REI NOTE #2
非日常的な出会い
Contributed by Rei Honma
Trip / 2019.01.15
彼女が目的地に決めたのは憧れのサンフランシスコ。旅連載「REI NOTE」では、その模様を月1回のペースでお届けします。
サンフランシスコに到着したのは朝の9時過ぎ。
空港からホテルのあるPowell駅まではBARTという電車で行くことに。切符を買っていると日本語で「すみません」と声を掛けられた。振り返ると父親と同じくらいの年齢の男性が立っていた。チケットの買い方がわからないという。
無事一緒に切符を買い、同じPowell駅に行くということで同じ電車に乗り込む。電車の中でその男性が定年退職後、1人でアメリカ各地を回っているという話をしてくれた。「奥さんや子供には呆れられてます」と笑って話す姿が印象的だった。
Powell駅に着くと、そこでその男性と「お互い、いい旅にしましょう」と言って別れた。まさかアメリカに来て最初に会話をした人が同じ日本人だとは。普段自分が日本にいたら、父親位の知らない男性と電車に乗ってお互いの話をするなんて、よく考えたら滅多にないことではないだろうか?
もう一生会うことはないと思うけれど、非日常的な出会いに私の心は弾んだ。旅ってこういう所が面白い。その後、ホテルまで歩いてチェックインを済ませる。長時間のフライトで正直少し、疲れていた。まだまだ時間は沢山ある。ベットの上に寝っ転がる。自分が今サンフランシスコにいるという実感がわかなかった。気づいたら少しだけ寝てしまったが、ひとまず街散策をすることに。
私が着いた日は、サンクスギビングの連休真っ最中で街には人が溢れていた。街中を適当に散策して、色んな所を歩いてみた。場所によって色んな顔を持つサンフランシスコ。歩いていると「ここは中国?」と錯覚してしまうようなチャイナタウンがあったり、とても面白い。
すれ違う人達の飛び交う言葉、街の中の文字、すべてが前日までいた自分の環境とまったく異なっている。やっと自分が日本を離れサンフランシスコにいる実感が湧いて来た。ただ街中を歩いているだけなのに、とても楽しい。自分のアンテナが色んなものを吸収しようとしている感覚がとても気持ちよかった。それと同時に沢山の国の人達が住んでいるこの街のエネルギーの中にいると、自分が出発前まで日本で抱えていた悩みがちっぽけに思えた。
自分のキャリアのこと、結婚してからのキャリアのこと、これからの人生のこと-。
日本では悩むことが沢山あり過ぎた。というか自分で大げさにしていたのかもしれない。「こうでないといけない」「こうあるべき」「皆そうだから私も当然」みたいなものに縛られ過ぎていた。あんなに悩んでいた時間が自分でもおかしくなってしまう位、心が軽くなった。気づいたら日本で私が日々悶々と考えていた悩みは小さく感じられ、自分の住んでいた世界の狭さを思い知らされた。そうか世界は広いんだ。解決策が見つけられないまま、ここに来たけど、それでよかった。自分の心の中にはもう答えは出ている。自分の思うこと、信じていることをすればいいのだ。
自分の住み慣れた国を離れて、異国の地に行くと、頭の中がクリアになる。リセットされる、という方が正しいかもしれない。こうやって旅をすることで定期的に「世界」というものを自分に経験させてあげる。
この今感じている感覚を忘れたくない。
偶然通りかかったBlue Bottle Coffeeでお兄さんに作ってもらった美味しいココアを片手にサンフランシスコの街を散策しながら、そんなことを思った。
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Rei Honma
1986年生まれ。旅行と音楽、食べること寝ること、愛犬と遊ぶことが大好きな、ごく普通の会社員。休日は海や山などの自然の中で過ごすことが多い。