California Roadtrip #1

-Torrance-

Photograph & Text:Ako Tsunematsu(MOUTH JOURNAL)

Trip / 2018.07.26

カリフォルニア・ロザンゼルスにある街トーランスから始まって、
サンディエゴ・シティ、パーム・スプリングス、コーチェラ・フェスティバル、
ダウンタウン、そしてアボット・キニーと、
人生で初めて自分で買ったカメラ片手にめぐった10日間。


Special thanks to VISIT CALIFORNIA (http://www.visitcalifornia.jp/



#1 Torrance

「デル・アモにいるよー!」
私がマークにテキストしたのは4PMくらい。久々のデル・アモ・ショッピングセンターをぶらぶらして、ジンギスカン(と言っても羊肉ではなくて、大量の具材と麺を炒め合わせたモンゴリアン風焼きそばなのだけど)を三分の一くらいでギブアップした後のこと。
「Oh dear! 今すぐに仕事切り上げて迎えに行くよ!」
そんな返事があって、すっかり白髪が増えたマークが慌てた様子で迎えに来てくれた。どうやら私が来るのは明日だと思っていたみたい。それでもこんな時間にすっ飛んで来てくれて頭が上がらないし、5PMには帰宅するのが普通なこの街での暮らしを思い出してうらやましくなった。









「トランジットまで何時間あるんだっけ。母校でも見に行く?」
マークの提案でドライブ開始。帰宅ラッシュが始まる前のPCH(Pacific Coast Highwayこと、サンフランシスコまで続く州道1号線)を爽快に走り抜け、レドンドビーチ沿いのベンチで近況報告。みんな歳をとったこと以外はどうやらあまり変わっていなくて、なんとなく暖かい気持ちになった。

助手席で写真を撮る私に「窓ガラス、汚いでしょ」と一言。いつも車はピカピカに磨いていたマークらしくないと思ったら「BMWは卒業祝いにアレックスにあげちゃったから、俺は車磨きを卒業したんだ」なんて、おじいちゃんみたいなこと言わないでよ!
でも、一緒の小学校に通っていたアレックスが今ではあのゴールドマン・サックスに勤めているなんて感慨深い。マークも自分が愛車を手放したことなんかより、息子の立派な独立に誇らしげな様子だ。



街並みも大きくは変わっていない気がした。トーランスと言うと、かつては日本企業に勤める日本人駐在員が多く住んでいた(最近は企業の不況で激減しているらしい)エリアで、比較的治安も良く、ゆったりとした暮らしを送る白人家庭が多い。私が通っていたシーサイド・エレメンタリー・スクール周辺の住宅街は、クリスマスのイルミネーションが有名で毎年12月頃になると通り一帯のすべての家がド派手に飾り付けられる。結構な名物で、ロサンゼルス中から観光客が訪れては数十ブロックにもわたる豪華なイルミネーションに賑わう。なんでも、飾り付けに参加しない住民は近所から注意されるとか、しないとか。

トーランスのすぐ隣に位置し、豪邸が建ち並ぶパロス・バーデス/ローリング・ヒルズ・エステーツにも足を伸ばした。なぜかこの辺りには野生のクジャクが生息していて、この日も我が物顔で大層な門の上から私たちを見下ろすクジャクに遭遇。七色の羽をバサバサと広げ、長い首を揺らしながらこちらの様子をうかがっている。こんな巨大で派手な鳥がカラスのように生息できるなんて。さすがパロス・バーデス、もとい、アメリカ。







そんな束の間のドライブで愛しのトーランスの記憶を一通り回収し、ひと休みしにマークの家へ。前回お邪魔したときはチャウチャウのゲンキがすっかりおばあさん犬になっていて、そんな彼女に激しく戯れるロッキーをたしなめたりしたけど、今度はロッキーがすっかりおじいちゃん犬になっていて、ちょっと寂しい気持ちになった。

そうこうしていたらあっという間にサンディエゴへと向かう時間に。仕事を終えてヨガから帰ってきたマークの妻のヨッシーと一緒に、LAXに送ってもらう道中でフィッシュ&チップスをつまむ。店内のテレビには、当たり前のようにバスケットボールの試合が映し出されている。私が食べきれずにいるフレンチフライを見て、店員が当たり前のようにドギーバッグを手渡してくれる。東京にはないこの”当たり前”が嬉しい。ふと外を見渡すと、そこにも見事なグラデーションを描く美しい夕空が、当たり前のように広がっていた。










アーカイブはこちら

Tag

Writer