Stay Home, Stay Travel Challenge

妄想旅チャレンジ #4

Contributed by anna magazine

Trip / 2020.05.28

anna magazine“Stay Home, Stay Travel”特別号kindleにて発売中です。

みなさんからContainerに届いた旅日記を公開中!
第四回はAn Ko(Anna Koshizuka)さんの妄想旅です。

SISTERHOOD ANTHOLOGY
一緒に歩いてくれたシスターに感謝をこめて.




自分の育った街を、まさか旅の目的地に選ぶと思わなかった。
ランドマークタワーを真ん中に、桜木町駅から赤レンガ倉庫までを望む風景は、
新しいビル開発で地元の人から見るとだいぶ様変わりしてしまったが、カメラを向ければあの頃とあまり変わらない写真が撮れる。

その女の子と訪ねた店もいくつか移転したが、クローズせずにまだ横浜のどこかにある。でも、道を一緒に歩いたその子は、もうこの世にはいない。
なんだか映画のラストシーンのような始まりだ。きっと誰もが一度は経験することのありそうな話だが、割と若いうちに私はそれを経験している。

最後にとったコミュニケーションは切ないので、ここではすっ飛ばして、
annaがその子とワールドポーターズという施設まで長く延びる汽車道を歩いた時の事を書く。



朝に強かった私たちは、その日は早朝に待ち合わせ、とりあえずブレックファーストにした。
こんなふうに、annaは彼女と横浜のいろんな場所で「ランチデート」なるものを重ねていた。

彼女とはバーチャルで設定した、とある「水玉模様のアイコン」がきっかけで意気投合し、直接会うことになった。
彼女は19歳、私は21歳だったと思う。

「Stevie Wonderならあの曲が好き」「『Ain’t No Mountain High Enough』なら、こうアレンジしましょう」というふうに、 
自分たちの世代とはかけ離れたアナログな70年代、80年代の音楽やファッションの世界観でも通じ合い、一緒に創作物を発表し、次第に将来についても真剣に話し合うようになっていた。



彼女は男の子と恋愛してはそれを歌にしていたが、正直に告白すると、annaとの関係も「恋愛」に近かったと思う。
当時は全然意識していなかったが、今はそんな関係をSisterhood(シスターフッド)と呼ぶようになった。
私は妹のように慕い、 彼女はいつも「anna姉さん」と呼んでいたが、実際は大人びた彼女を心の中で尊敬していた。
先輩後輩関係を一歩飛び出せば、ライブハウスの彼女は「高嶺の花」で、私はただ1人の「ファン」だった。

「HONOLULU COFFEE」で一緒にコーヒーとアサイーボウルをシェアして食べていた時も、途中でふと真面目な表情を見せたので、annaは思わずカメラを向けていた。腰のあたりまである艶艶した長い髪で、黒いマスカラとアイラインを多めに付けた目元が印象的な彼女は22歳くらいで、等身大で本当に美しかった。桜木町にあったヴィンテージの古着のお店を愛していて、お店の人とも仲が良く、サイケデリックな色使いのサマードレスを着こなしながら「いつかこんなお店をするのが夢」とも言っていた。

その時だったかもしれないし、別の日だったかもしれない。うろ覚えだが、確かに彼女はこう言った。

「annaさん、」
「(将来のこと)心配しないで大丈夫ですよ。何があっても、10年先も私はannaさんと仲良くしてると思うし、10年先も、絶対歌ってると思います。誰かのために。」

この言葉は、あの頃の「10年」が過ぎても、この先もずっと私の背中を押してくれるだろう。

annaは今日もコーヒーを飲みながら、彼女が話したこと、教えてくれたことの意味を考えている。
思い出す時間をとるだけでいい。果たせなかったけれど、彼女に影響を与えた往年のアーティストやポップアイコンたちのルーツとなる外国への旅行、 また一緒になぞって歩くはずだった桜木町、そして凛とした美しい表情と笑顔で歌う姿。





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