Home and Away vol.2

No Sleep Ever #14

Home and Away vol.2

Contributed by Chika Hasebe

Trip / 2023.06.09

「NYは毎日どこかで何かしら起きている、本当に忙しい街」目標に向かって、自ら道を開拓し続ける会社員・Chika Hasebeさんが、眠れない街NYへ旅に出た。誰よりも好奇心に従順な彼女だからこそ感じる、NYでの新しい発見と、心揺らすできごと。

#14


東京から1万キロ以上離れたNY。そこで出会った人びとから感じる日本がある。アメリカで解釈された日本文化、アートシーンに吹かす日本の風、 “移民”としてサバイブする日本人。出会った人、訪れた場所から感じる日本について振り返ってみる。





友達の友達 part1
NYで滞在するきっかけにもなった友人が紹介してくれた女の子。彼女はわたしが見学に行ったファッションスクールFashion Institute of Technology(FIT)に通っていて、ちゃんと話すことのできたFIT生の数少ないうちの一人だった。彼女は当時最終学年で、しかも学年末だったから学校がかなり忙しそうで、時間を作ってくれてありがたい気持ちになった。



自分が気になっていたコースに通っているその子は、自分の通うコースに誇りを持っていて、充実した学生生活を送っているように見えた。そろそろ卒業だし、学校を出たあとのプランについても聞いてみたが、そこでスラスラと出てくる数々の有名ブランドの名前。FITに通っているからこそ、きっとそういうブランドにアクセスするのは難くないのだろう。そこになんとなく感じた違和感は、学生時代の友達と卒業後に会話するときに感じるものと近いものがあった。同級生と話すとき、しばしば誰がどの会社に就職したかが話のネタになる。大企業であるほど盛り上がるし、なぜかその場にいない人の名前がバンバン挙がる不思議な会話。それがFITではどこのブランドに就職したかが重要っぽい。コレクションで誰に出会って、どこでインターンしたかは彼らの会話の鉄板ネタなのだろう。彼女の場合、将来は家業のヴィンテージショップを継ぎたいという目標がある。卒業後の就職は経験を積むためのステップアップだそう。目指す道があって、それに着実に近づく姿は眩しく見えた。

彼女とは日本の一時帰国で再会でき、今もゆるく繋がっている。世界でサバイブする日本人が身近にいるってことが自分を勇気づけてくれる。


歩いていたら突如現れた巨大ネズミ。割とリアルで怖い




友達の友達 part2
日本の友達でNYに時々コレクションスナップのインターンをしに行く友達がいる。彼女からNYで生きている日本人の知り合いがいるということで紹介してもらった。彼女はあるアーティストの事務所で働いていて、文字通り“サバイブ”している人だった。

彼女は日本の地方の高校から、NYの大学に進学。高校から直接海外の大学に進学するなんてとんでもない勇気がいることだったはず。NY滞在歴はもう結構長いが、それでもあらゆることに苦労するらしい。仕事、友人関係、生活、ビザ、全部が大変そうだった。



今の仕事は元彼の友達の友達に紹介してもらって就くことができたそう。しかも特別に会社負担でグリーンカード(永住者カード)までサポートしてもらえることになったらしい。彼女の素敵な人柄もあってそうなったのだろうと納得。だからビザが出るまではアメリカを出れない。一時的な辛抱とはいえ、ビザ発給の時期が確定していない中ずっと待ち続けるのはそれなりに負担があるはずだ。



オープンではっきりとした物言いの彼女が仕事について繰り返し唱えていたのは、「コネクションが全て」と「現地の彼氏は大事な存在」。彼女の場合はこの二つが合わさって今の仕事に繋がっている。

会社の規模もいい塩梅のところじゃないとダメらしく、中小企業は会社自体にお金がないからサポートできないが、大企業すぎても代わりの人材がいくらでもいるからビザをわざわざ出してくれない。日系も大企業と同じ理由でダメらしい。いい塩梅というのは、decision makerかそれに近い存在と直接話せる環境があるかどうか。彼らと話して心が掴められれば、ビザを出してくれることもあるかもしれないという。ビザを出すって、企業側は1年間で一人に数百万出すことになることを意味するので、給料と合わせると単純に支出が倍増してしまう。それを聞くとビザサポートがないと公言する会社が多いのも頷ける。なかなか海外で働くのは厳しいようだ。



友人関係も大変そうだった。仕事でコネクションが大事なように、友人関係にもそれは波及してくる。日本でも状況は同じだとは思うが、誰もが自分自身を試そうとしてやってくる世界最大の都市では、余計にコネクション作りに走る姿が顕著なのだろう。友人に利害関係が発生することに苦心している様子だった。いつからだろう、人と単純に仲良くすることが難しくなったのは。気の合う友達とくだらない話や将来の話などひたすらできるような状態でずっといたい。そう願っても現実はそうシンプルじゃないときがたくさん増えてきた。



サバサバとしてNYで一生懸命生きていることが伝わるかっこいい彼女。素敵な人に会えてよかったな。



Iconic Magazinesで行われていたポップアップ。普段のバラエティに富んだ雑誌のディスプレイが覆われているのにがっかりした観光客が後ろで明らかに落胆していた。


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