
Couch Surfing Club #12
西海岸ロードトリップ編
Never don’t stop
Contributed by Yui Horiuchi
Trip / 2022.10.13
#12
コミュニティに愛される居酒屋さんや行きつけが集う年中無休の喫茶店。
姿形は違くても、いろんな国やその土地固有の地域色をまとうお店があると、星の数やいいねでは語られないドラマを垣間見ることがある。

「Pegってあのペグだよね?フックっていうか引っ掛けるパーツのことだよね」
「そうだと思うんだけど、このPegはPeggy’s Houseかもしれない。でもどっちかっていうと、家具のPegに由来のありそうな佇まいっぽいな」
「確かにペギーおばさんのお店ってっいう雰囲気ではないかも」
「ドッグフレンドリーみたいだから犬も連れていこう」

「あ、わたし先にトイレ寄ってく!」
「オッケー」
「あ!ちょっと待って」
「外から鍵がかかってるかだけ確認していってくれない?」
「大丈夫、ちゃんとかかってるよ」
「ありがと!じゃあすぐ行くから席でね」

小さなステージや花畑もある大きなテラス席。
オーダーは停められたトラックの荷台から身を乗り出すお兄さんに告げると、出来上がった順にスピーカーで呼び出されるスタイル。
犬用のステンレスボウルを持って、列に並ぶ友人を見つけて合流した。
メニューはほとんどハンバーガーかサンドイッチ。
オプションでグルテンフリーのバンズも選べた。
旅の疲れで重いものはまだ消化できなさそうだ。
「ベジドッグをグルテンフリーのパンに変えてもらおうかな」
友達にオーダーを伝え、こぼれそうな水飲みボウルを犬が待ってる席までそろそろと持って行った。
「お水持ってきたよ」
あまり喉は乾いてなかったのか、目もくれてくれない。
オーダー待ちの友達の方を一途に見つめてる。
「キレイな子ね。She? Or he?」
顔を上げると一つテーブルを隔てた奥の席に、グレイハウンドを連れて食事中の女性と目が合った。
犬の性別を聞かれて、女の子ですよと答える。
呼び出しが来るまでの間、少しお喋りをした。
ポーランドから移住してきて16年になるらしい。
最初はマイアミに数年滞在し、そこで今の飼い犬に出会ったそうだ。
マイアミからサンフランシスコへの引っ越しで一気に白髪が増えたというグレイハウンドは、確かに実際の年齢より遥かに年老いて見えた。
「ねえベジドッグのソーセージがグルテンフリーじゃないんだって。アレルギーあったら彼女が死んじゃうよ!確認してきて!って店員さんが言うから一応確認しにきた。だけど大丈夫だよね?」
「ちょっと疲れてるからレスグルテンにしたいと思っただけだから大丈夫だよ。ありがとう」
そう言うと、分かっていたのか言い切る前にきびすを返しつつ首を小さく縦にふりながら、オーダー受付に戻って行った。
アレルギー持ちのお客さんへの理解と配慮が徹底されていて安心できるお店。

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Yui Horiuchi
東京を拠点に活動するアーティスト。幼少期をワシントンD.C.で過ごし、現在は雑誌のイラストや大型作品まで幅広く手掛ける。2015年に発表した「FROM BEHIND」は代表作。自然の中にある女性の後ろ姿を水彩画で描いた。自然に存在する美や豊かな色彩を主題にする彼女の作品は海外でも評価されている。












































































