Gloomy day All day #15
エキストラタイムの過ごし方
Contributed by Aya Ueno
Trip / 2023.09.29
#15
イギリスに来て、10日ほど。先日コロナに感染して、隔離生活を満喫(?)中。
日本時間で年末年始のタイミングを上空で過ごす、大晦日のフライトの予定だったが、そのフライトには到底乗れそうになく、キャンセルした。
年越しの瞬間の飛行機はどんなだろうと楽しみにしていたのだけど、それと引き換えに年越しの瞬間をロンドンで迎える機会を手に入れた、とも言える。（コロナにかかっていることを棚に上げたらね。）
でも当時は、ロンドンでの初めての年越しを楽しめる余裕なんてわたしには全くなく、毎日不安が止まなかった。病院で行う精密な検査で陰性になるのは本当に一体いつになるんだろう。パパによると、下手したら何週間もかかるかもしれないんだとか。
毎日ブーブー言っているわたしに、12歳のグレイスが言った言葉を、わたしはいまも忘れられない。
あやさん、ハプニングは3タイプあるんだよ。A、自分で解決できること。それは、ソリューションを見つけて、壁を乗り越えなきゃいけない。Bは、人に助けてもらって解決できることだよ。他人に頼ってできることを探すのは、大事だよ。Cは、どうにもできないこと。避けられないこと。どうにもできないことは、考えるのをやめなくてもいいけど、考えすぎなくていいんだ。他に自分がやりたいこととか、ハッピーなことを考えたらいいんだよ。
コロナになっちゃったのは、Cだよ。会社（の始業）に間に合わなくて怒られるかもしれないけど、でも怒られないかもしれない、もうすぐ治るかもしれないし、あやさんができることは今ないんだから、今を楽しんだらいいんだ。大丈夫、私たちもいるし、ねぇ、華子。
(わたしが自分のママを呼び捨てにしようものなら確実に叱られるが、グレイスはたまにお母さんの華子さんを名前で呼ぶ)
とにかく、わたしの歳のちょうど半分の彼女のこの言葉は、焦りと不安でいっぱいだったわたしの胸にストンと落ちた。コロナになったわたしができることなんて、陰性になる日を待つことくらいしかない。日本に帰れない反面、ロンドンで過ごす時間も増えた、もはやそれだけのことだ。もともと、喉から手が出るほど欲しかった時間、いたかった場所だ。コントロールしようのない、このエキストラタイムをどうせなら楽しんでしまえばいい。
それから、グレイスのおかげでわたしは以前よりずいぶん楽になった。外で思いっきり遊んじゃいけないけど、それでもここは大好きなロンドン。2〜3日で治るわけでもないのに、毎日諦め悪くNHSへ通い、そしてどさくさに紛れて何時間も散歩して帰った。
誰もいない地下鉄の通路。
家には、パンとバターという２匹の猫がいる。こんな表情で見つめられると、彼だけは私の未来を知っているんじゃないか、そんな気持ちになる。
毎日NHSで検査を受けるから、毎日NHSから陽性のメールをもらった。朝昼晩、簡易キットでコロナの検査を行ったが、チップに浮かぶ線はいつだって2本だった。果たしてこのキットで線が一本だけ浮かぶことはあるのかとモノ自体への不信感さえ覚えたが、グレイスが試すと、そこには私をからかうように一本の線が浮かんだ。
暇さえあればビタミン剤やら亜鉛やらを何粒も飲んだ。手のひらにのせた様々な色や形の錠剤をみると、私はなんだか薬物に溺れている人みたい。
つづく！
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Aya Ueno
兵庫県神戸出身、東京在住のWriter/Photographer。学生時代に渡ったイギリス留学を機に、人や、取り巻く空間を魅せる表現に興味を持ち、現在Containerをはじめ、カルチャー、フードメディアにて発信中。
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