキーを片手にチェスを楽しんでいるシーンが頭に浮かぶ。

これら買い付けてきたプロダクトには、メーカー情報やウンチクが残っているものもあれが、残っていないものの方が多い。それらは、いつ、どこで、誰によって作られたものか分からないが、50年以上前の生活の中でどのように使われていたのかを想像しているだけで楽しいものである。
あれこれ想像しながら一日掛けて倉庫作業をこなす。



倉庫からの帰り道、日用品を買うために寄った”TARGET”
圧倒的な物量を誇る巨大ディスカウント・スーパーマーケット。
大量生産、大量消費、大量廃棄の社会経済を象徴しているかのような場所だ。
買付け業務を行う中で、多くの古くて価値あるモノと触れ合った後に、大量の短期消耗品を見て回ることで強いおざなり感を抱いてしまうのは仕方ないことなのか?
ここには世代を超えて使い続けられるようなモノは一つも無いであろう。



カリフォルニア出張はまだ序盤戦。
明日からは引き続き買付け回りの旅が続く。

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