Greenfields I'm in love #14
たのしい夜の話
Contributed by Aya Ueno
Trip / 2020.08.14
#14
ロンドンで出会った友人のもっさんはビデオグラファーだ。
今日は、もっさんと繰り出したイーストロンドン、ショーディッチでの話をしたいと思う。
待ち合わせはショーディッチの駅前。向かい側にはフェンスがあって、いつも南京錠がたくさん掛けられている。
このフェンスの奥は、スケーターたちの溜まり場!
もっさんは自転車で来ていたから、エースホテルまで行って自転車を止めた。エースホテルはすごくお気に入りの場所。ロビーには誰でも立ち入ることができるから、宿泊客以外にもワークスペースのように活用したり、おしゃべりするために訪れる人がたくさん。私もここで、よくYouTubeの動画を編集をしたり、宿題をしたりした。
トイレの前にある壁は、わたしのお気に入り。
まずは大好きなベーグルショップでベーグルとティーを買って、食べたり飲んだりしながら街を歩いた。ベーグルはヌテラのサンド。ここのベーグル屋さんはいつも並んでいるけど、お店の人はすごくせっかちで回転率は半端ない。優柔不断な私はいつも、オーダーする直前までなかなかメニューが決められず、あたふたする。
揚げたてのベーグルたちと、優しそうな職人さん。
せっかちなスタッフによってものの10秒で出てくるベーグル。
そうそう、もっさんはグラフィティーアートが大好きなので、語り出すと止まらない。この街はウォールアートの街といってもいいくらい、そこら中に個性的な壁画が描かれている。さっきも歩きながら、立ち止まってはストリートアーティストの説明をしてくれた。私の好きなもっさんの素敵なところは、私は到底気付きもしなかったような場所にある面白いものにすぐ気がつく所だ。私も人や物をきょろきょろ見ながら歩く癖があるから、気づいた事を友達に言うと、「よくそんなとこ見てたね」と言われる。でももっさんとは比べ物にならない。壁の上の方にいた小さなインベーダー(フランス人のストリートアーティストが、ヨーロッパのあちこちにゲームのキャラクターをモチーフとしたアートを残している)や、建物に何本も刺さっている弓矢、屋上から釣りをしている男性のマネキンなど、言われるまで気付かなかった不思議な位ヘンテコで面白いアートたちを、もっさんのおかげでたくさん発見することができるのだ。
ちょっと街をぶらぶらした後、まだ外は明るいけど、ビールで乾杯! ショーディッチはいつも活気に溢れているけど、(というか、イギリス人はとにかくお酒が大好き。昼夜問わずバーにはいつも人がいっぱいだ)今日は土曜日だから一際にぎやかだ。
店内はカウンターとダンスフロアになっていて、私達は屋外に並ぶテラスに座った。バーの外は広場みたいになっていて、建物に覆われている。「あれを見て!」と言われてすぐ横の建物の上を見ると、ケースに入ったピンク色のオンボロの車が、宙から落っこちたような微妙な角度で設置されていた。その車は、バンクシーのデザインによるものらしい。(もっさんはバンクシーのファンでもある)
今日の目的は、もっさんが持っているClavius lensというとってもでっかいレンズを見せてもらう事、そしてそれで写真を撮る事。このレンズはかーなーりレアなもので、持っている人は世界にもほとんどいない。カバンから出てきたそのレンズは、想像より遥かに大きかった。専門的な話を分かりやすく説明してもらうと、要は、光の線みたいなものが写真に入りやすくて(普通ならフレアが入るのは良しとされないことが多い)質感や雰囲気を味わえる個性派のレンズらしい。これはロシアのオールドレンズを改良したもので、カメラに装着する部分をいろんな形の穴が開いているフィルターにカスタムできるから、光のボケた形を星型や線状に変えることができたりと表現が自由で、もっさんみたいなこだわりの強い人に重宝される。
ビールを飲んだ後は、ショーディッチを何往復もして、写真を撮った。もっさんに教わりながら、私もそのカメラでたくさん写真を撮らせてもらえて嬉しかった! 大事な大事な、大きくて重たいカメラを絶対に落っことさないように注意しながら。
もっさんが撮ってくれたお気に入りの写真。
驚いたのは、すれ違う人によく、「なにそのカメラ!」とか「大っきいレンズね!」と何回も声をかけられた事。その度にもっさんは写真を実際撮って見せたりしながら、ていねいに説明する。この日声をかけてくれた素敵なカップルがいて、のちにもっさんは何度もお仕事を一緒にする事になる。ロンドンらしい素敵な出会いだ。その話はまた今度。
彼がその男性!この時は、また会えるなんて思わなかったな!
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Aya Ueno
兵庫県神戸出身、東京在住のWriter/Photographer。学生時代に渡ったイギリス留学を機に、人や、取り巻く空間を魅せる表現に興味を持ち、現在Containerをはじめ、カルチャー、フードメディアにて発信中。
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