カレーライス

ビールとウーバー #41

カレーライス

Contributed by Kaito Fukui

Trip / 2022.03.21

どんな時も、どんな場所でも。頭の中身はいつだって「旅」そのもの。アーティストKaito Fukuiの日々と、旅のこと少し(おさんぽ)。

#41

カレーライス、好き。

「今日はカレーライス。作って待ってるね」

今言われたい言葉No. 1

今朝も、バスの運転手さんは

朝日を見つめタバコを吸っている

毎日毎日朝日を見つめ一体、何を考えているのだろうか。

彼のちょいハゲがやはり暖かい太陽の光に照らされている。

その横ではドライアイス屋さんから溢れる冷気。

ふと、異様な景色だと思った。

運転手さん、、、、。

今日、彼は昔の事を考えている気がした。

朝8時、最後の力で学生やサラリーマン、まだお化粧していないOLさん達を乗せ、駅へ。

その後、回送の表示をつけ車庫まで向かう。

「お疲れしたー」

若かりし頃の、運転手さんは言った

「お疲れー」

先輩運転手達と交代し

軽く会釈をしながら

私服に着替えた運転手さんは、バスに乗る

もちろん社割で

さっきまで運転していた道を

先輩の運転で、さっきまでみんなを送っていた駅に

今度は自分が送られる。

駅に着くと、先輩運転手に

「ありがとうございます」

と、また軽く会釈をしてバスを降りる。

電車に乗って、今日のご飯はカレーライスだということを思い出す

「カレーか」

疲れた体にとっても嬉しい愛妻カレーライス

家の玄関の前から漂うバーモンドカレーの匂い

玄関を開けると、奥のキッチンから

「お帰り〜」

と、新婚の奥様

「ただいま〜」

「先にお風呂入ったら〜?沸かしておいたよ💪」

ああ、なんて素敵な奥さんなんだろう。

浮腫んだ足を湯船で伸ばし

メガネは湯気で曇る。

お風呂を出ると、ふかふかのタオルが置いてある。

幸せな朝だ。

パジャマに着替えて、リビングでニュースを見ながら

新婚の2人はカレーライスを食べる。

朝の運転手さん。

きっといつかの春の事を考えているようだ。

今日は、ビール飲んじゃおうかな。

運転手さんとすれ違う時、そんな声が聞こえた気がした。



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