めんどくさいわたし

Greenfields I'm in love #54

めんどくさいわたし

Contributed by Aya Ueno

Trip / 2021.12.03

直感を信じ、ドキドキするものに向かって走り続ける神戸出身のAya Uenoさんの連載「Greenfields I'm in love」。自分探しも兼ねたロンドンでの留学生活で、自分の目で見て、肌で感じたありのままの日々の記録をお届けします。

#54

前回に続き、ねるとわたしのロンドンたび。The walseleyという老舗のレストランでブランチを食べ始めるところから。
ねるが受付で名前をいうと、マダムと呼ばれた。ショーウィンドーに陳列する食器を眺めているわたしを指す言葉ではない。それはねるへの呼びかけだった。
スラっとしていて中性的な顔立ちをしている彼は、よく女性と間違えられる。
ねるいわく、ここではエッグベネディクトにサーモンを巻き付けたようなお料理が美味しいらしい。頂いたメニューになかったから、説明してオーダーした。ほんとだ、柔らかく旨味のあるサーモンと、トロトロでコクのある卵の組み合わせがとっても美味しかった!! 美味しいね、美味しいねと言い合い、ねるが来てこの3日間、食べてばっかりだったと笑った。そう、早いもので、今日の夜にはねるはもうパリへ帰ってしまう。



展示を見に行ったり、ぶらぶら散歩したり、ゆっくり流れる時間を楽しんだ。とうとうねるの帰国の時間が近づいて、つい先日コベントガーデンにできたアラビカコーヒーへ立ち寄り、コーヒーを買った。寒い中熱々のコーヒーを手に、キングスクロス駅まで、歩くことにした。3キロくらいある一本道、ねるとのロンドン最後のお散歩だ。コーヒーがいつもよりグンと美味しく感じた。
ねるが駅の向こうへ消えるまで見届ける。寂しいな。テンションが下がりそうになったところだけど、実は半月後、今度はわたしもパリへ行くし、そこにはまりかもいるんだから、と気を持ち直す。
家に帰るとディナータイムまで暇だったから、上のファビオの部屋へ行った。ねるが帰っちゃったと話すと、ファビオは楽しい話をたくさんしてくれた。彼のPCのスクリーンの上には"sorridi!"と書いてある。"笑顔で!"、という意味だ。彼は確かに、穏やかでよく笑う人だ。

こちらがそのパソコン

ディナーにしようというホストファザーウィルの声で、キッチンへ降りる。今日はミートパスタだ!カトリンのお料理が大好き。最近新しく、ドイツ人のフィリップとデニズがわたしの隣の部屋に住みはじめた。(この部屋は通称music room、ここは2人部屋になっている)これでわたしのホームメイトはファビオと合わせて3人。ディナータイムはいつだって笑いが溢れ、わたしの毎日のお気に入りの時間だった。

カトリンのパスタ

ファビオ、リリー、ポーリー

週末の話。この日はクレアとランチしたあと、リアムと大英図書館で待ち合わせした。ケンブリッジ検定コースになってから、わたしは仲良しのリアム(ヨークシャー出身)とよく一緒に勉強している。
この日はremembrance dayで、赤いポピーの花のブローチをつけた人があちこちにいた。戦死者への追悼の意を示しているという。


戦闘が終わった後、荒野を埋めるように赤いポピーが咲いていたことが由来みたい。

勉強中、家から持ってきたぶどうをリアムと摘む。私たちは勉強するのに最高のコンビだった。彼に英語を教わり、わたしは日本語を教えてあげる。リアムは出会った頃から確実に日本語力が伸びている。わたしもそうであればいいのだけど。(そうでなくっちゃいけない!)

勉強を終えて図書館をあとにして、今日は久しぶりにバービカンへ遊びに行くことにした。ここはわたしの好きな場所のひとつ。バービカンにある建物は、寂れた剥き出しのコンクリートや煉瓦でできていて、ロンドンと聞いて想像されるいわゆる観光地とはかけ離れた外観、これはブルータリズムと呼ばれる建築方法が用いられている。冷たい、荒々しい、厳しい、どんより、ずっしり、わたしがこの建築で感じるのはそんな感じ。
そこになにがあるのかといえば、まずは何百にも渡る団地だ。バービカンエステートという、かつては独り身の男性が住む場所だったとか。3棟で構成されていて、それぞれShakespeare、Ben Johnson、Cromwellとイギリスで有名な文化人を由来にした名前がついていた。
建築は見れば見るほど奥深いし、かつてお一人様専用だったことから、庭に並ぶベンチは1人がけだったりと面白い。また、ここではガーデニングがマストらしい。どの部屋のバルコニーからも、かわいいお花がみえた。

団地の間に汚い湖があった。

ブルータリズム建築

を下から見た図

洗濯物の外干しもだめだとか。

バービカンの魅力は数えきれない。団地の奥にはバービカンハウスという、シネマやバー(バーテンダーはなんとロボット)、ギャラリー、図書館などの文化施設が併設されている。

このロボットがバーテンダー。

最後にメンバーシップの彼と一緒に会員限定のスペースへ行った。そこではおしゃれでかわいい人たちが、勉強したり、お茶をしたりしていた。大英図書館もそうだけど、リアムは本当にあらゆる場所の会員になって、ちょっと素敵な空間に入るチケットを得て、足を運んで勉強したり、ゆっくりする時間を楽しんでいる。彼は全然豪遊するタイプではないのだけれど、アシュタンガヨガをしたり、夕方仕事の後に日本語のクラスを取ったり、自分の時間や空間を大切にしたお金の使い方がとてもすてきだ。
帰りに一風堂でラーメンを食べて帰った。他の席にはゴマがあるのに私たちの席にはないんだな、とみていたら、その視線にリアムがすかさず、ゴマが欲しいのかと聞いてきた。思わず首を横に振ると、ニヤッとして、“that means yes”と言ってゴマをお願いしてくれた。
うん、たしかにわたしはゴマが欲しかった。「欲しい!」と言えばよかったのだけど、何となく言えなかった。めんどくさい人間だな。リアムと出会ってもう半年くらい経つのだけど、こんな微妙なところまで分かっている彼になんだかとっても嬉しくなった。

日本の2倍くらいのお値段がするけど、味は忠実に再現されている。

帰りのチューブが無人だった。



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