Sole, Pizza… e Amore

#00 初めての外国人

Contributed by Aco Hirai

Trip / 2023.10.20

イタリアへ移住したAco Hiraiが綴る恋愛ストーリー「Sole, Pizza・・・ e Amore」。何気ない日々の中で気付かされるイタリア人パートナーとのたわいもない国際恋愛を綴ります。

#00


私の手を握る黒い手。
そのまま視線を上へやると、肌の黒いお兄さんと目が合った。

忘れもしない。
私が初めて外国人と手を繋いだのは小学2年の夏前だった。
今思えば、この頃から「肌の色」というものに惹かれていたのかもしれない(笑)。



@serenapretti




話はぐんと昔に遡る。
約30年前の私は、瀬戸内海に浮かぶ小さな島(小豆島)の小さな学校(全校生徒60人前後)に通っていた。一つ下の学年には、日本人のお父さんとアメリカ人のお母さんを持つ、いわゆるMixやHafuと呼ばれる男の子がいて、そのお母さんのおかげで、ド田舎ながら学校の国際交流が盛んだった。

ある日、交換留学で姉妹校のオレゴン州ポートランドから、大人子供含め、数十人の外国人が学校へやってきた。当時の小豆島で外国人の存在は珍しく、目に映る全ての人が新鮮で、新しい世界への扉が開かれたように感じたのを覚えている。

そして、全校生徒と交換留学生でゲームを始めたとき。
今後の人生を大きく左右するであろう出来事は遂に起こった。
私は初めて外国人と手を繋いだのだ。

私の手を握る黒い手。
視線の先にあるのは、私の手と彼の手の美しいコントラストだった。
この肌の色の違いに衝撃を受けたことは、この歳になっても忘れることはない。
「この世に自分と肌の色が違う人間が存在するなんてすごいな〜、カッコいいなぁ〜!」

これが、私の外国人に対するファーストインプレッションだった。

そして、その約7年後の中学2年の時。私の両親は、人生勉強だと言い姉妹校があるポートランドへ私を送り込んだ。
到着してすぐにホストファミリーの家で出会った白い肌のジョシュアくんのイケメンぶりにノックアウトされた。そして翌日、サッカーが上手な褐色肌のセバスチャンに出会い、優しかった彼に私のハートは音を立てながら軽快なリズムを奏でていた。ドキ、ドキ、と。

さらにその約3年後、私の両親は親戚が暮らすユタ州のソルトレイクへ私と妹を解き放った。
ここでは、 あるお店で首までタトゥーがガッツリ入った黒い肌のお兄さんと出会い、黒い肌にマッチしたピシッとしたスーツ姿の彼が目に焼き付いて離れなかった。

そして、帰国した後に気づいた、自分が異なるルーツに惹かれている、ということに。

「肌の色が違う人」=恋愛対象ではないけど、異なる人種に特別な感情を抱いていることを実感した。
それもこれも、全ては小学2年の私の手を握った黒い手がはじまり。

小学2年の私が「初めての外国人」から得たものは、「否定」でもなく、「共感」でもなく、「理解」。
当時は全てが未知の領域で、世の中には、自分と違う人種がたくさんいて、言葉が通じなくても、笑い合えたり、思い合えたり、尊敬しあえたりするということを体験し、すごく嬉しかったのだ。


イタリア人のパートナーと暮らすようになった今、より色濃く思い出すのは、幼少期の外国人との出会いだ。昔から人種に対して比較的オープンな考え方でいられたのは、きっとあの「黒い手」のおかげだろう。

異なるルーツを持つ2人が支え合い、一緒に生活し、愛を育んでいく国際恋愛では「共感」より「理解」の方が重要になってくるのかもしれない。

もちろん「共感」から始まる恋もあれば「共感」が重要な役割を果たすシーンも訪れる。でも「理解」から生まれる恋の方が長続きし、関係性に深みが増す、そんなふうに思う。




illustration
Serena Pretti
クリエイティブコンサルティング、デザイナー、イラストレーターと幅広く活躍中。ちょっぴりエロティックなエッセンスが乙女心を刺激する大人可愛いイラストが人気。
Instagram:@serenapretti



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