Life is a journey #20
スーツからTシャツになって気づいたこと
Contributed by Daijiro Inaba
Trip / 2023.06.16
#20
葉山在住のDaijiro37歳の「生きる」を考える旅。どこまでもオープンに、幸せなこともしんどいこともモヤモヤすることも恥ずかしいことも晒しながら、旅を綴ります。
かっちりスーツを着て始まった僕の社会人人生がTシャツになるまでの記録。縛られていた服装が、やっと、自由になった。ずっと自由になりたかったけど、なれなかった。その状況にヘイトするよりも、その状況を愛して、楽しもうと思った。そのほうが楽ちんだったから。
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1.周りと違う
2.個性の埋没と意志力の信仰
3.Drip
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報国寺の空
1.人と違う
幼少期からずっと、服装で「周りと違う」って言われるのが好きだった。自分自身の趣味ってよりも、兄弟や従兄弟のおしゃれなお古を着て(お古ではなくてよく現役のものを借りていたが)は、どや顔で過ごしていた。
大学生になってからも、そんな個性的だったわけじゃないけど、たまにターバンをまいたり、夏でも分厚いニット帽をかぶっていたり、股下がくるぶしまであるサルエルパンツが好きだったり、チェックの短パンにストライプのブロードシャツを着てみたり、ぼさぼさのロン毛だったりと、周りに合わせていく気はさらさらなくて、好きな人の服装を真似たり、直感的に好きだと思う服を手に取っていた。
「ネオおやじスタイル」と命名いただいたけど 我ながらコメントダサすぎ
どや顔で雪駄 おしゃれな友人を真似ていた
友人のお兄ちゃんにもらった革ジャンを着てすかしてやがる
2.個性の埋没と意志力の信仰
そんな僕も社会人になり、転機が訪れた。銀行員として社会人生活が始まり、スーツを着るようになった。服装の規定がきっちり決まっていたので、逆らうことはなかった。ブラウンのスーツをダメ出しされたり、チェックのシャツをダメ出しされたり、派手なネクタイをダメ出しされたり、とにかく「銀行員らしくないこと」は許されなかった。ジャケットの下にセーターを着ていったとき、別室に呼び出され「服装ひとつで銀行員人生終わらせていいのか?」と問われた。それからは、通勤中は着るけど、会社に着いたら脱ぐっていう、お嬢様学校のギャルみたいなことをしながら、個性のない銀行員に変化していった。そんな僕を支えてくれたのが、『Will Power/Roy F,Baumeister & John Tierney』の提唱した「意志力」の考え方だ。
Will Power/Roy F,Baumeister & John Tierney
スティーブ・ジョブズが毎日同じ服を着ていたのはなぜか。オバマ元大統領の服装がパターン化されていたのはなぜか。彼らは、1日の中で自らが意志力を投じるべき事柄をだれよりも理解していたんだ。意志力には限界があることを、誰よりも理解していたんだ。
葉山の宝物 CINEMA AMIGOのエントランス
その日からぼくは、「スーツは嫌いだが、決して着たくないものを着ているんじゃない 朝の服装選びに意志力を投じないことを選択したんだ」と言い聞かせながら生活していた。
新入社員向けに研修をするときもあったが、その時も堂々と「自らの意思でスーツというものを選択している」と語った。当時は本気でそう思っていた。
いつも通勤時に一緒になるサラリーマンが、毎日しわくちゃのスーツを着ていた。「そんな着たくもないスーツを着てどうしたの?」と、心の中でその人に語りかけていた。そのたびに何かに失望していた。今思えばそのしわくちゃなスーツは、僕自身の当時の在り方そのものだった。
銀行員DAIJIRO
3.Drip
“Drip too hard, don’t stand too close. You gonna fuck around and drown off this wave”
(Drip too hard / Lil baby×Gunnna)
「Drip」というスラングがある。着飾る、いけ散らかす、という意味らしい。僕はこのスラングに、このシンプルなワードに、すごくときめきを感じる。
葉山の小道 今はなき風景で、しんみりする
そんな僕だが、働き始めて7年ほどたち、初めての転職をした。転職先は「ジャケパンOK」だった。すごく緊張しながら色が違うジャケットとパンツを組み合わせて出社した時、その時の緊張と高揚感は今でも覚えている。
その3年後、ベンチャー企業に転職してからは、完全に服装の規定がなくなった。しかしながら、これまでの社会人生活で服装規定に囲まれながら生きてきた僕は、与えられた自由に困ってしまった。何を着ていいかわからなかったが、ユニクロのTシャツにジャケットを羽織って出社した。その週末にはユニクロに行って真っ白なTシャツを大量買いした。会社の服装規定はないけど、自らTシャツにジャケットという規定を作った。
逗子から鎌倉に向かうトンネル。由比ガ浜から差し込む夕陽がすごい
それからさらに3年がたち、やっとスーツでもジャケパンでもない、Tシャツだらけのクローゼットで、好きな服を選んでいる。
とっくに心のどこかで気付いていたけど、この服装の旅の中で、僕は僕自身のポリシーをごまかし続けて楽な道を選択して生きてきた。
やっと、窓に映る自分自身が、自分らしく思えるようになってきた。
勢いあまって4色買い
またスーツを着るかもしれないし、服装の好みが変わるかもしれないけど、やっと、自分が着るものに責任を持てるようになった。
毎日が、衣装だ。
Life is a journey!
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Daijiro Inaba
1986年川崎生まれ、東京育ち。葉山在住。趣味はSUP、ウクレレ、サウナ、フットサル、ワイン、BBQ、逆光アート、愛犬と過ごすこと。 オンラインサロン「大二郎酒場」主宰、教育系DAO「DSK」主催。