Let's Kiwi time! #12
ローカルが集う場所
Contributed by HARU and ASKA
Trip / 2024.02.29
#12
田舎に住んでいても、美味しいコーヒー探しはヤメラレナイ。
Googleマップで近くにあるカフェやベーカリーを見つけては、休みの日に行くことが楽しみになっていた。平日は週6で働いていたので、仕事が終わる頃にはそういうお店はもう閉まっているのだ。
ちなみに、ニュージーランドのコーヒーはエスプレッソが主流。スタンダードがダブルショットらしく、私たちの好みにドンピシャ。結構どこへ行っても美味しいので、初めは驚いた。
パイヒアでもコーヒーがありそうなところへ目を光らせていると、大通りの路地に1つのカフェを見つけた。名前は“Third wheel coffee”といい、通りから見ただけではカフェとは分からない。お店が開いている時は、通りに目印の黄色い自転車が置かれているようだ。自転車が好きなのかな? と勝手に想像。
お店に入ると、カラフルな店内とお客さんの活気、美味しそうなキャビネットフードに思わずニヤけてしまう。
これだ……!
私たちは将来お店をしたいと考えているので、この光景こそ自分たちが作りたいものだ! と思いが重なって、コーヒーを飲む前からここが大好きになった。
私たちが並んでいると、この街にこんなに人がいたのかってくらい後ろにも列ができてきた。店内は狭いが、奥の方にキッチンがあるらしく、ベイカーが出来立てのペイストリーをどんどん持ってくる。せっかく頼むものを決めていたのに、心移りしてしまう! キャビネットフードは、スーパーでも買えるものを商品として置いているカフェも多いから、全部手作りしていると知って大興奮。
店内にはカラフルで個性的なアートや、ローカルアーティストのアクセサリー、自転車や車輪が至る所にあった。雑多な感じがかわいい。
そして肝心のコーヒーとフードも、期待を裏切らず美味しかった。全部のフードメニューを制覇する勢いで、今日は食べられるなって時にはおかわりもしたりした(笑)。
ここはすぐに私たちのお気に入りの場所になり、何度も何度も通った。そのうちお店のスタッフが目で合図してくれるようになったり、ローカルの一員になっていくような過程はとても嬉しかった。
ニュージーランドに来て初めてのお気に入りのお店を見つけ、私たちはオペレーションにも興味津々。コーヒーのソーサーにはクレヨンみたいなもので、誰が何を頼んだか分かる暗号のようなものが書かれる。ある日、大きいテーブルに座っているとスタッフが来て私たちと逆サイドのテーブルに「10時から予約」とデカデカと書いていった。
なんでもこれで書いちゃうんだねぇ。と2人で笑った。
また別の日には、私たちのバッパーのルームメイト一緒に訪れたことがある。そのときは、オーナーが私たちに向かって「お客さん連れてきてくれたんだね!」と笑って声をかけてくれた。自分の好きなお店に人を連れて行くのはとても楽しい。「ここ、いいでしょう?」と優越感を得たような気持ちになる。
そうして何度も通い、オーナーであるTomとも話ができるようになってきた頃。私たちはパイヒアを出て、次の都市へ向かうことを彼に伝え、私たちがバリスタをしていて、このお店が大好きだということも伝えた。
彼はこのお店の歴史について少し話してくれた。Third Wheelの始まりはオーストラリア・パースでの自転車での移動販売から始まったそうだ。店内に飾られていた写真を見せてくれた。Tomと彼の2人のきょうだいの3人で経営しているらしく、店名のThirdはそこから来ていた。私たちのことも応援しているよと言ってくれた。
そしてなんと言っても素敵なのが、ここの常連さんたちである。お店が忙しいときは、協力してお皿を片付けたり、「私のおすすめはこれよ」と教えてくれたりする。パイヒアで暮らしている間に、顔見知りになった人もいて、自然に会話が始まったりする。
最後の1枚は、パイヒアを出る直前にThird Wheelに寄った時のもの。常連さんたちのグループを発見し、今からウェリントンへ向かうと伝えると、みんな口を揃えて“miss you”と言ってくれた。知り合いがウェリントンにいるだの、色々話が脱線したところで改めてお礼を言い、挨拶をしてお店を後にした。
車に乗り、パイヒアを出ようとしたが、ここでみんなとした会話や感情をどこかに留めておきたくて、写真を撮りに戻った。後悔しそう、と思ったらやる! 常連さんたちに、「このテーブルのみんながカラフルでビューティフルだから、写真撮っていい? そしたらみんなのこと思い出せるから」と言って写真を撮らせてもらった。
いい写真すぎて、撮りに戻って良かった〜と2人で話した。
あの常連さん達は、きっとThird Wheelでみんなと集まる時間が大好きなんだろうなぁ。と考えたらとっても愛おしくなった。
また帰りたい場所。
HARU
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HARU and ASKA
うちなんちゅと関西人、時間の流れの違う世界で生まれ育った2人。英語を学び、旅に出た、コーヒーを通していろんな人生と出会った、そしてまた旅に出た。異なるふたりの、ひとつひとつの共通点が一つの線になっていく軌跡を書き連ねる。