心地よい時間の使い方

A Spell On You #8

心地よい時間の使い方

Contributed by Aya Ueno

Trip / 2024.05.07

フォトグラファー/ライターの上野文さんの新連載『A Spell On You』。2022年の秋に渡ったドイツ・フランクフルト、フランス・ニース&パリでの様子を、彼女の“トキメキ”が詰まった写真と共に綴ります。

#8


フランクフルト最終日。今日はケーキを作ると決めてから、昨日マルシェで生のプルーンを袋いっぱいに買っていた。生のプルーンなんて初めて見た。少し酸っぱそうだ。

何を作るのかといえば、フロちゃんの得意料理のクランブルケーキ。生地の上に、半分に切ったプルーンを綺麗に並べて、最後に手で小さくしたバターと全粒粉を混ぜたクランブルを混ぜる。あんまり大きいのも良くないけど、ポロポロとした食感を残すため、練りすぎても良くない。その加減が難しい。



オーブンに入れて程なくすると、綺麗な色のケーキができた。生地はふっくら甘く、トップのクランブルがカリカリと香ばしい。プルーンは、ドライフルーツ特有のもちっと感の代わりに果実味があって、私好みだった。



今日は夕方の便でニースに移る。名残惜しいけど、さっき作ったケーキでお茶をして、帰る時が迫っていることをあんまり気にせず、明日も明後日もまだ時間があるみたいにゆっくり過ごした。この数日間がそうであったように。



つむちゃんとフロちゃんとの日々を過ごし、思ったことがあった。
例えばお料理を一緒に作るとか、そのために材料を買いに行くとか、そのついでに少し遠回りしてお散歩するとか、2人はそういう時間を、晴れの日も雨の日もお構いなしに、いつだって一緒に楽しんでいた。ただ日常を過ごしているだけなのに、その一瞬一瞬を丁寧に大切に過ごしていて、だからその空間は特別に見える。わたしも昔からずっとそんな他愛無い時間を過ごすのが好きだったことを、少し忘れかけていたと感じた。

上京してから、好きな仕事をしたい一心で、自分の身の丈に合ってなさそうなことにアタックしてみたり、うまくいって少し自信をつけたり、と思えばなかなか思うようにいかず歯痒い思いをしたり、色々手をつけすぎて手一杯になったり……。それでいて、友達と出かける時間も大好きで、いつも予定をパンパンに詰めていた。その当時のわたしは窮屈で、なんだか常に焦っていて、本来大事にしたい時間を少しないがしろにしていた気がした。

それは間違っていたとは思わないし、もっともっとともがくのは、今のわたしには必要なことだ。でも、衣食住、生きるためになくてはならない時間を、片手間にやるんではなく、もうちょっと時間をかけてみたり、そのために他の時間を減らしたっていいのかも。その時間のために、だんだん持っている選択肢を減らしていって、本当にやりたいこと、やるべきことを知ることは、手一杯になりながら同時にあれこれ叶えようとするより、凝り性な自分には合っているような気がした。

毎日繰り返し行われる、当たり前のような時間を楽しく過ごせることは、当たり前ではなくて、とっても尊いこと。わたしは2人からそんな気づきを(勝手に)受け取った。

忙しさを理由に、そんな時間をないがしろにしないでいよう。そして、仕事においても私生活においても、ちょっと丁寧に、ちょっと余裕を持って、自分色をつけていきたいと思う。







フランクフルトを出て、次の目的地はニース。

旅はまだまだ続く!



#Gloomy day All day

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