Fillin The Gap
煙越しに見るトルコの街 Vol.3
Contributed by Haruki Takakura
Trip / 2023.05.12
煙越しに見るトルコの街 前編
中東に位置するトルコ共和国は、ちょうど一つの橋を境目にアジアとヨーロッパに分割されている。
ニューヨークが人種の坩堝であるならば、イスタンブールは文化の坩堝である。
しかし、この10日間の滞在で感じたトルコ像としてはアジアチックな印象が勝った。やはりどうしても、人間が織りなす空気感が街の風景を上回ったためである。
街並みはレンガ造りの建物や石畳で舗装された道路によって、とてもヨーロピアンな雰囲気を醸し出している。その一方で、その石畳の上で露店を営む街の人々は「Brother!」「Hey, my friend!」などと言って、観光客をとっさに見極めてガツガツと営業トークを繰り出すというアジアの商人っぽい雰囲気を持っている。
前章で紹介したイスタンブールトラフィックも、台湾やベトナムのバイク渋滞や東南アジア全般のクラクションを挨拶ばりにたくさん鳴らす文化とどこか似ているようにも思える。
僕の場合は、トルコのヨーロピアンな街並みに囲まれても、結局はアジアチックなトルコの人間味に街の印象を上書きされた。
とにかく、僕の脳内メモリには街並みはその景観に関わらずその土地の人間が作り出すものだと記録された。
(300年以上前に神学校として設立された霊廟をアレンジした水タバコ屋)
そんな文化の坩堝、イスタンブールの街並みで頻繁に目に入ってくるシーンがある。それは街のあらゆる人たちがタバコや水タバコといった煙と共に生活しているシーンだ。ある知り合いは「トルコで唯一残念なんはタバコの吸い殻が落ちすぎてることやな。」と愚痴をこぼしていた。かの有名な商店街グランドバザールだってスモーカーたちの煙で満ちている。紙タバコのにおいも甘い香りを漂わせる水タバコの煙もごちゃ混ぜになっている。
(タバコ禁止と書かれているのに水タバコを提供しているという不思議な光景が広がる店内)
とにもかくにも、イスタンブールの街中はスモーカーたちで溢れている。「どうしてこうもスモーカーが多いのだろう。」と考えながら歩き続けるバザールは、当然のようにぷかぷかと浮かぶスモーカーたちの煙で満ちている。
だが、この疑問は意外とカンタンに解決した。バザールでたまたま出会って仲良くなったヤシンさんという男性が「かつてトルコが外貨獲得手段としてタバコを盛んに生産していたからだよ。」とおしえてくれた。
だがどうしてだろうか、心のざわめきは収まらず、それ以上に何か理由がある気がしてならなかった。
(一杯30円で飲めるトルコチャイ)
ブレーズ・パスカル(哲学者)
− 人間の不幸などというものは、どれも人間が部屋にじっとしていられないがために起こる。部屋でじっとしていればいいのに、そうできない。そのためにわざわざ自分で不幸を招いている。
『パンセⅠ』2章
Fin
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Haruki Takakura
1999年大阪生まれ。ロックダウン中に経験したコペンハーゲンでの休学ライフなど、隙間期間に目を向けた「FillIn The Gap」をContainerにて連載中。ビールが好きで好きでたまりません、なのに、お酒に弱い。