FillIn The Gap #14
ドタバタあめりか縦横断
Contributed by Haruki Takakura
Trip / 2022.12.16
この春ファッションの世界に飛び込んだHaruki Takakuraさんが、世界との距離を正しく知るために、デンマーク・コペンハーゲンで過ごした小さくて特別な「スキマ時間」の回想記。
#14
アメリカのカバージャケット
これまでの過程で僕のアメリカに対するイメージはガラリと変わっていた。
喧しいほどに厳かなビル、ファッショニスタでごった返すストリート、巨大なバーガー。
今のところイメージと合っているところといえば、巨大なバーガーくらいである。
実際にはだだっ広くて何もない荒野がアメリカの大部分を占めているし、ウォルマートにずらりと並ぶ XXXLサイズのノーマルTシャツを着ている人たちがほとんどだ。
だからニューヨークに来ると、アメリカっぽい。そう思ってしまった。
頭に描いていた通り、高層ビルやファッショニスタが所狭しとこの街に詰め込まれている。いや、アメリカっぽいという言葉は使うべきではないのかもしれない。
そうぐるぐると考えながら、ふと横を見るとNYに憧れていた睡眠魔が、高層ビルと人間が織りなす渦に飲み込まれキョトンとしている。だがよく見ると、彼の目は足早に動き続ける街の表情を追いかけ、キャプチャーしている。
待ち焦がれていたんだな。そう思った。
だがそれと同時に、これまでさまざまなアメリカの表情を見てきた旅人として、こんなにも広大なアメリカのジャケットを代表して飾るのは、いつもニューヨークやロサンゼルスで不公平じゃないか、とも思った。
今の僕であれば何をアメリカのジャケットにするだろう。
ナショナルパークが好きだから自然と暮らす人たちだろうか。それともキャンピングカーと共に広大な土地を旅する人たち?ニューオーリンズでちょっぴり覗き見したジャズに酔いしれる人々?それとも憧れのロスで見たスケーターたちだろうか。
悩んだところで答えはまだ出ない。
なぜなら、まだ僕はアメリカの一部分しか見ていないからだ。特にニューオーリンズのジャズ、ポートランドでのクラフトビールは欠かせない。
そう、だから今はしっくり来るアイデアや写真はないが、いろんな顔をもつアメリカを表すのは場所や雰囲気ではなく「人々」なんだろうと思う。
次にアメリカを訪れる際には、もっと色んな人とストリートスナップを通じて仲良くなり、アメリカのカバージャケットを選ぶヒントを得ることが一つの楽しみである。
旅に最適な移動ツール
旅で最も使った移動ツールはキャンピングカーだった。NYでは地下鉄や自転車に乗って、ナショナルパーク内では主に歩いて移動した。つまり、さまざまな移動手段を経験してきたわけだ。
さて、タイトルにもある旅に最適な移動ツールの答えだが、僕の答えは自転車である。
旅は移動時間がほとんどを占める。つまり、移動時間をいかに大切に過ごすかということが大きな課題となるわけだ。確かに環境の良い飛行機や電車の中では、読書をしたり音楽を聴いて過ごすのも良い時間だろう。だが、初めての旅先ではもう少し「ならでは感」が欲しいものである。
そんな時におすすめしたいのが自転車だ。
なんせ「視界」と「速さ」がちょうど良すぎるのだ。歩き→自転車→車→電車→飛行機という順番で、視界の規模は広くなっていく。カメラレンズで言うと、望遠鏡で月のクレーターを覗いている状態が「歩き」、それに対して肉眼で空にポツンと浮かぶ月を眺めているのが「飛行機」。
自転車は歩きと同様に細かい視界を持ちながら、そこそこに移動手段としても優秀である。そう、奴こそ未開の地を存分に味わうのに最適な移動ツールなのだ。
その上、ストップ&ゴーが簡単なので少し気になる店があればすぐに道端に停めて店に入ることができる。道を間違えた時だって、車で高速道路を乗り間違えることに比べるとそりゃねえ。
方向音痴の僕にとってはなんともありがたい話である。
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Haruki Takakura
1999年大阪生まれ。ロックダウン中に経験したコペンハーゲンでの休学ライフなど、隙間期間に目を向けた「FillIn The Gap」をContainerにて連載中。ビールが好きで好きでたまりません、なのに、お酒に弱い。