ACME Buying Diary #2

家具ブランドACME Furnitureの買い付け日記

Contributed by Kenichiro Tanaka

Trip / mar.31.2020

インテリアブランドACME Furnitureの海外買い付けの模様をレポート。どこで、どんな風に、なにを見つけて日本へ商品がやってくるのか。ディレクターの田中健一郎さんがリアルなバイヤー視点で紹介していきます。

#2

「パキーン‼︎」

まるで目から白い光線を放つかのような凄い勢いで目が覚める。
時差ボケだ。
恐る恐る時計を見る。まだ夜中の3時前。
どうにかしてもう一度眠りにつきたいが、目は冴え渡っている。
目を閉じたまま、無心になることを試みる。

昨日はディーラーのもとで買い付けを終えた後、眠気に耐えながらモーテルまで移動した。
チェックインを済ませて部屋に入った後、道中で買ったビールを飲んでいるうちに、いつの間にか深い眠りに落ちてしまったようだ。





昨日の出来事や今日の予定など、色々と頭を巡らせているうちに窓から朝日が差し込んできた。

時刻は5時。いい加減もう一度寝るのは諦めた。出発までに少し時間があるので、この間にメールのチェックなどデスクワークをこなす。
今日は早朝からローカルのフリーマーケットに行く予定なので、少し早めにモーテルを出発することにした。


早朝は濃い霧に包まれていて周囲の見渡しが悪い。

トラックでフリーウェイを南下すること30分。オレンジカウンティの大学校舎の駐車場で、毎週末行われるフリーマーケット会場に到着した。その頃には、出店ディーラー達がそれぞれの車の荷台から商品を下ろし、各自ブースの設営を行なっているところだった。



アメリカのフリーマーケットにはいくつかの種類がある。
プロのヴィンテージ家具ディーラーが集まる本格的なものから、日用品やジャンク品ばかりが集まったものまで幅広い。このマーケットは後者であるが、まれに掘り出し物が見つかる事があるのと、ノスタルジックな会場の雰囲気が好きなので、買い付けの際には必ず来るようにしている。



近くのラジオからは陽気なラテン音楽が流れている。会場にいる人種の半分以上がメキシコ人だろうか、歯切れの良いスペイン語が飛び交う。
出店しているディーラー数は100件ほどの規模感だが、中古家具を売っているブースは数件程度。ほかには新品の洋服や玩具、中古家電、工具、自家製野菜や植物など。
なかにはこんな物まで売るの⁉︎ と思ってしまうようなジャンク品ばかりを売っているブースまである。
はたして、ボロボロになった人形の首の部分だけをいったい誰が買うのだろうか…。


安くて美味しいと評判高い新鮮なフルーツや野菜が並ぶ。


このマーケットはジャンクの割合が高い。使用不可能なモノも中には...。


山積みの洋服と靴が並ぶ。トラックの中にも大量のストックが。


積載量140% 商人根性がたくましい。

30分ほど会場を回り、収穫できたのは数点の装飾品と雑貨類。
4脚セットで売られていたフォールディングチェアは、フレームの曲線デザインが気に入って購入した。
汚れは簡単に落ちそうだ。
座面の生地を貼り替えれば、きっと別物に生まれ変わるだろう。



さて、ひと通り会場を見終えたところで、お目当ての朝食タイム。
毎回このマーケットに来ると、決まってメキシコ料理を食べる。
フードトラックの周りには既に人が集まり、思い思いの料理を注文している。







ここでは「メヌード」というモツの煮込みスープが人気だ。一見辛そうな真っ赤なスープをみんな美味しそうに飲んでいる。 以前から興味はあったが、早朝から胃に刺激物を投入する勇気が持てず、今まで一度も試した事がなかった。

今回も毎度お馴染みのタコスを注文した。
誰もが知っている人気メキシコ料理のタコスだが、このお店のものは自家製トルティーヤのモチモチとした食感がたまらなく美味しいのだ。



いつもならこれを食べて満足するのだが、隣に座っていたメキシコ人が美味しそうにメヌードをすすっていたのを見て、おもわず初めて試してみたい気持ちに駆られてしまった。
初心者なのでSサイズを注文。
スープの味は?
想像していたほど辛くない。出汁が効いた味噌汁のようで美味しい。
中に沈んでいるモツ煮込みは?
想像以上にゴムっぽい…。
この食感に慣れるまで時間がかかりそうだが、メキシコ人の食文化に少し近づけたような気がした。



ロサンゼルスには多くのメキシコ人が居住している。統計上では州人口の約3割であるが、不法入国者も含めれば4割以上だとも言われている。
多くのメキシコ人は陽気でおおらかな性格で、あまり細かいことにとらわれず、明るく楽しいことを優先する。家族の絆がとても強く、生活のために一生懸命働く。
実際に、レストランのキッチン裏の皿洗い、オフィスの掃除係、工事現場の労働者などの多くはメキシコ人だ。 実際に私達が家具の買い付けで取引する相手の半数がメキシコ人であり、毎回とてもフェアな取引をさせてもらっている。
こんな愚直で勤勉な人達が社会の裏側で頑張っているからこそ、アメリカは国家として成り立っているのだろうと思う。
トランプ大統領が「不法滞在しているメキシコ人を締め出す!」とやっきになっていたが、彼らが居なくなったら、アメリカ人がやりたがらない低賃金の重労働の仕事は誰がやるのだろうか。

そんなことを考えながらメヌードのスープを飲み干した。(モツ煮込みは半分以上残してしまった。ごめんなさい)

さて、美味しい朝食も済ましたことなので、次の買付け場所に移動しよう。
今日は一日が長い。



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